Interview

地元・船橋から「市船」へ 通算31本塁打の大型捕手・片野優羽が吉報を待つ

2022.10.19

 今年、15年ぶりに夏の甲子園出場を果たした市立船橋(千葉)から、片野 優羽捕手(3年)と森本 哲星投手(3年)がプロ志望届を提出した。高校通算31本塁打を誇る強打の捕手・片野は入学前から「高卒プロ」を志し、高校野球生活を送っていた。甲子園の舞台でも興南(沖縄)の好投手・生盛 亜勇太投手(3年)から本塁打を放ち、大舞台でも強打を印象づけた。指名を待つ片野は、どんな野球人生を送ってきたのだろうか。

地元・船橋から「市船」へ

地元・船橋から「市船」へ 通算31本塁打の大型捕手・片野優羽が吉報を待つ | 高校野球ドットコム
片野優羽(市立船橋)

 千葉県船橋市出身の片野は中学時代、白井中央ボーイズでプレー。打線では4番を務め、投手と捕手をこなした。持ち前の強打と188センチ、95キロの体格をもつ片野は当時から注目を集める存在だった。

「いろんなお話はいただいていたのですが、やっぱり船橋市民ということもあって、『市船』で甲子園に行きたいという思いが一番だったので」

 10校以上の高校から勧誘があったが、地元にある市立船橋への入学を決める。

 プロへの意識は中学3年生の時に芽生える。入学前、海上(うながみ)監督と連絡をとった際に、「プロになれる」と言ってもらったことがきっかけだった。海上監督の言葉を胸に、入学前から「プロ志望」を掲げ市船の門を叩いた。

2年秋に1大会3本塁打をマーク

 市立船橋では1年秋から正捕手として試合に出場する。「プロ注目の捕手」として名を挙げたのは2年秋の大会だった。チームは、後にセンバツ出場を果たす木更津総合を前に準々決勝で敗退となるも、片野は1大会3本塁打を記録。そこから周囲の反応も変化した。

「やっとメディアの方々に取材をしていただいて、そこからちょっとずつ意識するようになりました。常に注目される選手でいられるようにと思いながら練習していました」

 主砲としてチームを牽引するだけでなく、自身の目標である「プロ野球選手」への階段も着々と登っていった。

[page_break:打倒・木更津総合、打倒・越井で奮起/聖地では興南・生盛から特大弾/セカンドスローは「リズム」]

打倒・木更津総合、打倒・越井で奮起

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越 颯一郎(木更津総合)

 さらに木更津総合との対戦は市船ナインに火を付けた。「自分たちは越井投手を打たないと甲子園には行けない」。関東屈指の好右腕・越井 颯一郎投手を攻略できなかった悔しさをラストイヤーにぶつける。

 一冬越え、迎えた春季県大会では28年ぶりに優勝。そして迎えた最後の夏、決勝戦で木更津総合との再戦が実現した。

「全員でしっかりヒットを打てて、リベンジを果たせたので、それは一番よかったです」

 木更津総合に雪辱し15年ぶりの甲子園出場を果たした。

聖地では興南・生盛から特大弾

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片野優羽(市立船橋)

 夏の甲子園の初戦では、後にU-18日本代表に選出される右腕・生盛を擁した興南(沖縄)と対戦。片野は2点ビハインドで迎えた8回に生盛投手から特大のソロ本塁打を放ち、サヨナラ劇を呼び込んだ。

 実は、あの打席の直前、同学年の黒川 裕梧選手(3年)がネクストバッターサークルまで来て、「バットを短く持って、センター前でもライト前でも打ってこい」と助言をしたそうだ。

「個人的には短く持つと打ちづらいというのがあって…。言い方悪いですけど、無視して、長く持って打った結果がホームランになりました(笑)」

「その後ベンチで『ふざけんなよ』って言われたんですけど」とチームメートからは手厚い祝福を受け、逆転ムードを作り出した。自分を信じて打席に臨んだ結果、大舞台で持ち前の長打力を発揮することができた。

セカンドスローは「リズム」

 高校通算31本塁打を誇る長打力がウリだが、二塁送球の最速は1.80秒の「強肩」の持ち主でもある。普段の練習では、ステップからの「リズム」を体に覚えさせることを意識していると言う。

「投げる時の動きは、来る球が違っても、形はそんなに変わらないと思うので、体にリズムを覚えさせて、どんな球が来ても同じ体勢で良い球が投げれるように、ということを意識しています」

 日々の練習ではステップから送球までの「リズム」を体にたたき込むことで、実戦では悪球でも安定したクオリティーで送球できるようになった。

 片野のもとには6球団から調査書が届いている。「とにかく自分は今できる練習をしっかりやって、指名されるのを待ちたいです」と力強く語った。ともにプロ志望届を提出した森本と一緒に、吉報を待つ。

(取材=藤木 拓弥

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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