Interview

創価大学 寺嶋 寛大選手(興誠高出身)

2014.05.21

 今年、ドラフト候補として注目されている創価大寺嶋 寛大(かんだい)選手。高校時代は寮生活をしながら甲子園を目指していきましたが、捕手の立場から勝負の厳しさを実感した3年間だったようです。後悔しない高校生活を送るためにいろいろアドバイスを頂きました。

高校時代は寮生活。勝負の厳しさを実感した3年間

創価大学 寺嶋 寛大選手(興誠高出身)

――寺嶋選手は東京都の中野シニア出身。同じシニアの友人と一緒に甲子園を目指すために静岡の興誠へ進まれたと聞きましたが、寮生活はいかがでしたか?

寺嶋 寛大選手(以下「寺嶋」) みなさん、非常に厳しい寮生活を想像すると思うんですけど、興誠はそんなに厳しい規則があるわけではなく、先輩方もとても優しい方が多かったです。結構、気を遣ってもらっていたと思います。上下関係で苦労したことはないです。

――日々の生活で一番大変だったことは何でしたか?

寺嶋 掃除、洗濯ですね。今までは親に任せていたことなので、最初は大変でした。この時に親のありがたみを感じました。寮に入った仲間も同じように感じていましたが、高校生の時に、そういう経験が出来て良かったと思います。

――捕手にとって環境が変わることで苦労するのは、高いレベルの投手の球をしっかりとキャッチングすることだと思うのですが、キャッチング面など、何か苦労したことはありましたか?

寺嶋 捕手は頭脳がないと務まらないとよく言われるのですが、高校は中学と比べて複雑な場面に遭遇します。いろいろな状況を想定して、プレーしたり、野手に指示するのですが、なかなかうまくいかなかったですね。

――甲子園を目指して、興誠へ進んで、先輩のココが凄いと感じたことはありますか?

寺嶋 僕が1年の時の2歳上の先輩たちですね。技術的なモノは何もかも優れていて、すべてが憧れでしたね。自分はその中に入っていきたいと思っていたのですが、1年夏はベンチに入ることができませんでした。

――寺嶋選手の武器といえば、強肩強打。持ち味の強打を磨くためにどんな練習をしたことが大きかったですか?

寺嶋 やはり打撃はバットを振らないと始まらないので、気が済むまで打ち込み、素振りをしていたと思います。寮生活でしたので、自主練習は自宅通いに比べるとできたと思います。量は数えていませんが、とにかく自分の体力が続く限り、徹底的に振り込んでいました。その積み重ねで遠くへ飛ばせるようになって、高校通算本塁打は26本になりました。

――寺嶋選手といえば、1.9秒台を計測するスローイングもありますよね。素早く投げるために、捕ってから投げるまでの動作のなかで、意識していることはありますか?例えば肘の使い方。ステップなど意識していたことを教えてください。

寺嶋 一つの方法として僕がやっているのは右足を前に出すイメージでスローイングをすることです。どうしても速く投げようとするとステップするときに焦って右足を後ろに大きく取ってしまう癖があるんですけど、それでは遅くなってしまうので、捕球した時に右足を前に出すイメージで投げています。あくまで半身なのですけど、そういう動きをイメージすることで、右腕、右足を後ろに引きすぎない小さいスローイングが出来ます。
 あとはイニング間の送球でも、しっかりと実戦を意識して投げることも大切です。一時期、全力で投げないで軽く投げることを続けていたら、大事な場面で走者をアウトに出来ないということがありました。参考にするためにプロの捕手を見ていたら、一つ一つの動作を意識してやっていて、やはり練習からしっかりと投げないといけないと思い、今は常に捕ってから速く投げることを意識しています。

――最後の夏は3回戦で富士宮北高に敗戦。振り返っていかがでしたか?

寺嶋 今だから感じるのですけど、高校時代の自分は野球に対して甘かったと思います。2回戦で強豪・静岡商に5対3で勝利して、自分もその試合で4打数2安打1打点とそれなりに活躍が出来ました。しかしこの勝利で、周囲も、自分も、満足してしまったんですよね。
 富士宮北戦では、いきなり2点を先制されてしまい、その後も1点ずつ点を取られて、自分たちのペースで試合が出来ませんでした。相手投手の球をなかなか打てず、0対6の4安打完封負けで自分の夏は終わりました。
 今、創価大で4年間学ばさせていただいていますが、一球、一プレーを考えながらやっていればと…。今でも後悔が残る1敗ですね。

――3年間を振り返って、高校野球の魅力は何でしょうか?

寺嶋 これは現役の時は分からなかったのですが、引退して分かったことは、後輩のプレー姿を見て、高校球児はハキハキしていて、きびきびしていることが魅力だと思いました。
 いつも苦しい練習をしていると思うのですが、彼らの試合を見るとひたむきに、明るくやっていて、もう一度高校野球をやりたくなります。だから試合中に楽しくやれるように普段から懸命に練習をして、試合では楽しく明るく出来るようなチーム、選手になってほしいと思っています。

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[page_break:小川泰弘投手の出会いが自分を大きく成長させた]

小川泰弘投手の出会いが自分を大きく成長させた

創価大学 寺嶋 寛大選手(興誠高出身)

――創価大といえば、東京ヤクルトで活躍する小川泰弘投手がいましたね。小川投手とバッテリーを組んだのは、寺嶋選手にとって大きな成長のきっかけになりましたか?

寺嶋 かなり成長させていただきました。小川さんは自分にとって、この4年間、小川さんの話ばかりになってしまうぐらい大きな存在です。特に精神面、リード面でいろいろ教えてもらい、技術だけではないということを教えてもらいました。

――精神面では、小川投手の取り組みを見て、具体的にどんなことが変わりましたか?

