東海大vs武蔵大
東海大が完封勝利で優勝まであと1勝。市立和歌山出身の2年生左腕が圧巻の3安打完封
岩本真之介(東海大)
<首都大学春季リーグ:東海大1-0武蔵大>◇15日◇1回戦◇等々力
今年の首都大学春季リーグの優勝争いは、東海大と武蔵大に絞られた。どちらも勝ち点奪取が優勝条件。武蔵大は勝ち点5の完全優勝を狙い、東海大は勝ち点4で並び勝率で武蔵大を上回っての優勝を狙っている。
天王山の1回戦は14日予定だったが、雨天を考慮し、15日に順延となっていた。
1回戦は東海大が1対0で勝利を収め、先勝を収めた。両チームとも投手が好投し、優勝争いに相応しいゲームだった。
東海大の先発は岩本真之介投手(2年=市立和歌山)。1年秋(2018年近畿大会)、2年春(2019年センバツ)では主力投手としてベスト8進出に大きく貢献した。3年生夏の独自大会では智辯和歌山に敗れる結果となったが、近畿地区を代表する好左腕として活躍した。
当時と比べて、体格が変わった。センバツの快投はもちろんだが、1年秋の近畿大会では、高校1年生らしい初々しい表情と体重が60キロ前後とほっそりとした体型だったが、いざマウンドに上がると度胸満点の投球で、相手をねじ伏せる姿が強く印象に残っている。大学2年で顔つきも精悍になり、体重も80キロを超えて明らかに線が太くなっていた。
当時は技巧派という印象が強かったが、武蔵大戦での投球は、本格派左腕へ化ける成長過程だと実感した。体全体を使った躍動感あふれる投球フォームから投げ込む直球は常時130キロ前半〜140キロ前半だった。ただ、首都1部の他大学の左腕が投げる130キロ中盤〜後半の直球と比較しても勢いが違う。いわゆる回転数と回転効率が良い直球なのだろう。岩本自身も「この日のストレートの強さはかなり自信がありました」と手応え十分の直球で武蔵大打線に立ち向かった。
いきなり先頭打者に四球を与える嫌な流れだったが、上位打線を抑えて、「切り替えることができました」と2回以降は安定感十分の投球。
犠牲フライによる1点の援護をもらった岩本は重荷になりそうだが、「逆に楽になりました」と笑みを浮かべた。
「終盤もほぼ完璧で、気温もちょうどよかったので、疲れも全くなく投げることができました」と振り返るように、3安打、10奪三振完封勝利で、優勝へ1歩近づいた。
昨年、自信を持って臨んだ大学1年生シーズンだが、ストライクが入らず、打たれる悪循環が続き、今のままではいけないと心を入れ替えた。シーズン終了した昨年のオフシーズンから、「正直いうと練習は嫌いです(笑)。でもこのままでは駄目になるだけ」としっかりとレベルアップのために、目的意識を持って練習に打ち込んだ。この日の武蔵大戦までウエートトレーニングを多めにするなど、自ら考えて調子を高めた。
優勝まであと1勝。1週間後の天王山へ向けて、さらに状態を高めていく。
[page_break:武蔵大惜敗も期待の149キロ右腕が快投。2年後のドラフト上位候補に期待]武蔵大惜敗も期待の149キロ右腕が快投。2年後のドラフト上位候補に期待
松崎公亮(武蔵大)
<首都大学春季リーグ:東海大1-0武蔵大>◇15日◇1回戦◇等々力
東海大の岩本真之介投手(2年=市立和歌山)と投げ合った武蔵大の期待の149キロ右腕・松崎公亮投手(2年=聖徳学園)は第6週終了時点で防御率0.56とトップを走る。天王山となったこの試合でも快投を見せた。
聖徳学園(東京)時代は、140キロ台の直球を投げる投手として話題となった。ただ、最後の夏は創価相手に打ち込まれ敗退。当時は技術、体力と色々課題はあったが、この日の投球やこれまでの成績を見ても、質の高い練習を意識高く取り組んでいる様子が感じられた。
184センチの長身から繰り出す直球は立ち上がりから常時140キロ前半〜146キロをマーク。スピードはもちろんだが、球質も非常に良い。敵将の東海大の井尻監督も「角度がよい」と評価するほど。上半身、下半身が連動した投球フォームで、左腕のグラブを伸ばし、トップを作った時の形がヤクルトの奥川恭伸投手(星稜出身)と似ている。
さらに直球だけではなく、スライダー、スプリット、カットボールの精度も高い。スプリットについては3年生エース・田中啓斗投手(3年=日大二)から学んだという。
立ち上がりから奪三振ラッシュで、2回まで4奪三振。犠牲フライで1点を失ったが、7回途中まで投げて、8奪三振の快投だった。試合後、松崎は「0対1で負ける試合はこんなに悔しいんですね」と振り返った。
山口監督は松崎の好投を高く評価した。
「よく投げてくれたと思います。1年前はコントロールを乱した時期がありましたが、よく成長したと思います」
武蔵大はこれまでも社会人で活躍する投手などを多く輩出してきたが、これほどスケールと実戦力を兼ね備えた大型右腕は見たことがない。24年世代のドラフト上位は目指せるポテンシャルは持っている。
武蔵大は2連勝しなければ、優勝はない。武蔵大は松崎、田中だけではなく、各投手とも軒並み140キロ前後を投げ、ストライクを先行できる制球力や、球の強さを持った投手が多い。まだまだ白熱とした戦いを繰り広げてくれそうだ。
[page_break:両校のスタメン]武蔵大
1番(二)中島 将喜(4年=前橋育英)
2番(捕)斉藤 北斗(4年=日大鶴ヶ丘)
3番(右)松下 豪佑(4年=佼成学園)
4番(左)利光 真之介(1年=愛工大名電)
5番(三)林田 庸(4年=利府)
6番(指)村上 達彦(4年=日大藤沢)
7番(一)大河原 直樹(4年=東農大三)
8番(遊)片山 敬(3年=聖光学院)
9番(中)茂木 陸(2年=星槎国際湘南)
(投)松崎 公亮(2年=聖徳学園)
東海大
1番(右)金城 飛龍(3年=東海大相模)
2番(一)森 球紀(3年=東海大静岡翔洋)
3番(遊)小松 勇輝(4年=東海大相模)
4番(三)吉田 元登(4年=東海大相模)
5番(中)東海林 航介(3年=星稜)
6番(左)鵜沼 魁斗(2年=東海大相模)
7番(指)矢野 壱晟(4年=浦和学院)
8番(捕)白川 航也(3年=東海大札幌)
9番(二)樫見 俊佑(4年=金沢)
(投)岩本 真之介(2年=市立和歌山)