試合レポート

仙台城南 vs 利府

2023.07.22


仙台城南が初の決勝進出!5試合連続先発のエース安住が143球1失点完投

<第105回全国高校野球選手権宮城大会:仙台城南2-1利府>◇22日◇準決勝◇楽天モバイルパーク宮城

4強で唯一のノーシード校・仙台城南と唯一の公立校・利府の一戦は、手に汗握る接戦となった。仙台城南は追いつかれた直後の6回、7番・岡村 太貴捕手(3年)の犠飛で1点を勝ち越す。投げてはエース右腕・安住 馨祐投手(3年)が9回143球1失点完投勝利をやってのけ、初の決勝進出をたぐり寄せた。

仙台城南は2回、8番・池田 柾道内野手(2年)の犠飛で先制する。一方の利府は4回に背負った2死一、二塁のピンチを右翼手・佐藤 聖民外野手(3年)のファインプレーでしのぎ、6回には1番・本田 寛明外野手(3年)の適時打で同点に追いつくなど、じわじわと流れを引き寄せていた。

しかし6回、仙台城南は先頭の5番・佐藤 龍翔内野手(3年)が右中間を破る三塁打を放ち絶好の好機をつくる。その後1死三塁となり、打席には主将で正捕手の岡村。「1点を取ることだけを考えて思い切り振った」との言葉通り初球からフルスイングし、決勝点を生み出した。

先発の安住は8回に2死満塁とこの日最大のピンチを背負ったものの、利府の5番・渡邉 慶太内野手(3年)を1球で二ゴロに打ち取り、雄叫びを上げながらベンチに戻った。安住は8回のシーンを「正直安堵の方が大きかった」と振り返るが、ピンチを抑える自信は胸に秘めていた。

転機となったのは夏の大会直前に行った東海大山形との練習試合。この試合では再三のピンチを背負うも本塁を踏ませず、8回無失点と好投した。「コースに投げきれれば抑えられる」。直球の球速は130キロ台でも、変化球と制球力で強豪校とも渡り合えることを確信した。

今大会は初戦から5試合連続で先発し、計39回を投げ防御率1.15と抜群の安定感を誇っている。仙台商古川学園など実力校相手にも堂々たる投球を続けたことで、自信はさらに深まっていった。

「大会前は、決勝の日までユニホームを着ることになるとは思ってもいなかった。一戦一戦勝ってきて、いつの間にかここまで来た」(安住)。目の前の試合を、がむしゃらに戦ってきた。最大の強敵・仙台育英が相手でも、やるべきことは変わらない。

利府は正捕手を欠き、投手陣も万全のコンディションではない中、準決勝まで勝ち上がった。主将の鈴木 晶礼外野手(3年)は試合後、「自分たちがやってきたことはすべて出し尽くした。相手が一つ上だった、それだけだと思う」と言葉を絞り出した。夢はここで途絶えたが、利府の全員野球は観る者の心に響いたはずだ。

(取材=川浪康太郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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