安城学園vs岡崎学園
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終盤にもつれた試合は、延長11回で安城学園が岡崎学園を突き放す
延長戦の勝利に笑顔がはじける安城学園
愛知県では、春と秋の県大会後に全三河大会と全尾張大会が開催される。これは、名古屋市内の強豪校に負けるなと、戦後すぐに三河地区の指導者たちが話し合い、中日新聞社にも話を持ち掛けて、優勝旗も出す大会を開催していこうというところから始まった。そして、尾張地区もそれに追随する形でやや遅れて開催されたのが始まりである。大会は春と秋を通算してカウントされており、原則的には秋は奇数大会となる。
今秋の全三河大会はベスト8では東西三河が同数だったものの、東西対決となった準々決勝でことごとく西三河勢が勝ったことで、4強すべてが西三河勢ということになった。大会後半は豊橋市民球場で開催していながら、東三河勢なしという、いささか皮肉な形になってしまった。
ところで、岡崎学園と安城学園という両校、ともに似たような学校の成り立ちでもあるところが面白い。上に愛知学泉大がある安城学園は、当初は安城学園短大附として、女子バスケットボールの強豪校でもあった。その後、大学が4年制となり校名変更もあり今日に至っている。系列校には岡崎城西がある。現在は共に共学校となったが、元々は、岡崎城西が男子校で、安城学園が女子校という成り立ちでもあった。安城学園は、女子駅伝も強豪である。
岡崎学園は岡崎女子という校名の時代から女子バレーボール部は名門で、全国選抜高校バレーボール大会(春の高校バレー)の第1回大会優勝校でもある。女子バレーボール部は今も強豪校として実績を残している。その後、母体の大学が人間環境大となった。さらに、4月からは校名が人間環境大岡崎となるようだ。
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8回に同点ホームインした松本を迎える安城学園ベンチ
岡崎学園は、秋季県大会では2回戦で愛産大三河に敗れたが、この全三河大会ではその愛産大三河に勝った豊橋中央を下しての4強進出だった。準決勝では投手陣が乱れて、科技豊田に敗れて3位決定戦に回った。安城学園も前日は乱戦の末に西尾東に敗れて、3位決定戦に回った。
安城学園日比野と岡崎学園塩尻の投げ合いとなった試合。4回に岡崎学園は一死から4番吉田汰月が中前ポテン安打で出ると、続く武田とのエンドランは内野ゴロとなったが相手送球ミスを誘って、一塁走者吉田は一気にホームインして先制点となった。
次の得点も岡崎学園に入った。6回、岡崎学園は先頭の2番伊藤が左前打で出ると、捕逸で二塁へ進み、3番渡邊が一、二塁間へ放ち、一塁手のミットを強襲する安打となり、これで二塁から伊藤がかえった。安城学園の日比野としても丁寧な投球だったが、岡崎学園打線がよく捉えたというところか。
2点のリードで、塩尻は少し余裕の投球にもなってきたのか、7回は初めて三者凡退に抑える。驚くようなスピードがあるわけではないけれども、上手にコーナーをついて行く投球だった。
ところが8回、安城学園はついに塩尻を捉える。一死から、突如乱れた塩尻は3連続四球を与えてしまう。これで塩尻もちょっと不安が出てきてしまったのだろうか。ここで、安城学園の増永和大監督も勝負を賭けて代打堀を送り出す。その堀が起用に応えて、ファーストストライクを思い切りよく振り抜いて左前へ2点同点タイムリーを放つ。さらに失策もあってもう1点入り逆転する。なおも一死二、三塁という場面。ここで、7番山本も中犠飛を放ってこの回4点。安城学園は一気にひっくり返した。
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11回にダイビングキャッチの美技を見せた安城学園・角
その裏、岡崎学園も一死から伊藤守生が二塁打して死球もあって一、二塁としたが、ここは日比野が何とか踏ん張った。内野陣もよく守っていた。
それでも岡崎学園は9回、2番手としてリリーフした大須賀がいいリズムで投げて三者凡退に抑え、最終回の攻撃に託した。そして、先頭の代打伊藤樹生は中前打して気を吐いた。二死となったが、大須賀が四球を選んでつなぐと、1番佳山が中越え二塁打を放ってこれで同点となって、延長にもつれていくことになった。
10回はともに3人で終え、新たな投手戦となっていくかと思われる展開だったが、11回、一気に試合は動いた。安城学園は先頭の6番畔柳が左中間二塁打し、中継が乱れる間に三塁まで進む。続く山本が左前打でかえしてリードする。さらに、盗塁と捕逸で三塁へ進むと、長谷川のスクイズは三塁線で球が止まって内野安打となる。なおも、失策と四球、暴投なども重なって、岡崎学園の守りもいくらか乱れて4点が入った。結局、これで決着がついた。
「投手は、ある程度しっかりとしているので、ロースコアの展開になれば、何とかなるかなとは思っていました。ただ、この大会に出場した16校、いずれもそうだとは思うのですが、一つの四球、一つのミスで崩れていきます。そうしたことを踏まえても、もっと精度を高めていかないといけないと思います」と、敦賀気比で質の高い野球を経験してきた増永監督は、この大会で上位まで戦えたことで改めてチームの意識を作っていこうという思いで、来春以降を目指してチームを鍛えていく意向だ。
岡崎学園の、田中信宏監督は、「細かいところで、やろうとしていたことが、何もやれていませんでしたから、野球になりませんでした。全体的に力不足だったということです」と、肩を落としていた。この敗戦を起爆剤として、もう一度チームを見つめ直していく覚悟で来シーズンを目指していくという意欲である。
記事=手束仁
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シートノックに散る安城学園
ピンチを脱したい岡崎学園
安城学園・松本隆盛