安樂智大が渡る「メキシカンリーグ」の現実とは…「給料未払い」「武装警官」「トラックの荷台で移動」「1日でクビ」「最高月給は100万円」
U-18世界野球選手権大会日本代表当時の安樂智大
前楽天の安樂 智大投手(済美)がメキシカンリーグの強豪・ディアブロス・ロホス・デル・メヒコ(英語名:メキシコシティ・レッドデビルズ)のキャンプの招待選手になったことが報じられた。同チームは通算22回のリーグ優勝を誇る強豪だという。
メキシカンリーグでプレー経験のある2人の日本人選手に契約、治安の話、レベルなどメキシコ野球のリアルについて話を聞いた。
契約ミスでメキシコのマイナーリーグへ
2016年、メキシカンリーグの下部リーグの「Rojos De Caborca」でプレーしていたのは冨田 康祐氏。2012年から2014年までDeNA、2015年はMLBのレンジャーズとマイナー契約を結び、マイナーリーグでプレー。翌年、四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズで自主トレしていたときに、メキシカンリーグの話が舞い込んできたという。
「『メキシコのチームが日本人を探している』とアメリカから日本、そして香川に入ってきたんですね。元々僕は海外でプレーしたいという希望があったんです」
冨田氏はアメリカの代理人とメールでやり取りをしながら、開幕1週間前に契約が決まった。しかしここで行き違いがあった。冨田氏と代理人の認識はメキシコの最もレベルが高い「メキシカンリーグ」の契約だった。しかし球場に到着するとどうもおかしい。
「どう見ても雰囲気が違うな、と思いました。いろいろ調べ、球場にいた選手に話を聞くと、(メキシカンリーグの下部にあたる)マイナーリーグということでした」
この行き違いはなぜ起こったのだろう。
「まず選手がほしい旨をメキシコ球団のGMがアメリカの代理人に話をしますが、メキシコはスペイン、そしてアメリカは英語ですから、交渉にはどちらもできる通訳が入ります。しかし通訳がうまく解釈できず、伝言ゲーム状態になる。だから当初の話とは全く違う内容になってしまったようです」
給料未払いで移籍を決めると…「すぐ払うから!」
結局、冨田氏がそのチームに在籍したのは1ヶ月ほどだった。結果を残せなかったのではない。開幕投手を任されたり、奪三振トップに輝くほどの活躍をしていた。しかし、給料が支払われなかったのだ。そのタイミングで、台湾プロ野球のオファーが舞い込んだため、メキシコを離れることにした。
「給料も払われていないので『もういいかな』と思いました。台湾に行くことと、給料が払われないことを話すと、現場の人間はみんな驚いていました。『すぐ払うから!』といってくれたのですが、すでに台湾に行くことが決まっていました」
最終的に給料は支払われたようだが、こういうことも起こるのがメキシカンリーグである。一方で、メキシカンリーグは日本人選手の需要が高いという。
「間違いなく高いですね。僕が所属していたチームは日系企業が多い街と聞いていたので、日本人を求めていました。メキシカンリーグには“外国人枠”があり、その中でNPB経験者を求めている球団は多くあります。
トップリーグのチームの助っ人枠の選手には、月100万円が入るとも聞いています。過去には荒波(翔・元DeNA)さんもプレーしていましたし、現在は僕も日本で一緒にプレーしていた乙坂(智・元DeNA)もプレーしていて、NPBでの実績があるのは大きなアピールです。安樂投手もそこに入ったのかなと思います」
昨年、楽天の一軍で57試合登板した安樂は、メキシカンリーグに挑戦した日本人選手では屈指の大物ということになるだろう。ある程度生活の保障がされるのは間違いないだろう。
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『気になる治安、球団からは「球場の往復以外は責任は持たない」と通告』
『メキシコ選手ですら入団をためらうチームも…』
『「打高投低」、変化球が曲がらない、1日でクビになる』