この夏、名門復活の兆しを見せた帝京。11年ぶりの秋頂点を目指す新チームの戦力、課題に迫る
9年ぶりに東東京優勝を決めた名門・帝京。今度は11年ぶりの秋の東京王者を目指し、真夏の中で厳しい鍛錬を積んでいる。今年はどんなチームなのか?新チームの戦力、課題を徹底特集する。
緊張感のある練習を繰り広げる帝京ナイン。そして今年の戦力は?
打撃練習中の選手
輝かしい東東京優勝から約2週間後。
帝京は緊張感が伝わる練習を行っていた。前チームの主将・加田拓哉の誰に対しても厳しい姿勢を継承し、今年も選手同士で厳しい指摘を行う。
その中でも新主将・武藤闘夢の口調は一番厳しい。あえて嫌われ役を買って出ているような雰囲気だ。首脳陣からは加田は外野手だったが、武藤は内野手の要である遊撃手を守っているからもっときついのではと語る。ただグラウンドを降りた時の武藤は穏やかな一面を持った選手だ。
「グラウンドでの自分、それ以外の自分は分けているようにしています。グラウンドで起きたことは持ち込まないようにしています」
緊張感のある練習で、プレッシャーがかかる中でも、選手たちの動きは実にキビキビとしており、やはり他のチームの選手と比較しても、帝京の選手たちのプレーの精度の高さ、真剣度の高さが伝わってきた。
戦力的なもので見ると、例年のように上級生主体のチームだ。今年は堅守巧打の遊撃手で主将の武藤に加え、超俊足の杉本直将毅、尾瀬雄大、高橋大陸の経験者がいるのは心強く、前田監督も、「夏の経験者が中心になることは間違いありません」
帝京の打撃練習を見ると、Aチームだけではなく、Bチームの選手の能力も非常に高いのが分かる。前田監督から「今年の1年生は飛び抜けた選手はいないかもしれないが、すべてにおいて無難にこなせる選手です」と語るように、Bチームの1年生も外野手の間を抜く打球を連発するだけではなく、さく越えの打球もあった。コーチ陣によると、少しずつ打球を遠くへ飛ばす感覚、フォームを身に着けた選手も多く、体格も良いので、レギュラー陣と遜色ないものがあった。
またAチームは投手相手に打撃練習を行う実戦形式。慣れてくると次第に鋭い打球を放ち、さすがの打撃を見せた。こうした対応力の高さ、守備など総合力の違いがレギュラーの有無の違いだろう。
投手では190センチの大型右腕・植草翔太がキーマン。夏では目白研心戦で先発登板を果たした。今年の正捕手・新垣熙博の弟・飛熙はセンターも兼任し、Bチームで、打力を磨き、打者として注目されている。また、安川幹大も140キロ近い速球を投げ込み、安定感は評価されており、植草もライバル視している好投手だ。
[page_break:現在の課題も去年と比べれば進歩。秋は意味のある大会へ]現在の課題も去年と比べれば進歩。秋は意味のある大会へ
新主将・武藤闘夢
そんな帝京の課題は守備、走塁における判断力だ。1人1人の選手の動きを見ると能力は高い。肩の強い選手も多く、特に主将の武藤の遊撃守備は一級品だ。首脳陣からも「体の強さが段違い。深い位置からでもさせる強肩があります」と高く評価されており、フットワーク、判断力、持ち替えの速さは素晴らしいものがある。
ただ全員が武藤のように精度が高いわけではなく、単純な捕球ミスだけではなく、判断ミスも多い。
アウトカウント、打球方向によって、内野手、外野手はどんな動き、シフト、ポジショニング、中継をすればいいのか。また逆に走者はどんな走塁をすればいいのか。それを瞬時に判断しなければならない。それができなければ厳しく指摘を受けるのは、そういった1つの判断ミスで試合が悪い方向に大きく動くのは理解しているからだ。
前田監督はこうした厳しい指摘や実戦形式の練習ができているのは、逆に良いことで、新チームとして進んでいる方だという。
「まず昨年や前々のチームのスタート時というのは、それ以前の問題でした。野球の取り組み、考え方、意欲などが足らず、ただやっているだけのチームでしたね」
そんな惰性な雰囲気に待ったをかけたのが前チームの主将・加田だった。
「あいつが全員に『こんなの帝京ではない!』と公言したんですよ。そこからですね、チームがしまったのは。なかなか選手に言えるものではないですが、やはりチームを引き締めるには、我々、指導者が言うより、選手たちが指摘しあったほうがいいんです。だから加田の働きは本当に助かりましたし、実際にそういうスタイルで優勝した姿を今の1,2年生たちは見ていますからね。だから加田の姿勢はしっかりと後輩たちに引き継がれています。甲子園に続けて出場していたときは、こういう緊張感がありましたので、良い傾向だと思います」
加田から主将を託された武藤は前チームと現チームを比較して、課題をこう語る。
「まず選手同士で信頼関係が築かれていないので、しっかりと意識していきたいです。1人1人が勝ちに対する姿勢、勝ちたいという気持ちがが足りない 自分が先頭になって引っ張っていければと毎日思っています。」
新チームがスタートして、取材日(8月21日)までに8試合を行い、6勝1敗1分と好発進をしている。それでも前田監督は「秋の一次予選が始まらないとまだわからない部分があります」と現在のチームについてはまだ未知数な部分が多いと感じている。
その中で武藤などの経験者の存在はとても貴重だろう。秋の大会へ向けて武藤はこう意気込んだ。
「去年はあと一歩で最後勝ちきれなかったので、全員で去年の悔しさも、夏は監督さんからいわれいたのですが、東海大菅生との東京決戦では、2時間かかって試合をして、リードしていたのに、たった5分で負けたんです。
出ていたメンバーも、ベンチ入りしていたメンバーもその悔しさを知っていると思うので、同じことを繰り返さないようにセンバツにいけるように意味にある大会にしたいと思います 」
選手たちの自覚によって名門復活の兆しを見せた帝京。真の復活はこの秋以降の戦いにかかっているだろう。
(取材=河嶋 宗一)
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