寺嶋 入学当時は自分のことしか考えられていない、取り組みの甘い自分がいました。でも先輩方のプレーを見て、チームのことも考えなければならない、一球の大切さを普段の練習から感じながら練習をしなければいけない、ということに気づきました。
 チームのことを考えると周りのことも考えながらプレー出来ますし、一球の大事さを感じて、一つのプレーに対して意味を考えながら取り組んでいます。小川さんは実際に受けていても失投がないですし、一球一球どう考えながら投げているのかが分かります。

――1年秋から小川投手とバッテリーを組んで、小川投手の持ち味を引き出すためにどういうリードを心掛けるようになりましたか?

 

寺嶋 相手打者、相手ベンチに「一球の印象」を与えることですね。小川さんはインコースストレートのコントロールと球威が素晴らしかったので、たとえばインコースに強いボールを投げれば、相手はインコースに強いボールが来ると頭に残りますよね。そうなると、他の球種で勝負できます。小川さんは変化球も勝負球になりましたので、裏をかいて変化球で三振を奪う事も多かったですね。
 小川さんと組んでいて学んだのは、ただ相手の弱点を探って勝負するだけではなく、心理的なもので勝負することも大切だということです。

――リードは相手主体なのか、それとも投手を主体として組み立てをするのでしょうか? また投手の考えは尊重しますか?

 

寺嶋 その日の投手の調子、打者の特徴もそうですが、自分は相手野手の目つきを見ますね。初球から手を出しそうな選手、この選手は2ストライクまで待ちそうな選手だな、などと。目つきを見るとなんとなく判断ができますので、自分の感性を生かして組み立てをしています。

――創価大は日本一を目指すチームだと思います。勝ちを導くためには投手の持ち味を引き出すことだと思いますが、寺嶋選手は最上級生という立場になって、どのように投手と付き合い、引っ張っていますか?

 

寺嶋 今までは小川さんに育ててもらっていた立場ですが、今度は自分が後輩を指導しなければならない立場なんだぞ、といろいろな方から言われました。
 まず投手には、小川さんの練習に取り組む姿勢、一球に対する大切さ、投球についての考え、精神面を伝えています。今年の投手陣は能力的に高い投手が多いですし、取り組みも変わって、投球についても一球を大事にしながら投げていて、実戦でも力を発揮できるようになっています。

――大学になると、140キロ台を計測するうえに、さらにキレのある変化球を投げる投手が当たり前のように出てきます。そういう投手の球を難なくキャッチできるようになるために取り組んだこと。良いキャッチングが出来るコツを教えてください。

 

寺嶋 今でもキャッチングは難しいと思っているのですが、ミットが流れないようにすることや、良い音を鳴らしながら捕球すること、この2つのことを意識しながらブルペン、実戦で捕りつづけるしかありません。
 あとは動画サイトで、プロの捕手のキャッチングを見ることもありますし、あとは強豪大学、社会人野球のチームと対戦することも多いので、相手チームの捕手からも学ぶことが非常に多いですね。

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[page_break:後悔しないように一日を大事にしてほしい]

後悔しないように一日を大事にしてほしい

創価大学 寺嶋 寛大選手(興誠高出身)

――寺嶋選手といえば、パワフルな打撃です。木製バットに代わって、本塁打を打てる打撃を身に付けるまでどんな練習法、または技術的にはどんなことを意識してきましたか?

寺嶋 木製バットで自分の打撃が出来るようになったのは大学3年からで、言葉で説明するのも難しいですが、感覚が変わりました。木のバットはヘッドが重くて下から出やすいので、ヘッドが下がらないように上から叩くように振り込む、打ち込むことを意識していました。そして高校時代と変わらず素振りを重ねてきました。ただ素振りするだけではなく、相手投手を想定したり、コースを想定したりして振っていますね。

――最終学年を迎えて、リーグ戦も終盤ですが、ご自身の結果、またチームについてはいかがでしょうか?

寺嶋 自分は開幕節で本塁打を打ちましたが、その後は思うような結果を残せていないので、もっと勝負強い打撃を見せていかないとダメですね。
 捕手としては、今年は小川さんがいた時代と比べると投手陣の駒が豊富で、右の小松 貴志(3年・創価)、田中 正義(2年・創価)、池田 隆英(2年・創価)、秋元 秀明(2年・三浦学苑)、福岡 拓弥(1年・龍谷大平安)と5人いるので、彼らの持ち味を引き出せるように心掛けています。

――今年はプロ入りを狙っていると思いますが、現在、課題にしていることを教えてください。

寺嶋 やはり捕手なので、スローイング、キャッチングを大事にしています。特にスローイングはとにかくコントロールを安定させて、すべて刺すぐらいのイメージでやっています。打撃はネクストバッターサークルで、タイミングを取って待つことを意識する。ただ待つだけではなく、実戦を意識して取り組んでいます。

――最後に甲子園出場や、プロ野球選手になるために高校野球へ飛び込んで、慣れないこともありながらも懸命に練習に取り組む新入生に、こういう準備をすれば今よりも上手く、楽しく野球が出来るのではないかと思うことをぜひ教えてください。

寺嶋 後悔だけはしてほしくないですね。自分は高校3年の時、試合に対する意識の甘さで3回戦で負けました。今になって気付けたことは良いとは思うんですけど、あの時に今のような気持ちでやれば、勝てたかもしれないですし、自分の失敗談も込めて言っています。

 高校3年間、大学4年間は長いようであっという間に過ぎています。高校3年夏のような後悔だけはしないように、大事に取り組んでいます。

 寺嶋選手、ありがとうございました。高校時代のお話、そして大学時代のお話はとても興味深くタメになるものでした。ぜひ今年は創価大の司令塔として、一つでも多く勝利を導くことを期待しています!

 

(インタビュー・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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