試合レポート

日大豊山vs青山学院

2022.07.11

快足センターが攻守で躍進 新庄ビッグボス参考に守備を武器に

<第104回全国高校野球選手権東東京大会:日大豊山11–0青山学院>◇10日◇2回戦◇神宮

 東東京の強豪・日大豊山は、2022年の夏をノーシードで迎えている。秋は都立城東、春は二松学舎大附と同じ東東京のライバルたちの前に上位進出を阻まれ、シード権をつかむことができなかったが、初戦・青山学院戦は11対0の5回コールド勝ちを飾った。

 結果はもちろん、実力はシード校と遜色ないものだった。
 シートノックから高い実力を見せる。外野手の送球はライナー性の低いスローイングで、乱れる様子がない。内野手の動きも機敏で、強豪校にふさわしい7分間を見せてくれた。

 日大豊山の主将で7番センター・髙橋 啓斗外野手(3年)は試合中、攻守でいい働きを見せていた。
 2回、30メートル走3.82秒の快足を飛ばしてヒットにすると、打者一巡して迎えた2打席目にも二塁打。この時、手動の計測では7.35秒を記録しており、自慢の走力をいかんなく発揮した結果だ。

 重心をそれほど落とすことなく、あくまで脱力した構えから、軸回転で鋭くスイングする。失投を逃さず確実にミートできる打撃が印象的だったが、本人曰く自信を持つのは守備だという。

 青山学院との一戦でも3回にセンター前に落ちそうなライナー性の打球を、「迷わずにスタートを切れた」と素早い1歩目と自慢の走力で落下地点まで距離を縮め、最後はダイビングキャッチでアウトをもぎ取った。

 中学3年からセンターを守りはじめ、「当時は下手だった」と、ノックを受けながら打球感をつかんでいった。そこに加えて自チームのバッテリーの配球を見て事前準備をしっかりしているという。

 「例えば左打者のアウトコースに投げれば、基本的には逆らわずに左中間に飛びます。ですので、構えた時点で1歩だけ寄っておいて、コース通りに行けば、さらに2、3歩動くようにしています」

 小学生のころから取り組んでいるとのことだが、もし逆球になったとしても、高橋は脚力があるため、逆を突かれても俊足を飛ばして、たいていの打球は「他の野手のカバーはもちろん、捕れる自信はあります」と外野守備については絶対的なもの、特に1歩目のこだわりをもつ。

 確固たるこだわりがあるのは、プロ野球の影響がある。
 「最初の頃は、新庄さん(新庄ビッグボス)の守備の動画を見ていたと思いますが、特に覚えている動画で、『1歩目が上手く切れれば4メートルくらい(守備範囲が)変わるよ』と言っていたので、改めてこだわりようになりました」

 自分のやっていることは間違いないことを確信し、さらに守備に磨きをかけたことで、青山学院戦での活躍につながった。次戦以降もどういったプレーでチームをけん引するのか。

 試合は2回、日大豊山が8番・山崎羽生斗内野手(3年)の犠牲フライで先制すると、そこから打者14人の猛攻で10得点。主導権を握ると、先発した布施蒼生投手(3年)がテンポよい投球で青山学院打線をシャットアウト。5回に追加点を加えて11対0として日大豊山が5回コールド勝ちをおさめた。


172センチのエース・竹澤結仁 主将も任された大黒柱が奮投した2度目で最後の夏

<第104回全国高校野球選手権東東京大会:日大豊山11–0青山学院>◇10日◇2回戦◇神宮

 日大豊山の前に、1点が遠かった青山学院。2021年の夏は4回戦まで勝ち進んだが、この夏は悔しい結果になった。「力及ばずでした」と指揮官の茂久田監督は試合後、悔しそうに振り返った。

 新型コロナウイルスの影響で、3年生たちは1日練習、合宿をしたことがない。2年前の2020年は大会への出場も辞退した。3年生にとって夏の大会は2回だけ。ベンチ登録選手も3年生5人だが、入学当初は8人。次第に人数が減り、厳しい練習状況の中でも3年生は高校野球をやり抜いた。

 そのなかでもエースナンバーを背負いつつ、主将としてもけん引した竹澤結仁投手(3年)について「1人でチームを引っ張ってきたので、彼と心中するつもりだった」と全幅の信頼を寄せていた。

 球速は決して速くないが、入学当初からだという緩い球を使って、打たせて取る巧みな投球で初回は無失点に立ち上がった。

 2回からコンパクトに打ち返され、苦しい試合になってしまったが、172センチの小さい体を目いっぱい使って角度を付けた投球で、チームを鼓舞し続けた。これには2番手でマウンドに上がった沼田晃太朗外野手(2年)は、「チームを引っ張ってくださり、尊敬できる先輩でした」と感謝の思いを言葉にした。

 2、3週間前から練習試合での結果を踏まえて自信を付けてきたが、日大豊山の前には攻略され、悔しい結果になった。しかし新型コロナウイルスのなかで不自由ななかで戦ってきたことは、これからの大きな財産だろう。次のステージでの活躍を楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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