Column

県8強に終わった明石商は基本に立ち返り、再び強い明商を作り上げる!

2020.12.22

 新型コロナウイルスの蔓延により、特別な1年となった2020年。高校野球界でいえば選抜が中止となり、その代わりとなる交流試合が夏に開催され、出場予定だった32校が1試合だけの甲子園で全力を尽くした。

 その中には兵庫が誇る強豪・明石商もいた。ドラフト指名を受けた中森俊介来田涼斗の投打のキーマンを擁して、桐生第一に勝利を掴み、3年生は高校野球から幕を下ろした。しかし、現チームは県大会ベスト8で長田に敗れ近畿大会を逃し、選抜は厳しい状況となった。

「最悪の状況で最善を尽くす」を合言葉に

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ティーバッティングをする明石商の選手たち

 取材日、グラウンドに足を運ぶと、定期試験を終えた選手が続々とグラウンドに出てきた。昼頃から練習を開始するが、17時ごろには全体練習終了。全員が同じメニューをこなせるように、片方がノックを受けいればもう1班はグラウンド脇で体幹トレーニングを実施。

 そしてバッティング練習は7面を敷き、待っている間にはティーバッティングでひたすら振り続ける。とにかく隙間時間を作らずに全員がてきぱき動きて目一杯時間を使って練習をする。中森、来田たちの世代もたたき上げで鍛え上げてきたが、今年の明石商も健在だ。

 しかし3年生たちと違ったのは公式戦があるか否か。取材日の時点で明石商はベスト8で敗退しており、公式戦は終わっていた。大会に向けて練習することはなく、基本に立ち返った練習や声掛けが飛び交っていた。

 チームは既に来春に向けて練習をしていたが、その中でも気になった一言がある。それは「最悪の状況で最善を尽くす」というフレーズだ。

 中森や来田、そして名将・狭間善徳監督も選手たちへのミーティングで口にしていた言葉だ。公立校である明石商は、今春は練習自粛をせざるを得なかった。再開をしても教育委員会の決まりのなかでしか練習ができず、最初は90分間で全体の半分しか部員が参加できなかった。

 加えて夏の独自大会、そして甲子園交流試合と8月中旬まで大会のスケジュールが埋まっており、必然的に新チームのスタートは遅くなった。実際に夏の兵庫大会は8月7日まで行われ、交流試合は8月16日に開催。

 そして秋季大会は8月18日が初戦と準備しきれないまま、秋の予選を迎える形になった。新チームという観点から見れば、まさに最悪の事態だったと言える状況なのだ。

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基本に立ち返り再び強い明商を作る!

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円陣を組む明石商の選手たち

 例年であれば春先に少しずつ実績を積むことが出来たが、それができなかった。だからこそ、狭間監督は選手たちに最善を尽くすことの重要性を練習再開から現在まで選手たちに伝えてきた。

 また、最善を尽くすことと同時に春に巻き返しを図るべく、取材日に伝えていたのは打撃の基本だ。なかでも特に力を入れたのは無駄を減らすことだった。

 取材日は最速150キロを計測した森木 大智高知)と対戦して引き分けた明徳義塾の話から無駄を減らすことの重要性を説きつつ、2016年の選抜で出場校のなかで最多だった57犠打飛の記録。また2018年の甲子園ベスト4の結果には、四死球をつかみ取る選球眼の高さがあったことを話す。

 そのうえで、それらができたのは、無駄のないスイングがあったから見極めも確実にミートできたと説明。強豪校のコメント、そして過去に甲子園で結果を残した先輩方の取り組みを通じて選手たちにわかりやすく伝えながら理解させていたのが印象的だ。

 また、タイミングやインサイドアウトのスイングをするために必要なポイント。そしてティーバッティングの効果的な取り組み方など、狭間監督がレクチャーを交えながら選手たちに指導した。

 それらすべては「夏に勝つ確率を上げる。打てるチームになる」ために取り組んでいることだとのこと。今回に限らず、これまでも伝えてきたことだと語るが、もう一度土台となる部分の重要性を伝えることで、冬場の練習を充実させようとしている。

 秋はベスト8で同じ公立の長田に敗れた。練習環境など明石商にとって現時点で最悪の状況であっても、夏の大会は待ってくれない。刻一刻と大会が迫っており、練習できる時間も少しずつではあるが、少なくなっていることは間違いない。

 そんな状況でも最善を尽くしながら、土台となる部分から見直していく明石商。春、そして夏に再び強いチームを作るべく、これからもベストを尽くし続ける。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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