PL学園vs大阪商大堺
見える戦術の進化
スクイズを決める宮木樹(PL学園)
9安打10得点での7回コールドゲームで、夏に続いての決勝進出を果たしたPL学園。だが、試合後のミーティングは長かった。ベンチ入りメンバーだけのミーティングが終わると、今度は主将の謝名堂陸(2年)、それに大丸巧貴、辻涼介(ともに2年)の三人に対して、千葉智哉コーチのミーティングが数分間あった。
「結果は大差で圧勝しているように見えますが、ミスなど練習の成果が出てない所があった。大阪の決勝、(その先の)近畿大会まで時間があるので、その部分を練習で修正したい」と話した謝名堂主将。
練習の成果が出ていないと思う所を具体的に聞くと、「バッティングは積極的に、走塁も意識しているがまだ甘い。徹底できてないので、その辺りをミーティング話し合ってもっと意識させたい」という答えが返ってきた。
確かに点は取れているしバットは振れているように見える。それでも細かい部分に目を向けると、まだまだという点が多いのだろう。裏を返せば相手との力関係で点は取れているしバットは振れているように見えるのかもしれない。
ただ選手自身が策を考えて試合をするようになって二世代目。メンバーはほとんどが入れ替わったが、旧チームの財産も大きくあり、繰り出す戦術は少しずつ進化している。この試合でそのポイントとなる部分がいくつか見られた。
まずは1点をリードしていた2回。一死から9番中田一真(2年)が死球で出塁すると、続く1番謝名堂はバントではなくバスター。これがヒットとなりチャンスを広げると、その後四球で満塁となって、3番辻にタイムリーで中田と謝名堂が生還した。
この攻撃パターンが繋がったのが4点リードとなっていた5回の攻撃。ここでも一死から6番大和久広輝(2年)がヒットで出塁する。続く打者はピッチャーでもある山本尊日出(2年)。守る大阪商大堺は、2回にバスターを決められており、バントを含めてどんな策で来るか考える場面だ。PL学園でサインを出す背番号15の奥野泰成(2年)が色んな策を匂わせつつ、最終的に指示したのは、ヒッティング。これに応えた山本の打球がライト前へと落ちる間に、大和久は三塁まで進んだ。
そして続く8番宮木樹(2年)がセーフティ気味のスクイズを決める。この場面も三塁走者の大和久が一度ノーマルスクイズの用にスタートを切る素振りを見せながら、一度止まって、セーフティ気味のスクイズに見せかけている。こうやって足がかりを作り、1番謝名堂の2点タイムリーでこのイニング3得点。勝負を決定づける意味で大きな意味のあるイニングとなった。
今チームでも試合中は主将の謝名堂を中心に選手でどうゲームを進めるかを決め、サインも控え選手の奥野が出すPL学園。監督登録の正井一真校長も2年目のベンチとなりダミーサインを出すようになった。これで時に奥野自身がダミーサインを出して、他の選手も一部で本当のサインを出すようになれば、さらに相手を撹乱できるかもしれない。
そんな妄想をさせてくれるだけの魅力を、PL学園の野球から感じる。