銚子商vs拓大紅陵
銚子商・野村光希が拓大紅陵を完封!背番号10からエースとなった右腕が誕生日に花を添える!
勝った瞬間に喜びを爆発させる銚子商・野村光希
昨秋も同じ[stadium]千葉県野球場[/stadium]で実現していた銚子商と拓大紅陵の一戦。その時は6対1で拓大紅陵に軍配が上がったが、今回の対戦は銚子商が1対0で拓大紅陵を下した。
勝負の分かれ目は5回、銚子商8番・木村 真悠のヒットをきっかけに一死満塁を作った。このチャンスを3番・久保形 怜司が逃さずにレフトへタイムリー。これが決勝点となった。
リードは僅か1点だったが、銚子商のエース・野村 光希が粘りの投球。「(他の投手に)譲るつもりはありませんでした」と気持ちを込めたピッチングで拓大紅陵打線を0点に抑え続け、9回完投。自身初の完封勝利を飾ってチームに勝利をもたらした。
この試合で見ていきたいのが、両チームの先発投手だ。勝った銚子商のエース・野村。球速は最速でも130キロ前後と、拓大紅陵・加藤のようなスピードはない。それは投げている野村もわかっていることだ。その代わりに野村が重視してきたことは2つ。相手打者に的を絞らせないこと。そしてボールの威力を高めることだ。
まず威力を高めるために、冬場はトレーニングではウエイトはもちろん、ジャンプ系のトレーニングにも力を入れた。これに取り組むことで、瞬発系の筋力を鍛え、リリースの瞬間に発揮できる出力を高めてきた。体重も一冬で5キロ増えるなど、成果は目に見える数字にも表れた。
そして球種に関しては、冬場はチェンジアップとスプリットの精度を高めてきた。
「ブルペンでは低めの高さに設定して、ゴムを張ることで、常に高さは意識してきました」
秋の段階からチェンジアップは使っていたものの、試合で使える精度ではなかった。そのためスライダー、さらにカットボールと言った横の変化球に頼る投球スタイルだった。
しかし、的を絞らせないためにも、一冬かけてスプリットなど縦の変化球も使いこなせるように投げ込んだ。この結果、投球に幅が広がった。拓大紅陵戦でも9回通じて常時スプリット、チェンジアップを効果的に混ぜた。「低めに決まって体勢を崩すことが出来ました」と冬の成果をを感じていた。
秋までは背番号10だったが、縦横、そして奥行きと自由自在にボールを操れるようになり、エースへと成長した野村。次戦が選抜に出場した専大松戸だ。強豪であることは間違いないが、「良い形で勝てたので、絶対に勝ちたいです」と気持ちは十分だ。勢いそのままに夏のシードも確保なるか注目だ。
そして敗れた拓大紅陵の先発・加藤 光太は130キロ台を計測する真っすぐが光った。この日の最速は139キロだったが、スピードと合わせて、角度の付けている点も見逃せない。
セットポジションから始動し、ボールに角度を付けるためにあえて上体を高くしたところから、縦回転で腕を振り下ろす。そのため、ストレートはもちろんだが、スライダーなどの縦の変化球も切れ味が鋭かった。チームを勝利に導くことはできなかったが、夏はもう一回り成長した姿を見せて欲しい。
(取材=田中 裕毅)