試合レポート

PL学園vs大阪商大堺

2014.09.29

見える戦術の進化

PL学園vs大阪商大堺 | 高校野球ドットコム

スクイズを決める宮木樹(PL学園)

 9安打10得点での7回コールドゲームで、夏に続いての決勝進出を果たしたPL学園。だが、試合後のミーティングは長かった。ベンチ入りメンバーだけのミーティングが終わると、今度は主将の謝名堂陸(2年)、それに大丸巧貴辻涼介(ともに2年)の三人に対して、千葉智哉コーチのミーティングが数分間あった。

 「結果は大差で圧勝しているように見えますが、ミスなど練習の成果が出てない所があった。大阪の決勝、(その先の)近畿大会まで時間があるので、その部分を練習で修正したい」と話した謝名堂主将。

 練習の成果が出ていないと思う所を具体的に聞くと、「バッティングは積極的に、走塁も意識しているがまだ甘い。徹底できてないので、その辺りをミーティング話し合ってもっと意識させたい」という答えが返ってきた。

 確かに点は取れているしバットは振れているように見える。それでも細かい部分に目を向けると、まだまだという点が多いのだろう。裏を返せば相手との力関係で点は取れているしバットは振れているように見えるのかもしれない。

 ただ選手自身が策を考えて試合をするようになって二世代目。メンバーはほとんどが入れ替わったが、旧チームの財産も大きくあり、繰り出す戦術は少しずつ進化している。この試合でそのポイントとなる部分がいくつか見られた。

 まずは1点をリードしていた2回。一死から9番中田一真(2年)が死球で出塁すると、続く1番謝名堂はバントではなくバスター。これがヒットとなりチャンスを広げると、その後四球で満塁となって、3番辻にタイムリーで中田と謝名堂が生還した。

 この攻撃パターンが繋がったのが4点リードとなっていた5回の攻撃。ここでも一死から6番大和久広輝(2年)がヒットで出塁する。続く打者はピッチャーでもある山本尊日出(2年)。守る大阪商大堺は、2回にバスターを決められており、バントを含めてどんな策で来るか考える場面だ。PL学園でサインを出す背番号15の奥野泰成(2年)が色んな策を匂わせつつ、最終的に指示したのは、ヒッティング。これに応えた山本の打球がライト前へと落ちる間に、大和久は三塁まで進んだ。

 そして続く8番宮木樹(2年)がセーフティ気味のスクイズを決める。この場面も三塁走者の大和久が一度ノーマルスクイズの用にスタートを切る素振りを見せながら、一度止まって、セーフティ気味のスクイズに見せかけている。こうやって足がかりを作り、1番謝名堂の2点タイムリーでこのイニング3得点。勝負を決定づける意味で大きな意味のあるイニングとなった。

 今チームでも試合中は主将の謝名堂を中心に選手でどうゲームを進めるかを決め、サインも控え選手の奥野が出すPL学園。監督登録の正井一真校長も2年目のベンチとなりダミーサインを出すようになった。これで時に奥野自身がダミーサインを出して、他の選手も一部で本当のサインを出すようになれば、さらに相手を撹乱できるかもしれない。

 そんな妄想をさせてくれるだけの魅力を、PL学園の野球から感じる。
 
 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.16

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.16

【大阪】17日に抽選会!打倒・大阪桐蔭なるか、大阪学院大高や興國などはもちろん、ノーシードの履正社の対戦相手も注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.16

青学大が中田、藤原のタイムリーで逆転に成功!1点をリードして後半戦へ!【全日本大学選手権決勝】

2024.06.16

【東北】17日に準決勝!近年強さが目立つ青森勢か、盛岡大附の復活Vなるか<地区大会>

2024.06.16

大阪工業大の新入生に八戸学院光星の二塁手、敦賀気比、東海大星翔の正捕手など甲子園組や近畿の逸材が入部!

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.16

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】旭川支部の抽選会は12日!旭川実、旭川志峯など強豪の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得