突き指で起こるケガと応急手当
突き指はまず固定をして患部を冷やすことを優先させよう
突き指は「指を突いたことによって起こるケガの総称」です。野球選手にとっては捕球時のイレギュラーバウンドによる打撲や、ランナーで帰塁するときにベースに指を突いてしまうケースなどが考えられます。指に対してまっすぐに力が加わると(長軸方向への外力)、爪や指の先端部分にある骨(末節骨)は大きな衝撃を受け、それに伴って隣接する骨(中節骨)などにも影響が及ぶことがあります。また衝撃を受けた外力の方向によっては靱帯や腱などが過度に伸ばされて傷んでしまい、関節がグラグラと不安定な状態となったり、脱臼を伴ったりすることがあります。変形が見られる際にあわてて指を伸ばそうとしてしまいがちですが、整復を行ってよいのは医師や柔道整復師という有資格者のみです。正確な診断なしに行うことはケガの悪化につながりますので、指を引っ張って伸ばそうとすることは絶対に避けましょう。
突き指をするとその多くは腫れや熱感、痛みなどの炎症症状を引き起こすため、まず患部を固定した上で氷などで冷やす応急手当を行います。患部を固定するときはボールペンや割り箸などある程度硬さがあるものを副木代わりにしますが、すぐに準備できない場合は隣の指と一緒に二本まとめて固定すると良いでしょう。腫れの程度や痛みが時間とともに悪化する場合、指の変形、音を伴ったような激しい外力が加わった場合はなるべく早く整形外科を受診するようにします。突き指によってみられる代表的なものを紹介します。
●マレットフィンガー(槌指)
突き指によって指の先端・第一関節が曲がったままの状態になっているもの。打楽器を演奏する際に使われる槌(つち:いわゆる「ばち」のこと)に似ているためこう呼ばれています。2つのタイプがあり、指を伸ばす伸筋腱が切れたものを腱性マレットフィンガー、伸筋腱についている骨が骨折している状態を骨性マレットフィンガーといいます。
●爪下血腫(そうかけっしゅ)
突き指だけではなく指をはさんだときなどに爪の下で内出血が起こり痛みを伴うものを爪下血腫といいます。爪の損傷だけではなく骨折を伴っている場合もあるため注意が必要です。
●側副靭帯損傷
関節の側面を支持している靱帯が損傷した状態で、突き指の代表的なものとしてあげられます。正常な関節可動域が得られなくなったり、異常な方向へ関節が動いてしまうことが懸念されます。剥離骨折を伴うものもあります。
突き指は野球でよく見られるケガの一つですが、その程度は軽度のものから重症度の高いものまでさまざまです。適切な初期対応を行い、状態を見ながら必要に応じて医療機関を受診するようにしましょう。
文:西村 典子
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