高い将来性が魅力の日本代表右腕・市川祐(新宿リトルシニア)目指すは「中村祐太2世」
北海道日本ハムファイターズで活躍する、浅間大基選手がかつて所属していた新宿リトルシニア。そんな新宿リトルシニアに今、将来を期待される本格派右腕がいる。それが市川祐投手だ。
最速は130キロ前後ではあるが、身長182センチ、体重83キロと中学生レベルをはるかに超える体格を持ち、その高い将来性からリトルシニア日本代表にも選出された。今回はそんな市川投手に独占インタビューを行い、新宿リトルシニアでのエピソードや高校野球に向けての意気込みを伺った。
最大の武器はチェンジアップ、練習よりも試合の中で感覚を掴んだ
市川祐(新宿リトルシニア)
―― 今日はよろしくお願いします。それではまず、新宿リトルシニアを選んだ理由から教えてください。
市川祐投手(以下、市川) 少年野球の先輩が新宿シニアに居て、結構強いという事も知っていました。また、礼儀を大切にしてるチームであることも先輩から聞いていて、自分もしっかりとしたチームに行きたいと思い、新宿シニアを選びました。
―― 今振り向かってみて、入団した当初の自分のピッチングや技術はどうでしたか。
市川 入った時は、ボールのあまり速くなかったですし、変化球もストライクが入りませんでした。ですが、走り込みや体幹を鍛えていくうちに、コントロールとか良くなっていき、スピードも少しずつ上がっていったと思います。
―― 印象に残っている練習やトレーニングはあれば教えてください。
市川 冬にやる縄跳びや走り込みが一番印象に残っています。
水元公園というところのサッカー場の周りを何周も走るトレーニングがあるのですが、それが距離が長くて、軽い坂がずっと続くコースなんです。500mぐらいで下って、少し走ると今度は登りになる感じで。それをインターバルで10本、切れなかったら数に加算されません。結構きつかったですね。
―― キツいトレーニングをこなしてきたんですね。それでは、今度は技術の部分をお聞きしたいのですが、ピッチングで自分のアピールポイントありますか。
市川 自分のアピールポイントは、変化球でカウントが取れたり、決め球に出来るところです。あと、ストレートに伸びが出てきたところもアピールポイントだと思います。
―― 現在の球種と一番の武器も教えてください。
市川 球種は、ストレートとカーブ、あとスライダーとチェンジアップです。一番の武器は、追い込んでからのチェンジアップです。
―― 持ち味の変化球でカウントが取れたり、決め球に使えるようになったきっかけはありますか?
市川 試合で試していくうちに、自分のリリースポイントとかが分かる様になってできたと思います。練習でも投げていましたが、試合でも投げていったことで使えるようになっていきました。
―― 緒方将介監督からは、2年の時に体が大きくなったと聞きましたが、もともとチーム内では身体が大きかったわけではないのですか。
市川 ちょっとデカいくらいで、どちらかと言うと細かったです。でもしっかり食事を食べていくことで、だんだん横もつきました。
[page_break:「球の強さや伸びが全然違う」アメリカ代表のストレートに衝撃] 新宿リトルシニアを率いる緒方将介監督は、市川投手について練習に取り組む姿勢を最も評価している。
「まず練習を真面目にやるし、ピッチングのことなんか特に取り組む姿勢がいいですね。この三年間は身体も大きくなりましたし、高校に行くまでのステップとしては100点に近いんじゃないかなと思います」
真面目に取り組んだ練習が技術の向上に直結し、加えて身体的にも大きな成長を遂げた市川投手。その成長の証として、今年の7月にはアメリカで開催されたMCYSA全米選手権大会に、市川投手は日本代表として出場した。ここからは日本代表として出場したMCYSA全米選手権大会について語っていただいた。
「球の強さや伸びが全然違う」アメリカ代表のストレートに衝撃
ピッチングを行う市川祐(新宿リトルシニア)
―― 今度は、アメリカ遠征のお話をお伺いしたいと思います。まず率直に、代表チームを経験した感想を教えてもらってもいいですか。
市川 アメリカに行くまでは練習はあまりなくて、いきなり試合という感じだったのですが、チームメイトのレベルが本当に高くて、何とかついていけるようにと思ってやってました。
