伝説の投げ合い再現なるか!日本シリーズで8年前のドラマがよみがえる
高校時代の山岡泰輔と田口麗斗
あれから8年。長い年月が流れても、2人の脳裏からは消えることがない。あの夏の日、持てる力を振り絞って投げ合った、広島大会決勝戦。終わるのが寂しいとさえ、思えたあの激闘が、あの対決が、今年の日本シリーズで再現されるかもしれない。
オリックス山岡泰輔投手が右ひじ手術から復帰して、日本シリーズの出場資格者名簿に名前を連ねた。20日から始まった日本シリーズはヤクルトが相手だが、そのなかには中継ぎ投手として田口 麗斗投手がいる。今年のプロ野球のフィナーレを飾る大イベントで、3度目の対決に期待がかかる。
2013年夏。広島大会の決勝戦は瀬戸内と広島新庄の対戦となった。瀬戸内のエースは現オリックス山岡。そして広島新庄のエースは現ヤクルト田口だった。2人が甲子園をかけて投げ合った一戦は、両投手が一歩も譲らない高校野球界に語り継がれる伝説の試合になる。
山岡は9回一死まで無安打無得点を続ける素晴らしい投球だった。一方、田口は13安打を浴びながら、得点を許さなかった。意地と意地がぶつかり合い、決着はつかなかった。0対0のまま延長15回引き分け再試合。夏甲子園出場が1県1代表制となってから、広島の決勝が再試合となったのは初めてのことだった。
2日後に行われた再試合も、まるでVTRのように、両投手とも譲らず7回まで0行進が続いた。8回裏、瀬戸内が一死二塁のチャンスから大町太一捕手(当時2年)の右前適時打で1点が入る。1対0で瀬戸内が優勝。ついに決着がついた。山岡は再試合を5安打完封。準決勝からの連続無失点を29イニングまで伸ばし甲子園の切符をつかんだ。
2人とも1年生からともに意識していたという。互いに相手を倒さない限り甲子園はないと思っていた。エースのプライドをかけた戦い。ふたりに悔いはなかった。敗れた田口はその後、瀬戸内の甲子園の試合を応援に行ったという。山岡も「まだ投げ合いたい」ともらしていたという。激戦後、2人に涙はなかった。完全燃焼だった。
2018年交流戦で、オリックス山岡、巨人田口の先発でプロで初めて「再戦」が実現した。田口は6回途中5安打1失点、山岡も6回4安打1失点。ともに勝敗はつかなかった。まるで、また「再試合」となったようでもある。
日本シリーズ中、ともに中継ぎとして投げ合う可能性はある。同じマウンドに上った時、2人のハートは高校球児だった、あの夏にタイムスリップするに違いない。3度目の対決。2人はどんなドラマを用意しているのだろうか。
記事=浦田由紀夫