試合レポート

都立文京vs都立小平西

2021.09.14

都立文京 岡崎の左前安打で逆転サヨナラ勝ち! 都立小平西・並木 魂の投球実らず

都立文京vs都立小平西 | 高校野球ドットコム
文京・鈴木駿飛投手

 都立文京都立小平西という都立の実力校同士の熱戦は、9回に思わぬ展開が待っていた。

 文京は背番号10の鈴木駿飛都立小平西は背番号11の芦澤俊佑という、ともに背番号二桁の1年生投手が先発した。ただ鈴木に関しては、文京の梨本浩司監督は「エース格です」という。

 一方都立小平西は、この試合では4番・右翼手で出場している背番号1の並木優介との2枚看板といったところだ。

 先制したのは都立小平西。2回表に四球と失策、8番・萩野恵太の右中間の安打で一死満塁とし、9番・芦澤の三ゴロが併殺崩れとなり1点が入る。

 文京は都立小平西の左腕・芦澤に、今一つタイミングが合わず、走者を出しても得点に至らない。そうした流れを変えたのが、1年生ながら4番に抜擢された須藤勇真であった。7回裏、敵失と死球に盗塁を絡め、二死二、三塁の場面で打席に立つ。

 この試合、ここまで安打はないが、「低めの真っ直ぐを強く打ちました」という打球は、強く振った分、意外と伸びて中堅手の頭の上を超える三塁打となり、2人が還り文京が逆転した。

 それでも都立小平西は8回表、この回先頭の3番・稲垣拓希が内野安打で出塁すると、4番・並木がレフトフェンス直撃の二塁打を放ち、まず同点に追いつく。さらに犠打と四球に盗塁もあり一死二、三塁の場面で、7番・近藤大生の三ゴロで、三塁走者の並木は本塁に突入し、ホームイン。記録は野選となり、都立小平西が逆転した。

 リードした都立小平西としては、投手を並木にスイッチするポイントが問題になる。芦澤は8回裏の文京の攻撃を無失点で抑え、9回裏のマウンドに立つ。「(芦澤は)完投したことはありません。8回まで104球でした。相手も合っていませんでした」と語る都立小平西の石田幹雄監督は、まず様子をみて、交代を判断するつもりでいた。

この試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています


 ところがこの回、文京の先頭打者である3番の板倉勇一を四球で歩かせる。こうした場面での四球は大きい。打席は、前の打席で三塁打を放っている4番の須藤だ。「バントも考えられますが、4番ですから打たせました」と文京の梨本監督が言えば、須藤も、「打てのサインでしたから、つなごうと思いました」と言う。左打者の須藤が引っ張った打球は、ライトの深いところに飛ぶ二塁打になり、無死二、三塁と、一気に逆転の場面を迎える。

 ここで都立小平西は右翼手として出場していた並木への投手交代を告げる。ところが並木は、打球を追った際に足を吊ってしまう。それでも交代を告げられた以上は、マウンドに立つ。投げることができないのなら、ルール上、打者1人は投げなければならないので、石田監督はベンチから、「投げることができないのなら、フォアボールでいいぞ」と声をかける。マウンド上の並木は、足を気にしている様子であったが、それでも気力で、しっかりと力のある球を投げる。

 5番・植田英備は三振になったが、最後の球はワイルドピッチになり、三塁から板倉が生還し同点。上田も振り逃げとなり一、三塁となる。6番・青山大輔は四球で満塁となり、7番・岡崎力也が左前安打を放ち須藤が生還。9回裏の劇的なサヨナラで文京が都立の実力校同士の熱戦を制した。

 都立小平西の並木は、背番号1を担うだけあり、足が吊る中、球に力があり、気持ちが伝わってくる投球であった。秋は初戦敗退となったが、春以降の戦いが楽しみなチームであることは間違いない。

 文京の梨本監督は、「鈴木は100点に近いピッチングでした。4番(須藤)もいいところで打ってくれました」と、2人の1年生の活躍をほめた。次もやはり都立の実力校である東大和だ。劇的な勝利の勢いを、どう次の試合につなげるか。都大会出場をかけた、都立校同士の力の入った試合になりそうだ。

この試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています



都立文京vs都立小平西 | 高校野球ドットコム
2本の長打で勝利に貢献した文京4番・須藤勇真

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小平西・並木優介

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小平西・芦澤俊佑

(記事=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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