地味に凄かったオリックス「アラフォートリオ」の意地
オリックス・平野 佳寿
若いものには、まだまだ負けない。そんな気迫を感じた。
日本シリーズは例年になく激戦が続き、最後は延長12回の激闘の末に、ヤクルトの日本一が決まった。うれし涙がカクテル光線に照らされて輝いていた中、一塁側ベンチでは呆然とするオリックスナインの姿があった。あと一歩…。泣きたいのはオリックス側だったと思う。屈辱を目に焼き付けようと、動けない選手もいた。
日本一になれなかったが、オリックスの総合力はヤクルトに負けてなかった。今シリーズはオリックスでいえば、宮城 大弥投手(興南出身)、紅林 弘太郎内野手(駿河総合出身)、太田 椋内野手(天理出身)ら若手が目立ったが、第6戦は「おじさん」が輝いていた。
1対1で迎えた10回表のマウンドには守護神・平野 佳寿投手(鳥羽出身)が上がった。1点も許されない場面で、9番からの打順で4人で攻撃を終わらせた。青木には安打を許したが、塩見、山田を打ち取った。37歳と8か月。メジャーを経験した熟年の投球だった。
ヤクルト村上から始まる11回表には、能見 篤史投手(鳥取城北出身)がマウンドに上がった。今日本シリーズ初登板が、しびれる場面だった。阪神時代の2005年、2014年と日本シリーズの経験はあるが勝てなかった。オリックスに移籍した今季は26試合に登板しているだけ。マウンド自体も10月13日ロッテ戦で1回を投げて以来、1か月以上もマウンドから離れていた。42歳6か月。白髪をのぞかせる左腕はしかし、ワンポイントで村上を左飛に仕留めた。投手コーチ兼任の立場でもあるベテラン左腕の5球にかけた気持ちは、ナインに波及する。
能見のあとにマウンドに上がったのは、38歳と11か月の比嘉 幹貴投手(コザ出身)。中村には安打を許したが、サンタナ、オスナと一発のある外国人を打ち取った。「アラフォー世代」3人の望みをつなぐリレーだった。先発9回1失点と好投した山本 由伸投手(都城高出身)の頑張りを無駄にしない。そんな気迫が年齢を感じさせない躍動感あふれる投球につながった。
好投は報われず日本一には届かなかったが、ベテランの意地はしっかり見せた。若手が引っ張ってリーグ優勝をしたが、その裏には地味な「おじさん」たちの働きがあったことを思い出せさてくれた。