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【高校野球ベストシーン’23・宮城編】雪辱を果たした一振りと完封劇で仙台育英が東北に勝利

2023.12.05


仙台育英・齋藤敏哉

2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。

【選手権県大会準々決勝・仙台育英vs.東北】

たった一振りで勝負をつけた。23年夏、宮城大会準々決勝、1対0と仙台育英のリードで迎えた8回、仙台育英の背番号3、齋藤 敏哉内野手(3年)がガッツポーズを繰り返しながら、ダイヤモンドを1周した。力強く本塁ベースを踏んでベンチに向かうと、塁上にいて先にホームインしていた3選手と次々とタッチを交わした。勝負にけりをつける満塁弾。齋藤敏にとって会心の当たりは、ライバル東北を倒す大きな、大きな1発となった。

宮城の高校野球ファンの心に焼き付いた試合だった。県内の永遠のライバル、仙台育英東北。前年の秋には、宮城大会決勝と東北大会決勝で対戦し1勝1敗だった。意地とプライドがぶつかり合う好ゲームが期待され、予想通りの展開だった。

初回に仙台育英が幸先よく1点を先制するが、その後は得点が動かない。東北先発の左腕・秋本 羚冴投手(3年)と、仙台育英先発の湯田 統真投手(3年)が好投を続けた。

仙台育英は追加点のチャンスをつぶしていた。2回はけん制アウト、スクイズ失敗で自滅していた。4回から東北はプロ注目右腕、ハッブス 大起投手(3年)をマウンドに送ると、仙台育英尾形 樹人捕手(3年)のセンターへの大飛球も、フェンス手前で好捕された。

7回は両チームの二塁手が守備で魅せた。仙台育英住石 孝雄内野手(3年)、東北金子 和志内野手(3年)が、ともにセンターに抜けようかという当たりを好捕してアウトするファインプレーを競演。球場を熱くさせた。

そして8回を迎える。1対0。仙台育英がリードもほぼ互角の展開だった。そこに終止符を打ったのが、齋藤敏の一振りだった。この日は第1打席から2打席連続して空振りの三振に終わっていた。特徴のいわゆる「万振り」がマイナス面に働いていたが、第3打席では二塁手の好捕でアウトにはなったが、会心の当たりを見せていた。満塁弾は決して「まぐれ」ではなく、自信をもって振り抜いた打球でもあった。

先発した湯田は、中盤こそピンチを背負うも、5安打の完封勝利。12奪三振をマークし、東北打線を封じ込めた。

仙台育英は宮城大会決勝で東北に敗れたが、東北大会決勝でリベンジを果たしていた。しかし、齋藤敏と湯田は個人的に満足できていなかった。齋藤敏は3打数1安打も、ハッブスとの対戦では併殺に打ち取られていた。マウンドの湯田は先発するも、2失点し4回で降板した。チームは勝利したが、2人ともに「リベンジ」を誓って夏に臨んでいた。

その2人が、夏の大事な一戦で、東北相手に見事な働きを見せた。個々の強い気持ちが輪となってドラマを演じた。その後、仙台育英は宮城を制し、夏連覇を狙って甲子園へ乗り込むと、決勝の舞台まで勝ち進む。浦和学院(埼玉)聖光学院(福島)履正社(大阪)花巻東(岩手)神村学園(鹿児島)と、並みいる強豪を撃破した。決勝でこそ、スタンドを含めた慶應義塾の「全員野球」の前に屈したが、前年の優勝にひけを取らない強さを甲子園に残した。

2023年7月20日に石巻市民球場で繰り広げられた県内ライバルの戦いは、宮城県高校野球のレベルの高さを証明していた。この「熱い夏の日」は、両校の「伝統の一戦」の新たな1ページとして、深く刻まれることだろう。

<全国高校野球選手権宮城大会:仙台育英5-0東北>◇2023年7月20日◇準々決勝◇石巻市民

仙台育英スタメン
(中)橋本 航河(3年)※中央大進学予定
(遊)山田 脩也(3年)※阪神3位指名
(三)湯浅 桜翼(2年)
(右)齋藤 陽(3年)※仙台大進学予定
(一)齋藤 敏哉(3年)
(左)鈴木 拓斗(2年)
(捕)尾形 樹人(3年)※早稲田大進学予定
(投)湯田 統真(3年)
(二)住石 孝雄(3年)

東北スタメン
(二)金子 和志(3年)
(三)鳥塚 晴翔(2年)
(一)山田 翔琶(3年)
(右)佐藤 玲磨(3年)
(中)渡邊 成汰(3年)
(捕)日隈 翔弥(3年)
(左)伊達 一也(3年)
(投)秋本 羚冴(3年)
(遊)小野 洋一郎(3年)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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