150キロ右腕・細谷怜央も実践する中央学院のマル秘トレーニング
千葉県でも選手の技術、野球のきめ細かさでトップレベルのチームといえば中央学院だろう。2018年は春夏連続で甲子園出場、その年の新チームとなった秋も関東大会出場を果たした。そしてこの春は県ベスト8入り。そんな中央学院の選手はどんなイメージが沸くだろう。
投手でいえば、球速、コントロールを両立した好投手。野手でいえば、身体能力が高く、走攻守全てにおいて鍛えられた完成度の高い選手が目につく。今回はその一端が分かるトレーニングの様子に迫っていきたい。
トレーニング→キャッチボール→トレーニングのサイクルを大事にする意味合い
バランスディスク、メディシンボールを使ったトレーニングに励む中央学院の選手たち
我孫子市に所在する中央学院グラウンド。グラウンドの構造は高台をくだる形となり、三塁側の高台には、屋根付きブルペン、ブルペンの屋根下には、トレーニング施設、鳥かご、トレーニングができるあぜ道などが並び、広いスペースがあるのが特徴だ。
取材日の練習内容はこのようになっていた。
1,2年生はグラウンドで練習と紅白戦。3年生は先輩たちである中央学院大野球部のリーグ戦の応援で午後から練習参加。
3年生はメイングラウンドでの練習にに入るまで、トレーナーを交えてトレーニングを行う。伝統となったダンスで体を温め、打者は早打ちのティーでキレを出す。
そんな中、投手のトレーニングはかなり特徴的だった。
投手陣はバランスディスクを使い、歩いたり、メディシンボールを上から投げたり、下から投げたりする。なかなかバランスが取れず、尻もちをついてしまう選手もいた。一見地味に見えたが、体の芯にしっかり効いているようだ。特徴的だったのは一通りこのメニューを終えると、選手たちはキャッチボールを始める。これで技術練習突入かと思えば、しばらくして、バランスディスクを使ってのメディシンボール投げ、あるいは歩く。そしてキャッチボールをして、再びバランスディスクを使ってのメディシンボール投げ。このサイクルを繰り返す。
このトレーニングについてエースで最速150キロ右腕としてプロのスカウトから注目される細谷怜央はこう語る。
「投げる時に立った時のバランス、軸(の安定感)は大事なので、ピッチングを安定させる上で、良い練習かなと思います」
この試みは春季大会後から始めたもので、細谷自身、手応えを感じている。
「力の入れ具合は良くなると思います。自分は力の伝え方というのが下手くそなので、そういうところを練習して克服したいと思います」
多くの投手は「フォーム固め」をかなりこだわると思うが、特に気にするのは、適切なバランスで、さらにベストなタイミングでベストボールを投げることができるか?一見、地味な練習に見えるが、感覚を養うトレーニングを大事にする中央学院の方針が垣間見える。
[page_break:フィジカルトレーニングと実戦練習を両立]フィジカルトレーニングと実戦練習を両立
最速150キロ右腕・細谷令央
今では私立、公立問わずトレーナーと契約し、専門的なトレーニングを実践し、中央学院のように感覚や体幹を鍛えるチームは他の野球部でも見られるが、トレーニング→キャッチボール→トレーニングのサイクルを繰り返すチームは見たことがない。細谷はこういうサイクルであるからこそ気付けるものが多いという。
「変わった感じはします。このトレーニングをやった後にキャッチボールを行うと、地面を掴む感じで投げられているので、そういう感覚で投げられていることを理解しながらトレーニングを繰り返すと、しっかりと整理しながら、トレーニングに対する理解を深めています」
このトレーニングのポイントはやりっぱなしではなく、実際に投げる感覚が変わることを理解し、トレーニングの重要性を理解しているのが大きい。
また投手以外でも、野手は鉄の棒で片足でスクワットを行い、小さいハードルで片足ジャンプ、そしてあぜ道でスキップダッシュ、アジリティトレーニングを加えていく。
中央学院はフィジカル面では千葉県No.1を目指しており、例年、中央学院から身体能力が高く、かつ技術も高い選手が多く現れているのは、こうした練習の積み重ねがあるからだろう。
さらに見逃せないのが、状況判断能力を磨く習慣があること。3年生がトレーニングをしている中、1,2年生は紅白戦を行っていた。
全国の多くの学校が緊急事態宣言の影響により対外試合ができない事態となっているが、それは中央学院も例外ではない。しかし限られた時間でも1,2年生がグラウンドで実戦的な練習を行い、全選手がレベルアップできるよう工夫を凝らした練習ができていた。
(取材=河嶋 宗一)