試合レポート

3回戦 掛川西 vs 市立沼津

2023.07.20

<第105回全国高校野球選手権静岡大会:掛川西9-2市立沼津>◇20日◇3回戦◇草薙総合運動場

 過去、春4回、夏5回の甲子園出場実績を誇る掛川西。夏は、1998年以来の甲子園出場を狙う。市立沼津も1957年春と、1991年夏に甲子園出場を果たしている。そんな、昭和~平成時代に活躍した古豪、伝統校同士の公立対決となった。

 かつては、公立校が引っ張っていた静岡県の高校野球だが、近年は全国的な傾向でもあるのだが、大学の付属系列校を含めて、静岡県でも私学勢がリードしている傾向が強くなっている。そんな中で掛川西は、昨夏もベスト4に進出、2021年には春季東海地区大会で優勝も果たしており、復活の兆しも示している。この春も県大会はベスト8まで進出して、夏はシード校としての登場である。初戦では昨年の準優勝校の静清を競り合いの末に下しての3回戦である。

 その掛川西に挑む形の市立沼津相良掛川東を下しての3回戦進出である。

 初回、掛川西は先頭の双子の二遊間の小原 風晟内野手(3年)が中前安打で出て、バントで進み、失策もあって2死一、三塁となったところで、前の試合では1番だったが、この日は5番に入っていた堀 孝輔外野手(3年)が変化球を中前へはじき返して先制点。2回にも連打で好機を作った掛川西は、バントで1死二、三塁として、中犠飛で2点目。

 そして3回には3番・山本 真広外野手(3年)が右前安打すると、ここで市立沼津の内藤浩正監督は、先発の10番、芹澤 祐介投手(3年)を諦めて1番をつけた泉 裕太朗投手(3年)を送り出した。しかし、その代わり端を捉えて、4番・落合 倭吹輝内野手(3年)が左翼線へ二塁打。二、三塁となって失策と、小原 光晟内野手(3年)の右前適時打で2人をかえして、この回3点。5対0となった。

 これで、試合の流れは掛川西に傾いていったのだが、4回にも掛川西は2死走者なしから、落合の左前安打と5番・堀の左翼線二塁打で追加点を挙げた。堀は、2年前には兄も掛川西に在籍し、父も掛川西常葉大菊川に敗れて準優勝した時のメンバーで、母も掛川西出身だという。まさに「掛川西の純血」が体に流れている。

 4回までに大きくリードされた市立沼津だったが、その裏3番・渡邉 和志外野手(3年)が1死から三塁打して、内野ゴロの間にかえって1点を返す。5回にも2つの失策からチャンスを作ると、1死一、三塁から2番・吉村 憲信内野手(3年)の左前安打で2点目を返した。

 しかし、掛川西はさらに、6回は2死一、三塁から小原光のバント安打で、7回は犠飛で、そして8回は7番・榛葉 翔貴外野手(3年)の右前適時打でそれぞれ1点ずつ追加。こうして、細かく得点を重ねていって、追いかける市立沼津を交わして8回コールドゲームで逃げ切った。

 掛川西は、先発の高橋 郁真投手(2年)が6回を投げて4安打2失点。くるっと腰を回転させて、スリークォーターからサイド気味の位置から腕が出てくる。球威というよりはコントロールが生命線というタイプだが、この日は立ち上がりの先頭打者にこそ四球を与えてしまったが、それ以外はブレなかった。その後は黒羽 豊投手(3年)、さらには杉崎 蒼汰投手(1年)とつないでいった。

 大石卓哉監督としては、「夏の大会は、勝っていけば暑い中での長期戦となるので、いろいろ繋いでいかなくてはいけない」という考えでもある。「まだまだ、大会を通じて成長できていかれるチームだと思っているので、まだまだ試していくこともある」という。そして、今年のチームに関しては、「昨年、一昨年に比べて突出した選手がいるわけではないけれども、皆が束になって戦っていかれる集中力もいい。みんな高校生としてよく勉強もしていますし、努力もしています。私は監督でもありますけれども、高校野球としてこのチームの選手たちは素晴らしいし、誇りに思っています」という思いである。そして、多くの生徒たちが詰めかけてきた応援席にも感謝をしていた。こうした形もまた、伝統校の掛川西の伝統でもあるといってもいいのであろう。

 先制点をたたき出した堀は、「1番から、今日は5番になりましたけれども、自分としては何番でも対応できると思っています」という思いで、先制打に関しては、三塁に走者がいたので「何としてもかえそうと思っていた」という気持ちで振り切ったという。

 市立沼津は、結局追いかけきれなかった。3回、大事なところで守りが乱れたのも、いくらか悔やまれるところでもあろう。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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