花咲徳栄vs南稜
花咲徳栄の春がスタート 140キロ超え複数の投手陣誇るも「打たないと勝てない」
4回表、3ラン本塁打を放った9番・秋山貫太(花咲徳栄)
25日、熊谷さくら運動公園野球場の第二試合では花咲徳栄と南稜との2回戦が行われ、花咲徳栄が5回コールドの24対0で南稜を圧倒した。
昨秋は県準々決勝で細田学園に3対2で惜敗。細田学園先発の飯吉 陽来の110キロ台の直球とそれよりも20キロほど遅いカーブに翻弄され、最後まで捉えることができなかった。「打たないと勝てない」。昨秋の教訓を主将の浜岡陸と岩井隆監督は口を揃える。
冬場、打者陣は命中率、スイングスピードにこだわりバットを振った。打線は初回からその成果を発揮する。先頭2人が四死球で出塁すると、3番・浜岡は1ストライクから鋭いスイングで振り抜き、先制の2点適時二塁打となった。浜岡はこの冬、バットが下から出る癖がある打撃フォームの修正に努めた。磨き上げたスイングで南稜先発の軟投派左腕・古澤怜音春を初戦の第一打席でしっかりアジャストすることができた。
「徳栄は初回に絶対に点を取るチームです。これが普通になってこないと」と気の緩みはない。浜岡だけでなく打線は下位と上位の区別がつけ難いほど一貫してスイング、打球の速さは高いレベルを誇った。
4回には9番・秋山 貫太に3ランが飛び出すなど11安打を集め一挙14得点を奪い着々と差を広げていった。
投手陣は、この日が公式戦初先発の最速144キロ右腕・松田和真がゲームを作った。昨秋は地区予選1試合の救援登板のみに終わったが、この春は背番号1を背負い投手陣を牽引する。松田について岩井監督は「秋は登板機会が少なく、(先発できる)体力がついていなかったので、この冬はひとり走り込んでいました」と冬場の努力を見守っていた。
背番号1について松田は「投手陣を引っ張っていかないといけないという責任感が増しました。でも、勝ち上がって行くには全員の力が必要なので、この春は自分が先頭に立って戦っていきたい」とここまでの悔しさを高校野球ラストイヤーの春にぶつける。
公式戦初先発を果たした松田和真(花咲徳栄)
3回を投げ1安打6奪三振と上々の結果だったが、初回から直球の浮き球が目立った。それでも球威で空振りを誘い結果的に三振を奪えたという印象だった。「球が浮いてしまったことが課題です。次回からは一球で修正できるようにしたい」と振り返る。
投手は自分自身の「感覚」を頼りに修正を試みるが、これは極めて繊細な作業だ。松田は「距離感」を尺度の一つにしており、この日はバックネットまでの奥行きが広く、キャッチャーまでが近く感じたため、球が高めに行ってしまったと分析。試合直後の取材でしっかり言語化できたいた。これは試合中に、ベンチから見守っていた昨秋県大会では背番号1をつけた堀越 啓太の指摘もあり、気づくことができたという。それを頭で理解できたとしても、直ちにアウトプットできるかは容易なことではない。試合間での微調整は次なる課題だ。高度な次元で切磋琢磨する花咲徳栄の投手陣たちの観察力にも驚かされた。
そしてこの試合では2番手で最速140キロオーバーの柿沼昂希、3番手で唯一2年生でメンバー入りを果たした金子 翔柾、そして4番手で堀越が登板し無失点で継投した。
ここまで好投手を揃えながらも、「打ち勝つ野球」を標榜する今年の花咲徳栄。それは昨秋の細田学園戦だけでなく、4月の頭に常総学院との練習試合で1-2で敗戦したことでさらにその思いは強くなった。先発の松田が好投も打線は1得点に終わり接戦で勝ちきれなかった。「やっぱり打たないと夏は勝てない」。百戦錬磨の岩井監督の言葉は重たい。そんな執念がこの試合でも感じられた。
今年は6年連続の甲子園出場がかかる。この春で埼玉の覇権を取り戻すことができるか。次戦は29日に叡明、北本の勝者と対戦する。
(取材=藤木 拓弥)