甲子園19回出場の伝統校・倉敷工は言葉の力と日誌で心を繋ぐ
写真は2019年から
活動自粛を受けてグラウンドで練習ができず、選手と指導者との距離ができてしまった。しかし心の距離だけでも詰めようと、LINEなどを活用するチームが増えてきた。春夏合わせて計19回甲子園出場の倉敷工もLINEを活用している。
前々からミーティングの内容を言葉だけではなく、文字としても残すことで振り返られるようにしていた。また指導者から選手たちへの連絡事項を伝えるためにもLINEを使っていたが、今回の事態を受けて使い方に変化が出てきた。
「そもそも3月20日から4月7日までは自粛があって、4月中は1週間くらいは練習をしていました。ただ4月20日から5月末まで自粛となりまして、朝と夜にLINEを使うようになりました」
そう答えるのは、チームをまとめる髙田康隆監督。まず朝は「言葉の力」と呼ばれる、選手たちのモチベーションアップに繋がる言葉を選手たちに向けてメッセージを送る。
そして夜になれば、「7days」と呼ばれる、心技体の3要素それぞれで立てた1週間の目標を達成できているのか。その評価をしながら、1日の振り返りを3行にまとめる「3行日誌」をまとめて23時までに高田監督までに写真を撮って提出する。
チームとしてメンタルトレーニングとして3年前から取り入れ、さらに進化させたものが現在の形である。それを自粛期間中も継続しており、並行して選手間で決めたトレーニングメニューに取り組みながら活動再開を待っている。
グラウンドで練習できない日々が続くが、LINE上でのやり取りを通じて選手たちの成長を感じている。
「今年は『本物の進化』と言うのをテーマにしておりまして、選手たちはいい意味でピンチをチャンスに変えようと、テーマに沿ってよくやってくれています。文面だけですが、LINEにて7daysと日誌のやりとりを毎日する中で成長を痛感しています」
日々小さな目標を立て続けて達成していくことで、確実に大きな目標に近づく。そのプロセスが倉敷工にとっては、今回の自粛期間となっている。高田監督は「個人のスキルもですが、考える力も間違いなく伸びています。今までとは何かが違い、力がついてきたと思います」と手ごたえを感じている。
ただ、「焦りとか大会までのことを逆算するとどうなるのか」と言う一抹の不安は髙田監督の中にある。また3年生の進路に関しても、少しずつ気になってきているとのこと。それでも「選手たちが帰ってきたときに思い切って練習できるように準備したいです」と整備をして待っている状況。
今の取り組みが練習に繋がることを信じて再開を待つ倉敷工。それが確信に変わる日が一刻でも早く来ることを祈るしかない。
(取材=田中 裕毅)
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