徳島商vs徳島北
龍田祐貴投手(徳島商2年)
徳島商、「磐石」で2年ぶり秋季四国大会へ!
4回までは8対0と5回コールドを見据える戦いから一転、最速139キロと鋭い横スライダーが武器のエース龍田祐貴(2年・右投右打・172cm71kg)が降板した6回以降は両者に得点が入り続ける乱戦に。
スコアボードをだけを見れば読者の皆さんは「表題に誤りあり」といわれるかも知れない。しかし、2年ぶり28度目となる秋季四国大会進出を決めた徳島北戦における徳島商の戦いは「磐石」への過程としては最高の試合だったと筆者は敢えて断言したい。
その理由は今年4月にOB指揮官として就任した森影浩章監督の「狙いを持った采配」にある。過去、那賀、富岡西、小松島と決して強豪校といえない学校を全て四国大会に導き、小松島では春3度、夏1度甲子園に導いたことから「森影マジック」とも徳島県高校野球関係者から称される知将は、この試合でも激しい動きを見せた。
1回一挙4得点から2・3回と無得点に終わった打線には「インコースのストレートを引っ張るな!また同じことを繰り返すつもりか!」と怒りをあらわにして、相手エース・坂東拓哉(2年)生命線であるアウトコースの変化球に的を絞らせて4回の4得点につなげ、大量リードを奪うと龍田を始め次々と選手交代、ポジション交代を行うことで決勝戦への緊張感を持続させるベンチワークを披露。
「コールドできるところでできなかったし、スキがある」とこの日4打数4安打、秋季大会通算17打数12安打、打率7割6分と大爆発を見せている1番主将の増富太鳳中堅手(2年・右投左打・173cm58kg)は7回コールド勝ちにもほとんど笑顔を見せなかったが、それは裏を返せば指揮官の意図が約半年を経て選手たちに完全に浸透している表れだろう。
それでも試合後には「6・7回に守備の乱れ(2失策1暴投)から失点し、先頭打者がライトゴロに終わる悪い流れからよくコールドまで持っていった」と選手たちの反発力を敢えて賞賛した森影監督。もし、この反発力もセンバツ出場へ向けて全て計算された布石であったとしたら・・・。四国大会でも磐石への過程を重ね続けるであろう「森影マジック」。その動向には今後も要注目だ。
(文=寺下 友徳)