大阪偕星学園vs堺上
将来に期待膨らむ1年生トリオ
![大阪偕星学園vs堺上 | 高校野球ドットコム](/hb/images/report/osaka/20160429001/photo01.jpg)
投手・道脇龍之介(大阪偕星学園)
旧チームからクリーンアップを任されていた岸頼大(3年)を故障で欠く大阪偕星学園、ショートを守るキャプテン・的場優斗(3年)を除けば、内野はファースト・岡田響(1年)、セカンド・宇佐美真太(1年)、サード・安東希(1年)と全て1年生がスタメンの座をつかんだ。しかも宇佐美が1番で安東が3番、岡田が6番と重要な打順を任されている。
切り込み隊長の宇佐美は初回、プレーボール直後の初球をいきなり打つ。「1年生なんで思い切って行かないと。見逃したら気持ち重くなってしまうし、チームに勢いをつけたかった」レフトオーバーで悠々二塁に到達すると相手の送球が高く浮いたのを見逃さず一気に三塁へ。
好判断で1つ先の塁を陥れると、2番・枚田怜(2年)が放った鋭い打球は堺上のショート・曽根洸我(3年)のグラブの先を抜け、わずか4球で先制に成功。先制の一打は左中間寄りのセンター前ヒットだったがセンター・宮本良粋(3年)の捕球体勢が十分でないと見るや枚田も好走塁で二塁に到達。結局この判断が生き、枚田は安東のセンターフライで三塁に進み、4番・土生敦弘(3年)のセンター前ヒットで2点目の生還を果たす。
幸先良く先制するとその後も2回に4つの四球をもらい押し出しで1点、5回にも相手にもらったチャンスを逃さず2点を加える。6回には前の試合で2本塁打を放っていた安東が更にリードを広げるツーランを放つ。これで1大会3本目。あまり騒がれていないが、1年春で3本を打っている選手はそうはいない。今から覚えておくべき逸材だろう。
「手応えはバッチリ。良かったです」という高く舞い上がった滞空時間の長い打球は大きな弧を描いてライトフェンスの向こう側へ落ちた。5点リードの9回には打者12人を送り込みダメ押しには十分過ぎる7得点。宇佐美、安藤はこの日2本目の安打を放ち、ここまで無安打だった岡田も5打席目で初安打。1年生トリオが揃い踏みした。
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投手・野口航(堺上)
15-3。スコアだけを見れば大勝だが試合後の山本皙監督は「全然。課題の多いゲームですね。普段どんな気持ち込めて練習してるかが如実に出たゲームですね」と収穫よりも反省点が口をついた。
積極的な打撃で先制の起点となった宇佐美も直後の守備では慎重に行き過ぎて平凡なゴロをファンブル。「アウト取ろうと思ったら固くなって、足動かなくなって前に出れませんでした」3回に一死二、三塁のピンチを背負った場面では前進守備を敷いていたにも関わらずセカンドゴロでスタートを切ってしまった三走を目で牽制しただけで一塁へ送球。防げたはずの1点を献上してしまう。
長打力が武器の安東も一発を放つ力はあるが、打球のほとんどが高く上がる傾向があり、しっかりと自分のポイントで捉えられないと簡単なポップフライを量産してしまいがち。
巨漢の岡田は5回無死一、二塁からバントをファールにしてしまうと山本監督はサインではなく相手にも聞こえる大きな声で「バント」と指示。山本監督が「普段の練習態度が試合に出た」と話したうちの一つだろう。
相手に付け入る隙を与えてしまってはいるが、そこはまだ1年生。これからの伸び代の方が大きい。「100回やって出来ないなら1000回。1000回やっても出来ないなら1万回」と猛練習をこなすのが山本監督率いる大阪偕星学園の特徴。大会期間中は夜7時頃に練習が終わっているがそれまでは10時11時までするのが当たり前。宇佐美は「精神的にきついです」安東も「きついっす。人生の修行だと思って来ました」と本音をこぼす。
しかし、その成果も確実に現れている。先発し6回を4安打1失点に抑えた道脇龍之介(3年)は、入学時は決して球速の出る投手ではなかったが、今は140km/hを軽く超える。試合の入りに課題を残すが「大学でやったら150km/h出る」と山本監督の期待も大きい。
試合が終わると午後からの練習のため足早に球場を後にした大阪偕星学園、次戦で大阪桐蔭とぶつかる。昨春の決勝で敗れ、昨夏の準々決勝でリベンジした相手との再戦は間違いなく今春注目の好カードだ。
(取材・写真=小中 翔太)
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