Interview

50m走6.0秒。公立校のドラフト候補・藤野恵音が掲げる「スピードと初球攻撃」の美学

2021.10.10

「1番打者は、流れを引き寄せる役割があると思います。初球からガンガン打っていき、足でもかき回して、チームに勢いを与えたいです」

 そう語るのは、福岡県・戸畑高校のドラフト候補・藤野 恵音だ。
 180cm・77kgの遊撃手、高校通算本塁打は16本を数え、50m走は6.0秒。さらには強肩を生かして投手としてマウンドにも登ることもあり、身体能力を武器にプロ注目選手として活躍を見せた。

 中でも特にスカウトを唸らせたのが、プロとも遜色ないと呼ばれる俊足に、果敢に初球を狙っていく積極性。身体能力の高い「大型遊撃手」として指名に期待がかかる。

俊足強打の核弾頭として1年春から台頭

50m走6.0秒。公立校のドラフト候補・藤野恵音が掲げる「スピードと初球攻撃」の美学 | 高校野球ドットコム
藤野 恵音(戸畑)

 二人の兄が野球をやっていた影響で、幼い頃から野球ボールに慣れ親しんでいた。小学校2年生時に少年野球チームに入団し、中学では小倉リトルシニアに入団。遊撃手としてプレーし、中学2年の冬にはリトルシニア九州代表にも選出された。

 強豪私学からの誘いもあったが、長兄は小倉、次兄は戸畑と文武両道を実践していた二人の兄の姿に憧れ進学校への道を選択。戸畑への進学を決めた。

 入学後は4月から公式戦に出場し、夏にはレギュラーを掴むなど早くから頭角を現したが、藤野はチームの環境にも恵まれたと振り返る。

「入学してすぐに4月の市長杯、夏の大会と公式戦に出場させていただき、また先輩たちにも野球がやりやすい環境を作っていただいたことで、2年、3年と経験を活かすことが出来ました。戸畑に入学して本当に良かったと思っています」

 新チームからは1番・ショートを務め、中心選手としてチームを牽引。
 抜擢の理由を江藤高志監督は、「彼が初回からガツンといけば、チーム全体も勢いに乗ります。守備も良く、彼のプレーはチームの士気を上げることができるので1番打者を任せました」と説明する。

 藤野は俊足強打の核弾頭として、その期待に応え続けた。

[page_break:無闇矢鱈と振り回している訳ではない]

無闇矢鱈と振り回している訳ではない

50m走6.0秒。公立校のドラフト候補・藤野恵音が掲げる「スピードと初球攻撃」の美学 | 高校野球ドットコム
江藤高志監督

 そんな藤野がこだわっているのは、「スピードと初球攻撃」。
 初球はボールが甘く入ることが多い。果敢な初球攻撃で相手投手の出端を挫き、そして50m走6.0秒の俊足を活かして二塁、三塁と陥れる。

 チームにも勢いをもたらし、相手投手に大きなダメージを与えることを常に心がけている。

「投手は、初球はストライクを取りたいと思います。立ち上がりは球数を投げさせるのがセオリーだとは思いますが、僕は初球から攻めてチームに勢いをつけたい。そのために、試合前は相手ピッチャーのブルペンの様子を見て、ストレートと変化球の割合を確認しながら初球の狙い球を決めますね」

 その言葉からわかるように、無闇矢鱈とバットを振り回している訳ではない点も見逃せない。江藤監督は、藤野の思考力や状況判断能力も高く評価しており、
「試合開始直後からブンブンとフルスイングしていきますが、追い込まれたら大振りはせず、ボールを冷静に見極めたり、大胆さの中に繊細さも持ってる選手です。また状況を考えながら、変化球を右方向に打ち返したりもできるので、そこは評価できると感じています」

 指名は確実とは言えないが、プロ入りへの思いは入学時から強く持ち続けていたと藤野は言い切る。公立高校でもプロ入りできると証明することが、高校野球での集大成と位置づけているのだ。

「小学校の時からプロ野球選手になることは夢でした。公立高校からプロに行く選手は決して多くありませんが、だからこそ公立高校で勉強と両立しながらでもプロに行けると証明したいと思っています」

 プロ入りとなれば、高校としては2000年に横松 寿一が広島東洋カープにドラフト1位指名を受けて以来となる。21年ぶりのプロ入りへ期待は膨らむばかりだ。

(記事:栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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