試合レポート

東海大相模vs天理

2021.03.31

26回43奪三振、防御率0.00。石田隼都(東海大相模)はなぜ打てないのか?

東海大相模vs天理 | 高校野球ドットコム
石田隼都(東海大相模)

 息詰まる投手戦を制したのは東海大相模だった。

 初回、今大会初先発の天理仲川一平から東海大相模2番・綛田 小瑛が出塁すると、二死から4番・柴田 疾のタイムリーで東海大相模が先制した。そこから投手戦の様相となったが、エース・石田隼都の力投で東海大相模が1点リードのまま終盤へ。

 すると9回、7番・佐藤 優真のヒットからチャンスをつかむと、二死三塁から相手バッテリーのミスでダメ押しの1点を加えた東海大相模。最後は石田が天理を三者凡退に締めて試合終了。2対0で天理を下した。

 この一戦は東海大相模石田隼都の好投に尽きるのではないだろうか。
9回 打者30人 球数122球
被安打3 奪三振15 与四死球0 失点0

 この試合だけではなく、今大会を4試合の登板を通じてて与えた四死球は僅か1つ。大会期間を通じて抜群の安定感が光り続けている。この好投手を攻略するために、天理でも対策は講じてきた。

 昨日の休養日では打撃練習の際にマシンの設定を速めにして、速球対策をしてきた。また試合中には、各打者が打席の中では後ろに立ち、出来るだけ長くボールを見えるようにしてきた。それでも石田から放ったヒットは3本だけ。実際に対戦して天理のバッター陣は何を感じたのか。

 「ボールも良いですが、気持ちもぶつけてくる。またチェンジアップが前の試合で良かった分、頭の中でちらつきましたし、スピード表示以上のボールの良さを感じました。」(瀬千皓

 「フォーム自体がボールが見えにくいんですが、真っすぐはスピードと切れが良い。変化球も切れがあって、途中で消えるような感覚がありました」(内山陽斗

 想像以上のキレに苦戦を強いられた天理ナインだが、投げていた石田自体は、天理戦の投球をどのように感じているのか。
 「今日は力みなくしっかりと腕を振って投げきれましたし、真っすぐをコースにコントロール良く投げられたと思います。特に、右打者に関してはインコースに真っすぐ、それと自信を持っているチェンジアップをしっかりと投げられたのは良かったと思います」

 またこの日はチェンジアップを有効にするためにも、「インコースに真っすぐを投げ込むことを序盤から意識しました」とのこと。今大会通じて見せてきた強気な投球が立ち上がりから見せられたことが変化球を活かし、そして天理打線を圧倒できたと言ってもいいだろう。

 そして、今大会通じて与四死球1つと言う制球力に関しては、「四球はチームの流れを悪くするので無くすことは心がけているので、3ボールにすることも少なくできました」とコメント。さらに奪三振の多さについてもこのように分析する。
 「追い込んでからの低めの変化、外へのストレートが決まっているのが大きいと思います」


 1日の決勝ではどういった投球を見せるのか楽しみだが、敗れた天理も十分今年のらしさを発揮して東海大相模と接戦を演じた。わき腹の痛みからエース・達孝太はベンチスタート。だが、天理先発・仲川一平東海大相模の攻撃を凌いだ。

 昨秋の県大会準々決勝・御所実戦で初めて公式戦で登板するなど、練習試合を含めても投手陣で最も投球イニングは少ない。経験の浅い仲川を天理は抜擢した。この抜擢に「達だけじゃないと思ってマウンドに上がった」という仲川は8回1失点とこれ以上ない投球で、試合を作った。そして、仲川を盛り立てた野手陣の守備も非常に安定していた。エラーこそ2度記録しているが、落ち着きある安定感抜群の守備で仲川を盛り立てた。

 ショート・杉下海生をはじめ、ランナーがいなければ二遊間は深めの守備位置を取るなど、シフトの工夫を凝らしているところもあったが、それだけで東海大相模の打球をさばけるわけではない。元々、今年は投手を中心にした守備型のチームだと中村監督は以前の取材から語っていた。取材時も守備の基本練習を徹底的に行い、守備力強化を図ってきた。

 また天理の方針として、オフシーズンは基本を徹底的に見直す時期として、今回は近畿大会が終わってからはあまり練習試合を行わずに、練習に時間を費やした。そうした基礎の徹底がセンバツの準決勝で出たと言っても過言ではない。内山主将も「守備に自信があったので、オフシーズンにやってきた成果が出たと思います」と冬場の成果に手ごたえを十分に感じていた。

 ただ、全国区の投手を擁するチームに勝つには打力も必要だ。甲子園での経験を糧に、奈良を勝ち抜き、夏の甲子園で再び戦いを見られることを期待したい。

(取材=田中裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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