【交流試合】打線絶好調の川口市立が飛ばないバットを感じさせず、千葉英和を強打で圧倒
この日、3本塁打の川口市立・坂本楓弦君
<交流試合:川口市立13-2千葉英和、川口市立8-3千葉英和>◇3月31日◇川口市立第2校区グラウンド
川口市立(埼玉)の宇田川 健投手(3年)は、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に侍ジャパン投手陣の1人として選出された、オリックスの宇田川 優希投手(八潮南出身)の弟ということでも注目されている。八潮南時代に兄を指導している川口市立の市川大恭コーチは「素材力としては、むしろ兄よりも上ではないかと思えるくらい」と、評価している。
鈴木久幹監督は、「将来ということを見据えて育てていきたいと思っていますから、ここがピークではなくていいと思います。次のステージ(大学)で大きく成長して、将来(プロ)を目指してほしい」と期待している。その宇田川と4番の西澤 剛の打撃は高く評価されている。それだけに、新チームスタート時から期待が高かった川口市立でもあるが、昨年秋は南部地区予選1回戦で細田学園に屈した。「このチームで(地区予選を)勝てなかったのは、監督の責任ですね」と、鈴木監督はいろいろな判断ミスがあったことを悔いていた。
対する、千葉英和(千葉)は、昨秋に松戸国際、市立千葉を下して県大会に進出したが、県大会では初戦で習志野にコールド負けしている。そこからの再出発ということになる。
春季県大会の地区予選も、4月上旬と間近に迫ってきているのだが、そこへ向けて千葉英和はこの日が大会前の最後の練習試合ということになる。埼玉県の川口市立は、もう少し時間的には余裕があるが、つい先日に関西遠征から帰ってきたところでもある。
関西遠征では悪天候もあってすべての予定は消化しきれなかったが、甲子園見学(25日)は何とか実施できた。京都の乙訓との試合は、雨で中止となったものの、室内練習場を貸してもらえたことで、ある程度の打ち込みはできたという。そして、金光大阪(大阪)と高岡商(富山)との試合は実施できて、結果としては連勝。ことに、ガチンコ対決の金光大阪との試合では、相手の好左腕投手の立ち上がりを攻めて快勝している。元気が良くて、いつもチームとしても学ぶところが多いという金光大阪との戦いで、いい試合ができたことは、自信と勇気を得られたという。そして、その遠征の成果を見せるかのように、この日の試合では打線が爆発した。
プロ野球でもめったに見ることのない1試合3本塁打を、川口市立の6番・坂本が放った。すべて、右越え本塁打で2回と6回にソロ。7回には代わった奥平から2ランを放った。これには応援に訪れていたネット裏の保護者たちも唸らされた。さらに5打席目の9回にも同じような打球で右越え二塁打。この日は5打数4安打3本塁打と二塁打で14塁打、打点6と大暴れだった。
さらには、一塁の守りでも好プレーを見せていた。鈴木監督は、「私もビックリですけれども、中学時代は主将だったけれども控え選手だったんですよ。頭のいい子なんですけれども、メンタル面の成長が大きくて、今回の遠征でも自信を得られたのではないでしょうか。もっと成長していってほしいですね」と、期待を込めていた。
また、注目の西澤は、初回の四球後の2打席はもう1ついいところがなかったが、7回の4打席目には、しっかりと呼び込んで右越へ3ランを放った。まさに打った瞬間に行ったと思える豪快な一打だった。さすがに‟埼玉県一番のスラッガー”という評価を裏切らない一打だった。しかも、「打ちたい気持ちは強いだろうけれども、ボール球には手を出さないという姿勢を貫く」という。これは、入学してきた当初から、鈴木監督が口を酸っぱくして言っていたことだというが、それをしっかりと守っているあたりにも西澤の非凡さが伝わる。
宇田川は、この日は5イニングを投げたが、「まだまだベストではない」という。5回で2本の二塁打を打たれ2失点。5回に、味方が1点リードしてくれた後の守りで、先頭に二塁打を許し、死球も絡んで、最終的には二、三塁から暴投で同点とされてしまったのは反省事項と言えよう。
川口市立では、宇田川投手の後に投げた左腕・飯出投手のキレの良さが光った。大きなタテのカーブは、キレすぎて捕逸となってしまうということもあったが、空振りの取れる投手と言っていいだろう。宇田川に注目が集まるが、実は川口市立ではこの飯出も相当、評価は高い。鈴木監督も、「どこかの大学野球で続けてほしいと思っていますから、いろいろな大学の人たちにも声をかけています」という。
川口市立の打線は、新基準バットの影響は全くないかのように、しっかりと振りながらも、球をしっかりと捉えている。2試合で4本塁打、10二塁打の猛攻である。2試合目でも、初回に2死走者なしから向出、篠田、菊池 悠成の3連続二塁打も見事だった。まさに、打線は上り調子で全開に近いといってもいいくらいである。
千葉英和の仁井田意監督は「前半は、競り合っていたし、いい試合になっていくかなと思ったんですけれども、後半はどうしようもなかったですね。久しぶりに、悔しさを通り越して気持ちいいくらいの負け方でした」と苦笑していた。
それでも、5イニングを2失点で抑えた石井投手には、それなりの「いける感触」は得ていたのではないだろうか。また、期待しているという、チェコ人とのハーフの左腕・奥平マーティンそら投手に関しては、1試合目ではワンポイントで起用したが、坂本にものの見事に3本目の本塁打をくらってしまった。しかし、次の試合では気持ちを持ち直して6回から3イニングを投げ、8回の1失点のみで何とか凌いだ。ただ、制球には、いくらか難を示していたのが気になるところだった。仁井田監督も「どうしてもボールから入ってしまうんですね。まだ、上で投げられるようになってそれほど経験していませんから、新2年生でもありますし、これからしっかり経験を積んでいけば、どうにかなるのかなと思っています」と、期待も高いようだ。
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