試合レポート

関東一vs郁文館

2022.04.10

プロ注目スラッガー・井坪陽生が通算16本塁打 5打点の活躍で冬場からの成長示す

関東一vs郁文館 | 高校野球ドットコム
ダイヤモンドを回る関東一・井坪陽生

<春季東京都高校野球大会:関東一11-0郁文館(5回コールド)>◇10日◇4回戦◇駒沢

 関東一が同じ東東京の実力校・郁文館を5回コールドで下した一戦。関東一は3回に一挙7得点で主導権を握るような形になったが、大きかったのは3番・井坪 陽生外野手(3年)の働きだ。

 2対0とリードした中で迎えた3回の第2打席、1死二、三塁の状況で2球目の真ん中あたりの高さの球を捉えると、瞬く間に前進していたセンターの頭上を越していく三塁打。ランナー2人が生還し、打線に勢いを与えた。

 この当たりには指揮官の米澤監督も、「あのセンターオーバーは良かった」と及第点を与えたが、その結果には井坪の柔軟な対応力が関係していた。

 初回の第1打席、郁文館先発・姚 柏宇投手(3年)の低めへの変化球の前にサードゴロ。タイミングが全く合わず、前のめりになり、体勢を崩されていた。この時点は、郁文館・姚の変化球に手こずるかと思われたが、井坪の対応が早かった。

「直球がいい投手なので、第1打席は直球狙いで絞りましたが、変化球にタイミングが合いませんでした。姚は変化球も良いので、2打席目は変化球に狙い球を絞って打つように切り替えました」

 普段から狙い球、特に初球は絞って打つタイプだという井坪。今回のように変化球を狙うのは相手バッテリーの配球や状況、さらに事前にチームで共有する情報を聞いて、整理した上で張っているという。

 今日も同じように対応して結果を残したが、4回に迎えた第3打席、郁文館2番手・吉田 志音投手(3年)がマウンドに上がった際は、「代わったばかりで一気にたたきたかったこともありましたので、速球系に絞って強い打球をはじき返すことを意識しました」と頭の中を整理して打席へ。2球目のカットボール系の球を捉えると、左中間スタンドへ届く高校通算16本塁打で試合を決定づけた。

 加えて、冬場に取り組んだ成果も関係していた。

「秋は詰まった打球が多かったので、ポイントを前において打てるように練習をしてきました」という井坪。この試合、2打席目はセンターオーバーながらも「少し詰まり気味でしたので、ポイントを前に置きました」と修正して迎えた3打席目が大きな1発に繋がった。

 ホームランを含めて3打数2安打5打点の大暴れだったが、5回にはマウンドにも上がった。最速144キロを計測する真っすぐを軸に、無失点に抑えて試合を締めた。

「立ち上がりは毎回悪いのですが、修正できたことは良かった」と自己評価をするが、センターからマウンドに上がるということで、プルペンでは20球ほどしか投げていないという。

 代わりにセンターでのキャッチボールは強めに投げるなど、できる準備をセンターでやりつつ、ベンチでは状況を見てブルペンでキャッチボールをするなど、自身で考えて判断し、準備をしていた。

 ベースランニングも軽快で、センター守備でも強肩が光る。走攻守でハイスペックな井坪は、次戦以降はどんな活躍を見せるか楽しみだ。

 試合は3回に関東一が9番・桝川 颯太投手(3年)の一打で先制点をつかむと、勢いそのままに6番・須藤 彪内野手(3年)らの一打で一挙7得点。主導権を握ると、4回に3番・井坪のホームランなどで4得点。11対0とすると、先発・桝川、大場 慎之介投手(3年)と繋いで、最後は井坪が締めて郁文館を下した。

[page_break:関東一からも賞賛 夏も注目したい左サイドハンド・姚柏宇]

関東一からも賞賛 夏も注目したい左サイドハンド・姚柏宇

関東一vs郁文館 | 高校野球ドットコム
郁文館先発・姚柏宇

<春季東京都高校野球大会:関東一11-0郁文館>◇10日◇4回戦◇駒沢

 関東一の足を絡めた攻撃に、3回で一気に主導権を握られた郁文館。夏のシード権は獲得しているとはいえ、同じ東東京のライバルに負けたことは課題が残るだろう。ただ先発した姚 柏宇投手(3年)は2回まで完璧に関東一を封じ、夏に向けて楽しみができた。

 173センチ、76キロと肩回り、太ももの大きさを見れば、鍛えあげられているのがユニフォーム越しでも分かった。秋からは大きく体重が増えているわけではないようだが、球の勢いは明らかに違う。

 セットポジションから鋭く回転して左腕を振り抜くサイドスローで、球に勢いがあり、ミットの乾いた音からも威力があることを察することができた。

 真っすぐに加えて、ストライクをしっかりとれるスライダー系の球が低めへ丁寧に投げられたことが効果的で、2回までは関東一打線から凡打の山を築いた。これには関東一の米澤監督も「球は来ていましたし、低めの際どいところの変化球に手が出てしまっていた」と話し、それからはベルト付近の高さに絞って攻略の糸口をつかんだという。

 姚はここまで全試合に先発登板し、蓄積疲労があることは容易に想像できる。関東一・米澤監督もその点を考慮したうえで、「貴重な左のサイドスローですし、腕が振れていて良い投手なので、終盤勝負だと選手たちも考えていましたけど、ベストな状態ならこういった展開にならないと思います」と話しており、難敵になりうる存在と認め、改めて警戒をしていた。

 対戦した高校通算16本塁打の井坪も「ストレートも変化球も良かった」と話し、攻略は一筋縄ではいかなかったと振り返る。近年、東東京の上位に勝ち上がる関東一からも好評の声が上がった郁文館姚 柏宇。東東京大会の注目投手として夏までに是非覚えておいてほしい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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