駒大苫小牧の恩師が「将大らしさ」を感じた日本復帰1年目
今季、8年ぶりに日本球界に復帰した楽天・田中 将大投手(駒大苫小牧出身)。結果は4勝9敗と、日米通算15年目で初めてのシーズン負け越しとなったが、それでも防御率はリーグ5位の3.01。安定感の高さを改めて示した。
田中の活躍を、駒大苫小牧(北海道)時代の恩師は感慨深く見守っている。現在は社会人野球・西部ガス(福岡市)の監督を務める香田誉士史氏だ。2005年には夏連覇、夏3連覇が懸かった2006年は早稲田実業(西東京)との激闘の末、準優勝となったが、当時の駒大苫小牧の戦いぶりは多くの高校ファンの心に深く刻まれている。
今回はアメリカでの成長や変わらない強気な性格、そしてベテランの域に達したこれからの田中に期待することを香田監督に伺った。
来年は「巻き返すぞ」と思っているはず
楽天・田中将大(駒大苫小牧出身)
8年ぶりの日本球界復帰となった今季、田中は23試合に登板し4勝9敗、防御率3.01の成績を残した。援護の少なさも否めなかったが、その中でも意に介することなくマウンドに登り続ける姿に、「将大らしさ」を改めて感じたという。
「年齢とか蓄積される疲労もあると思いますが、アメリカでピッチングの技術を磨いて戻ってきたなと感じる部分があります。マウンドの違いや、年々ボールの勢いも落ちてきたり、いろんな苦労があると思いますが、打者のポイントを外したり、要所要所で上手くボール球を振らせたりと、昔からバッターを見る観察力は長けていました。負けは多かったですが、3点、4点取られても試合はしっかりと作るところは、将大らしいなと感じましたね」
とは言え、今季の成績に田中が納得していないことは想像に難しくない。望まれる形で日本球界復帰を果たしたが、開幕直前に戦列を離れ、シーズン通しても負け越し。アメリカ球界復帰の噂も飛んだが、香田監督は「性格的にも、このままアメリカ行きますなんて思っていないと思う」と口にする。
「来年は日本に復帰して2年目になります。『絶対に巻き返すぞ』という気持ちは非常に強いと思いますし、このままアメリカに行くなんて彼には考えられないと思いますよ」
[page_break:教えて出来るものではない気持ちの強さ]教えて出来るものではない気持ちの強さ
香田誉士史監督
芯の通った、強気な性格。
これも高校時代から変わらない「将大らしさ」の一つだ。
「気持ちの強さ」は、教えて出来るものではないと香田監督は言う。指導者として高校、大学、社会人と渡り歩いてきたが、どれだけ高い才能を持っていても、気持ちの弱さを払拭できない選手は山のようにいる。
その中で田中は、気持ちの強さ、勝負強さを持つ希有な存在で、それが第一線で活躍を続ける一番の理由だと香田監督は断言する。
「いつだったか、将大が僕に言ったことがあるのですが、2軍にも僕よりすごいボールを投げる投手はいっぱいいますよと。メンタルで片付けてはいけないのかもしれませんが、投げたいところに投げ切れる力や、やりたいと思ったことをやりきれる力、そういったものはやはり秀でていたと思います」
そんな田中も、来年は34歳になる。
思えばもうベテランの域だ。
投手としての巻き返しにも当然期待が懸かるが、香田監督はこれからは「ベテラン選手」としての働きにも期待したいと、思いを口にする。
「オリンピックでも、そういった役割を期待されて選ばれたと思いました。ボールだけを見れば、他のものが選ばれてもおかしくないかなと。でも国際大会での気持ちの持ち方や、外国人の選手の特徴など、いろんなアドバイスも含めて彼が選ばれたと思うし、楽天でも将大の姿、言動で下の人間に育ってもらいたい思いはあるのではないでしょうか。
将大の姿はみんな見てるし、影響力が強いです。そういう気持ちを常に持って、良い時もダメな時も姿や態度に気をつけているのかなと感じていて、自覚の表れでもあるのかなと思います。これからはそういった面でも期待は大きいですね」
プレイヤーとして、ベテランとして、これからより多くのものを背負ってマウンドに立つ田中。その勇姿を香田監督は、最後の最後まで見守るつもりだ。
(記事=栗崎 祐太朗)