パフォーマンスアップにつながる視力とは
自分の静視力を正しく把握し、その上でビジョントレーニングにも取り組んでみよう
皆さんは自分の視力についてどのぐらい正しく把握しているでしょうか。視力には静止した視力表を用いてどこまで小さな指標が見えるかを問う静視力と、目の前を動く目標物を見る動体視力があります。
野球では動くボールなどを見て、判断してプレーする能力が求められることから、動体視力に着目しがちですが、静視力についても正しく把握しておきましょう。特に左右の視力差が大きい場合や、近視・乱視などを矯正しないまま裸眼でプレーをしていると対象物がぼやけてしまい、プレーにも影響を及ぼすことがあります。また曇天・雨天時や夕方から夜にかけての時間帯では、さらに見えづらさが増してケガのリスクが高まることも考えられます。メガネやコンタクトレンズなどを適切に使用して、視力矯正を行うようにしましょう。
動いているものを見る能力=動体視力、は野球のさまざまな場面において必要とされるものです。近年盛んに研究されているスポーツビジョンには8つの視覚能力があり、競技によって必要とされる能力は異なります。アメリカ検眼協会(AOA)がまとめた競技種目別視機能重要度スコア表によると、野球の打撃と投手ではそれぞれに必要な視覚能力に違いが見られますが、広い視野を確保する周辺視野はどちらにも共通して特に必要となる能力です(表1:スコア1→5になるに従って重要性が増す)。
こうしたスポーツビジョンを鍛えるためには乗り物に乗ったときに外の景色を見ながら視覚情報を得る方法があります。電車の窓から外の看板や駅名などを瞬時に見て認識するトレーニングは、横方向の動きを目で識別する能力を養う代表的なビジョントレーニングです。止まっている看板や駅名などを確認するほかにも、例えば対向電車の情報(行き先や車両ナンバー、中にいる人の動きなど)を把握しようとすると、双方が動くために難易度が上がります。また車の移動中に対向車のナンバープレートを瞬時に読み取るトレーニングは、遠方から接近する指標にピントを合わせる能力を養います。
この他にも自分の手指を使ってできるトレーニング方法もあります。両方の親指を立て、顔を動かさずに爪の先を交互に目で追います。親指を左右や上下、斜め方向などさまざまな位置に配置したり、指の間の距離を長くしたり短くしたりすることで、素早く眼球を動かし、視線を切り替える能力である眼球運動を鍛えることが出来ます。バッティングの前に眼球を動かしてピント調節機能を高めると、ミート力の向上も期待できます。動体視力を養うことは距離感を正しく認識する周辺視野や、目と体の連動性を高める能力を高めることにもつながるので、練習の合間などにぜひ取り組んでみましょう。
文:西村 典子
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