通算40本塁打スラッガー・吉野創士(昌平) 新フォームがハマった県大会とハイレベルな投手との戦いで見つけた新たな課題
智辯学園・前川右京。星稜・中田達也といった甲子園経験組に、早稲田実業・清宮福太郎などスラッガーが揃い踏みの2021年世代。この中で、3拍子揃ったアスリート型といってもいいポテンシャルを発揮し続けているのが昌平・吉野 創士だろう。
高校通算40本塁打と同世代でも屈指の打力に加えて、俊足強肩と鈴木誠也を彷彿とさせる吉野。世代を代表するスラッガーはこの秋、確かな手ごたえと新たな課題に直面していた。
好調の要因は引き付ける勇気になった
高校通算40本塁打を誇る吉野創士(昌平)*県大会川越東戦より
これまでは埼玉県大会までしか経験できなかったが、今秋の県大会で昌平は優勝を決めて、関東大会まで勝ち上がっていった。この優勝に大きく貢献した吉野だが、成績が素晴らしかった。
県大会6試合
22打数13安打 本塁打3、打点12
打率.591、出塁率.625、長打率1.182、OPS1.807
ドラフト候補としての実力をいかんなく発揮して、圧巻の数字を残した。これだけの好成績の裏側に何があったのか。
「県大会前はタイミングが早まることがありましたので、振り遅れるくらいのタイミングで練習をしていくことで逆方向にもホームランが出るようになってきました」
以前までは左膝の前辺りだったポイントを、おへその真ん中辺りに変えたとのこと。吉野が言ったように振り遅れさせる。懐まで引き寄せて捉えるようになったことで、ボールを見極めるだけではなく広角な打撃を可能にした。
またこの変化に伴って、バットの出し方にも工夫を凝らすことになる。
「今まではバットが下から出ることがあり、ドライブの打球がありました。ですが、今は上からバットを叩くようにしてだして、ボールとバットの芯を当てるようにする。伸びるライナー性の打球を飛ばすようにしました」
黒坂洋介監督とも相談をしながらたどり着いた現在の打撃フォーム。このフォームがハマったことで、県大会での活躍に繋がった。
そんな吉野の活躍もあり、チームは初の関東大会へ。初戦で神奈川2位・鎌倉学園と激突することとなるが、「変化球中心の配球であまり真っすぐがきませんでした」と吉野は鎌倉学園から厳しいマークにあう。
[page_break:60本塁打へ、課題克服の冬に向かう]60本塁打へ、課題克服の冬に向かう
吉野創士(昌平)*練習試合成立学園戦より
吉野は厳しいマークにあった結果、鎌倉学園戦で4打数ノーヒット。チームも5回までに7点を奪ったものの、後半に鎌倉学園の勢いを止めきれずに7対11で破れた。この結果は吉野の中でも反省している。
「埼玉県の後半から好投手との対戦でタイミングがずれてきていたので、修正して関東大会に挑みましたが、埼玉のレベルを超える投手たちに苦戦しました。結果を残せずに悔いが残ります」
指揮官の黒坂監督も吉野の関東大会での打席をこのように振り返る。
「チャンスの場面で凡退したシーンがありましたが、マークされながらもそういった場面で結果を残せる打者にならないといけないと思います。本人は悔しがっていましたが」
今年の柱、キーマンであるとも黒坂監督は吉野ついて語っている。監督からの期待に応えるべく、現在は変化球への対応力を磨いている。
「マシンで変化球をたくさん打って、どれだけ打ち損じを無くせるか。そこを意識して取り組んでいます」
1日の練習試合では成立学園の先発・小川のアウトコースへの真っすぐを捉え、高校通算40本塁打に到達した。「真芯でボールを捉えて、自分のバッティングが出来たので良かったです」と手ごたえを感じつつも、この日の最後の打席では変化球を捉えきれずに凡退した。
その点に関しても吉野は「まだ完成ではないので、懐まで引き付けて打つバッティングを習得できるように練習できればと思います」とコメントしている。
秋季大会がほとんど終わり、同世代のスラッガーが存在感を見せつつある。吉野の中でも意識している選手がいる。
「一番は智辯学園の前川右京くんです。ただ、千葉学芸の有薗直輝はホームラン数がほぼ同じですし、連絡も取り合っているので意識はしています」
千葉ロッテマリーンズジュニアとして2015年にともに選出されてからの関係である吉野と有薗。ライバルたちから刺激をもらいながら「大会で多くの課題が見つかりましたので、そこに取り組んでいきたい」と語った吉野。目指すは高校通算60本。その目標に向かって、直向きにバットを振り続ける。
(記事=田中 裕毅)