―― 同じ日本代表のチームメイトで、印象に残っている選手はいますか。
市川 主将でキャッチャーだった服部新くん(大宮リトルシニア)が凄かったです。ショートバウンドを投げてしまうと必ず止めてくれたり、キャッチングや肩が凄かったです。
―― 同じ投手でも、市川投手とは違ったタイプの投手もいたと思います。印象に残っている投手はいましたか。
市川 宇山翼くん(庄和シニア)ですね。キャッチボールしたのですが、ストレートが凄く伸びますし、変化球もとてもキレがあるなと思いました。
投内連携を行う市川祐(新宿リトルシニア)
―― アメリカの代表選手の印象はどうでしたか。
市川 1番から9番まで小技を全然使ってこなくて、みんな大振りをするイメージがありました。また、変化球、ストレートに変わらず、初球からどんどん打ちにきましたね。
―― アメリカの投手を見て、違っている点や、今後自分に生かせるなと思った点はありますか。
市川 アメリカの投手は、細かいコントロールとか気にせずどんどん投げてるイメージがありました。また、変化球よりもストレートの方が多く投げていましたし、球の強さや伸びも全然違うなと思いました。アメリカの投手のストレートを投げれるようになりたいと思いましたね。
―― 日本代表でのチームメイトとは、今でも連絡を取ったりしますか。
市川 します。大阪狭山リトルシニアの石田琉稀くんとかけっこう連絡取ったりしてます。「最近どう?」とか「野球大丈夫?」とか話しますね。
―― 高校で対戦しようとかそんな話はしないんですか。
市川 そういうのも少しありますね(笑)
[page_break:目指すのは真っ直ぐで押していける投手] 日本代表を経験し、一段と逞しく成長した市川投手。次に見据えるのは高校野球の舞台だ。市川投手は来春、都内の強豪校へ進学予定で高校野球での活躍に思いを馳せている。
また緒方監督は市川投手の将来像を、かつて東京都で腕を鳴らした快速右腕と重ね合わせて、次のように語る。
「関東一の出身で、広島東洋カープの中村祐太投手ですね。中村投手と違うところは変化球もそこそこ投げれるのでね、もう一回り(上を)いくんじゃないかなと思いますし、それぐらいのピッチャーに欲しいなと思いますね」
市川投手への期待は高まるばかりだ。
ここからは、そんな市川投手に高校野球に向けての意気込みを語って頂いた。
目指すのは真っ直ぐで押していける投手
ピッチングを行う市川祐(新宿リトルシニア)
―― ここからは高校野球に向けての質問になります。まず、この夏の甲子園は見ましたか。
市川 休みの日はけっこう見てました。一番印象に残ってるのは、高知商と山梨学院の試合ですね。すごい打ち合いで、とても驚きました。
特に、山梨学院の中尾勇介選手が打ったホームランが印象に残ってます。とても勝負強いなと思いました。
―― ピッチャーで印象に残ってる選手はいますか。
市川 やっぱり金足農の吉田輝星投手です。ストレートがすごく伸びて、[stadium]甲子園[/stadium]に出ているような選手もみんな空振りしていて。本当に球がすごく伸びてるんだなと感じました。
―― 目標とする選手像があれば教えてください。
市川 プロ野球はあまり見ないのですが、高校野球だったらやっぱり吉田輝星投手ですね。
市川投手に大きな期待を寄せる緒方将介監督
―― どんなタイプの投手を目指したいですか?
市川 真っ直ぐで押していける投手を目指したいです。そのために、高校ではまず140キロを超えることを目標にしたいと思います。
―― 最後に高校に向けての意気込みを教えて下さい。
市川 入学したら1年生からメンバーに入れるようにして、甲子園に出られるようにしたいです。そして最終的には、甲子園で優勝出来るようにしたいと思います。
取材後記
インタビュー中は、ゆっくり言葉を選ぶように質問に答えた市川投手。慎重な性格なのかなと感じていたが、ピッチングが始まるとインタビュー中とは打って変わって、力強く豪快なピッチングを披露した。
市川投手には繊細さと力強さの、相反する要素を併せ持った不思議な魅力がある。その魅力が、数年後に全国の舞台で輝きを放つ日を楽しみに待ちたい。
文=栗崎 祐太朗