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休暇明けの練習再開でケガをしないために【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2023.12.31


こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

いよいよ今年最後のセルフコンディショニングコラムとなりました。多くの皆さんは冬休み休暇で帰省したり、自宅でのんびり過ごしたりしているのではないでしょうか。中には体力が落ちないように日々トレーニングやランニングを行っている選手もいることでしょう。さて今回は休暇明けの練習再開でケガをしないために、休暇中はどのように過ごしたらいいのか、新年のスタートをケガなく乗り切るために心がけたいことなどをお話しようと思います。

自重トレーニングやジョギングなどで体に刺激を加えよう

休みが続くとケガをしやすくなる?

ケガにはアクシデントによって起こる急なケガ(スポーツ外傷)と、繰り返し動作などで特定の部位に大きな負担がかかり、少しずつ痛みが増す慢性的なケガ(スポーツ障害)という二つに大きく分けられます。特に慢性的なケガは疲労の蓄積によって筋力や柔軟性などが低下し、そこからケガにつながることが多いため、練習を休んで疲労回復を優先させると改善するケースも多くあります。冬休み休暇やテスト期間など一週間から10日間程度の休みは、たまった疲労を回復させるには十分な期間ですが、一方で「休みが続くとケガをしやすくなる」と言われると少し疑問を持たれるかもしれませんね。

これは普段から鍛えてきた体力が、時間の経過とともに少しずつ落ちていくことが原因の一つとして挙げられます。練習やトレーニングを一時中断、もしくはある一定期間行わないことによって今まで積み上げてきた運動効果が部分的、あるいは全体的に失われてしまうことを専門用語で「ディトレーニング」と言います。ディトレーニングによる影響は、心肺持久力や筋力などの体力要素に現れやすいと言われていますが、短い期間であればさほど大きな影響はないと考えてよいでしょう。ただし「あまり影響しないから」といって、まったく体を動かさない状態が続いてしまうと、休暇明けの練習再開時に思わぬケガをしてしまうことがあります。

短時間でもいいので体に刺激を入れる

ここでいつもの練習を思い返してみてみましょう。ウォームアップからメインの技術練習、フィジカルを鍛えるためのトレーニングやランニング、クールダウンに至るまで、ある程度の運動(練習)時間があり、運動強度、運動量などに対して体を動かしていることと思います。これを毎日のように繰り返していたところから、急に体を動かさない日々が続いてしまったら…。体は少しずつ「動かさない日常」に馴れてしまいます。体を動かさないことが標準モードになってしまうと、練習再開後の運動時間、運動強度、運動量に「ついていけなくなる」可能性が高く、強い運動負荷によってケガをしやすくなることも考えられます。こうしたケガのリスクを防ぐためにも、休み期間中は「体力レベルの維持」を念頭に置いた上で、ある程度定期的に体を動かすことを心がけましょう。軽いジョギングや自宅でできる自重トレーニング、短時間で運動負荷の高い縄跳び、柔軟性を維持するためのストレッチ等、運動負荷は多少落としても何かしらの運動を継続して行うことが大切です。

外出から戻ったら必ず手洗い・うがいを行おう

リフレッシュは大事、でも生活リズムを乱しすぎない

休暇中は、頭を切り換えて「休暇を楽しむ」ことも大切です。ただし生活リズムが大きく乱れてしまい、その状態が何日も続いてしまうと免疫機能が低下して風邪などの感染症にかかりやすくなったり、睡眠不足になって日中に眠気を感じ、ボーッとして集中力が低下したり、といったことが考えられます。体調を崩さないように行動することも、野球選手として大切なことです。休暇中だけではなく普段から心がけたい習慣をおさらいしておきましょう。

《なるべく起床時間を一定にする》

イベントごとが重なってしまうとどうしても就寝時間も遅くなりがちですが、なるべく起床時間は一定にしておきましょう。普段よりも少し遅い時間の起床でも構いませんが、「一定にすること」が大切です。起床時間になったら体を起こし、自然光を浴びることで、夜になると眠気を催し、スムーズに眠れるような体のサイクルができます。睡眠時間を確保することは体調を整える上でも最も重要なことと心得ておきましょう。

《決まった時間に体重計に乗る》

この時期は豪華な食事やおせち料理、お餅などを食べる機会も多く、うっかり食べすぎてしまうこともあるでしょう。毎日の起床時など決まった時間に体重計で体重を測定しておくことは、暴飲暴食の抑止力として働きます。ただ体重計で測った数値の増減は、食事量(特に水分量)と運動量によって変動しやすいので、前日の食事と運動を振り返り、体を動かしていないようであれば体力維持のためにジョギングやトレーニング等の運動を取り入れるようにしましょう。

《外出から戻ったら手洗い・うがい》

人が多く集まるところはどうしても風邪やインフルエンザなど感染症のリスクが高くなります。気になる場合はマスクをしておくことや、帰宅後には手洗い・うがいなど基本的な感染症対策を必ず行うようにしましょう。休みだからといって過密スケジュールを組んでしまうと、疲労がたまって免疫機能の低下につながってしまうことがあります。スケジュールには余裕を持ち、体調が優れないときは人が多く集まるところなどは避けましょう。

短い休み期間を大いに楽しみつつ、新年からの練習再開に向けても心身の準備を行っていきましょう。皆さんにとって新しい年が素晴らしい飛躍の年となることを願っています。

【休暇明けの練習再開でケガをしないために】
●ディトレーニングとは、一定期間の運動中断が今までの運動効果を失ってしまうこと
●まったく体を動かさない状態は練習再開後のケガのリスクを高める
●体力レベルを維持するために、定期的に体を動かすようにしよう
●生活リズムを大きく乱さないためにも起床時間を一定にする
●体の変化を数値で確認するために決まった時間に体重を測る
●基本的な感染症対策を継続し、風邪やインフルエンザの予防に努めよう

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 西村 典子

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