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3年生たちの高校野球の終わり方をしっかり見届けてあげようという西尾(愛知)

2020.06.11

3年生たちの高校野球の終わり方をしっかり見届けてあげようという西尾(愛知) | 高校野球ドットコム
写真は2018年春の大会から

 東西三河地区と名古屋市、尾張、知多と5地区に分かれている愛知県。今回の新型コロナウイルス感染拡大防止の影響による休校要請の対応も地区によって、あるいは学校によっても若干、異なっていたようだ。

 西三河地区の西尾は、3月は3週間ほどは休校したが、春休みに入って少し緩和されていた。しばらくの間は、短時間ながら活動出来たという。

 「その間にも、YouTubeなどでトレーニングのいいメニューがあったら、それを送ってやっておくようにということは伝えていたので、最初に練習再開された時も、ボールを持った動きはそれほど悪くはなかった。ただ、走者がついたりして実戦的になると、とたんに対応力が落ちていたのは痛感した」

 前任の吉良から母校に赴任して、この春で3年目となる田川誠監督は、3月の練習再開時の選手たちの動きをそう感じていた。

 ところが、4月の上旬に、政府から緊急事態宣言が全国に発せられて、再び学校そのものは休校措置となり、まったく活動が出来ない状況になってしまった。そうした状況が続くうちに、高校総体などスポーツイベントの多くが中止となっていくことも報じられた。

 田川監督は、「インターハイの中止が発表された時点で、野球部の生徒たちも夏の大会中止の覚悟は出来ていたのではないかと思う」と言う。だから、大会中止が正式に発表された段階では、それ程の動揺はなかったのではないかと感じたようだ。それでも、愛知県の場合は、いち早く代替大会を開催していくことが発表された。だから、そこへ向けての意識の切り替えということになった。

 ただ、進学校でもある西尾である。3年生は、全員進学希望であり、当然、受験勉強へ向けての準備もある。夏の大会が中止となったことで、一旦切れた思いをどうまとめていくのか。模擬試験や受験勉強との兼ね合いも出てくる。

 田川監督は、誤解を恐れずこう言う。
 「勉強は、いつでも出来るけれども、このメンバーと、高校野球をやれるというのは、今の時間しかないのだから、最後にこの仲間とやれるということを大事にしていってほしい。そこへ向かっていくことが、将来的には最大の財産となっていくはずだ」

 その思い3年生たちに伝えていった。主将が中心になって、ややバラバラになりかかった3年生たちの意識も、「もう一度、この仲間で一緒に野球をやろう」ということで、14人の3年生と2人のマネージャーたちは、再びしっかりとまとまっていった。

 そして、下級生たちに対しても、こう言っている。
「今回のことで、今まで当たり前にあったことが、いつどうなるのかわからないということを知らされた。まずは、夏のこの大会をしっかりと終えるまで、3年生の終わり方をしっかりと見届けていってほしい」

 指導体制としては、今春から、田川監督の恩師でもある愛知県高野連の鶴田賀宣副理事長が異動してきた。連盟の仕事や校務が忙しい中でも、時間を見つけてはグラウンドに顔を出して選手たちに指導してくれているという。

 「正直、これまでほとんど一人でやっていたみたいな状況だったのですが、鶴田先生が来ていただいて主に投手陣などに指導していただけることで、自分としては野手の指導に専念できるようにもなりました。それだけでも、全然違いますから、その成果を早く試してみたいんです」

 田川監督はそう、新たなチームの姿に期待を寄せている。

 高校野球をどういう形で終えていかれるのかということは、すべてのチームにとって、毎年のテーマでもある。ただ、普通にやれていた大会がやれなくなってしまった中で、それでも独自の大会を開催してもらえるという中で、どれだけ燃え尽きられるか。田川監督の異動と共に入ってきた生徒たちとのラストサマーは思わぬ形となってしまった。

 それでも大事な夏である。格別な思いで過ごしていくことになるであろう。

(記事=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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