【神奈川】準決勝 横浜 vs 東海大相模

横浜、140キロ超え4人揃う東海大相模の強力投手陣を攻略!控えの2年生がヒーローに
<神奈川県高校野球秋季県大会:横浜10ー9東海大相模(延長10回タイブレーク)>◇30日◇準決勝◇サーティーフォー保土ヶ谷
横浜vs東海大相模は死闘となり、延長10回表、東海大相模が9対5と勝ち越したその裏、横浜が一気に5点を入れて逆転サヨナラ勝ちで2年連続の関東大会出場を決めた。
粘り強く戦う横浜ナイン。高校生はこれほど変わるのかと驚いた。
2週間前の横浜は3回戦で向上相手に大苦戦していた。タイブレークでサヨナラ勝ちを収めたものの、適時打がほとんどなく、どうにか勝ったという試合運びだった。
準決勝で戦う東海大相模は140キロ超えの投手4人を擁し、特に148キロ右腕の福田 拓翔投手(1年)は大きく注目を浴びている。
強打者、巧打者揃いの布陣で、全国でもトップクラスの戦力を誇るチーム。ここまでの戦いを見ても、苦しむことなく勝ち上がっている。対する横浜は3回戦の向上戦がタイブレークの激闘。準々決勝では、横浜商に一気に5点を奪われることもあった。個々の戦力差を見れば、東海大相模が上と思われた。
この強敵相手に、村田監督は選手にプライドを捨てさせた。
「東海大相模の福田投手は本当に速い投手。とにかくバットを短く持ってコンパクトに振り抜いていこうと話をしました。選手たちはそれを信じてバットを振ってくれました」
その福田相手に初回から安打が飛び出すなど、しっかりと捉えられているところを示した。そして2回、奥村 頼人投手(1年)の2点三塁打で逆転に成功。さらに奥村 凌大内野手(1年)の適時打で3点目を入れる。
3回、東海大相模の強打の1番・ 和田 勇騎外野手(2年)の本塁打で1点を返されたが、その裏には椎木 卿五捕手(2年)の適時打と、東海大相模のミスもあり、5対2と突き放す。結局、3回までに福田に8安打を浴びせた。
2週間前は130キロ中盤の速球に苦しんでいたが、全く別のチームに変貌していた。改めて打撃は技術だけではなく、心構え、準備も影響するものだといえる。
東海大相模も負けてない。土壇場の9回に、1点差を追いつく。東海大相模の意地が見えた攻撃だった。
さらに延長10回表、押し出しと、リリーフとしてマウンドに上がっていた左腕の藤田 琉生投手(2年)の走者一掃の3点適時二塁打で9対5と大きくリードした。
しかし、ここでも横浜が底力を見せつける。途中出場の2番・林 幸介内野手(2年)の適時二塁打で2点を返し、併殺崩れと代打・松村 海青捕手(2年)の適時打でついに同点に追いつく。そして代走で出場の松本 莉希内野手(2年)の適時打で逆転サヨナラ勝ちを収めた。
10回の逆転劇を演じたのは控えとしてスタンバイしていた野手たちだった。
4点差をつけられても諦める雰囲気はなかった。その思いになったのは、夏の決勝戦がきっかけだ。村田監督はこう語る。
「夏は慶應(義塾)さんにホームランで逆転されました。慶應さんができるのならば、俺たちもできるぞ、という思いでやってきました」と後半に強いチームを作り上げてきたと語る。「試合に出ていない2年生は普段からずっとバットを振り続けて努力をしていた選手たちでした。それがこの試合で形となりました」と目を細めていた。
この日のベンチ入り18人が出場。まさに「全員野球」である。土壇場の場面で、適材適所を見極め、これまで頑張ってきた控えの2年生を送り出す。そして結果を残す。このサイクルで、横浜の団結力はこれ以上ないものになっている。
殊勲打を放った松本は「この試合で、チームが1つになってきた感じがあって、それでこういう試合に勝てたことはとても自信になります。そしてセンバツを狙っていきたいです」と力強く語った。
苦しい試合の連続がチームの糧になっている。今年の横浜はスターはいなくても、誰もがヒーローになれるチームになりつつある。
取材=河嶋 宗一