試合レポート

健大高崎vs樹徳

2013.10.07

9回に2点差を追いついた健大高崎、延長13回粘り強くサヨナラ勝ち!

健大高崎vs樹徳 | 高校野球ドットコム 

2安打1四球2盗塁の活躍を見せた脇本君(健大高崎)

 この日の準決勝は、2試合続けての高崎勢と桐生勢の対決となった。しかも、2試合続けて9回に波乱が起きるという内容も充実した日だった。

 健大高崎は左腕高橋和君、樹徳は1年生ながら安定感があるということで背番号10の葭葉(よしば)ニコ君が先発。先制したのは健大高崎で初回、二死から脇本君が四球で出ると、すかさず二塁盗塁して柴引君が右前打で帰して、わずかなスキに足を使ってかき回して、そこにつけ入るという健大高崎らしい形での得点の入れ方だった。

 しかし、樹徳もすぐに2回に反撃。四死球と6番山本君の安打などで二死満塁という場面を作ると9番の葭葉君が左中間を破る三塁打で走者一掃して逆転した。健大高崎の外野陣もやや浅かったかもしれないが、それを狙いすましたように破った打撃は褒められるだろう。

 これで、試合の流れは樹徳のペースとなっていった。葭葉君は2、3回といずれも先頭打者に安打を許しつつも、何とか抑えていた。4回に健大高崎は一死から脇本君が左翼線へ二塁打すると、またしても盗塁を絡め、内野ゴロの間に生還という、健大高崎の機動力野球で追いかけていった。ただ、あと1点がなかなか遠かった。

 逆に8回、樹徳が突き放す。二死走者なしで5番渡辺君が左中間を破ると、その中継もやや乱れた間に、渡辺君はそのままホームに帰ってきた。貴重な追加点となった。「正直、あれで負けも意識しました」と、健大高崎の青栁博文監督も、試合の流れからも観念しかかっていた。

 それでも、この大会ではここまで1点差試合を3つモノにしてきた健大高崎は粘り強かった。1番からの好打順で始まった9回、先頭の長島君は倒れたものの、2番平山君はしぶとく中前打すると、当たっている脇本君は右線に二塁打して二、三塁。1年生ながら4番に座る柴引君が、期待に応えて右前打して二者が帰って同点。健大高崎は土壇場で追いついた。


健大高崎vs樹徳 | 高校野球ドットコム 

粘り強い投球を見せた葭葉君(樹徳)

 試合は延長にもつれ込んだ。両投手、球数も多くなってきたものの、試合展開からも投手は代えられないという雰囲気だ。10回、ともに走者を出すものの攻めきれず、11回は健大高崎が2死満塁とサヨナラ機を作ったが、ここは葭葉君が踏ん張った。

 12回に今度は樹徳が2死満塁と突き放すチャンスを迎えるも、高橋和君も何とか凌いでいった。どちらも守りが粘って、さらに延長は続いた。

 こうして迎えた13回、健大高崎は1番からだったが、ここまで無安打だった長島君が右前打で出ると、平山君もショートへの内野安打でつなぐ。無死一、二塁で当たっている脇本君だが、ここは手堅くバントで送り二三塁。4番には9回に代走が出た関係で、どちらかというと守備の人でもある横溝君が入っていた。樹徳バッテリーも、満塁策は取らずここは勝負に出たのだが、気持ちで勝っていた横溝君は、遊撃手後ろ、左翼手の手前にポトリと落とすポテン安打で、これがサヨナラとなった。3時間を超える熱闘に決着がついた。

 青栁監督は、「こういう試合が出来るという粘りは、このチームは持っているんですよ」と、半ば失いかけた試合をものにして満足げだった。「横溝は、11回の打席でもヒットを打っていましたから、13回は、ツイているぞと言って送り出しましたが、本当にそうなりましたね。高橋和は、あまりよくなかったですけれども、よくないなりにも投げられるというのも成長でしょう」と、持ち味の“機動破壊”に、粘りも加わって、今年も健大高崎は関東の高校野球を沸かせそうだ。3番に入っている脇本君が、夏から大きく成長しているのも、チームとしては核が作りやすくなっているのだろう。この日も2安打1四球で2盗塁し、出塁がすべて得点に絡んでいた。

 3番遊撃手の野平君の存在が核となっている樹徳は、「(難しい打球だったけれど)ショートは捕ってほしかったなぁ」と、井達了監督は9回と13回、いずれも安打となった平山君の打球を悔しがった。守備範囲の広い野平君だけに、監督の思いもあったのだろう。それでも、葭葉君に関しては、「よく投げたと思います。粘り強い投球は出来たのではないでしょうか」と評価していた。ただ、強豪入り乱れる形になってきた群馬県だけに、「全体にもう少しずつアップしていかないと、抜けられないでしょう」と、自分自身が主将として出場した以来の甲子園へ向けて、再挑戦を誓っていた。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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