News

「野球日誌」で、今をどう過ごしていくのか確認し合う葛飾野

2020.04.19

「野球日誌」で、今をどう過ごしていくのか確認し合う葛飾野 | 高校野球ドットコム
葛飾野ナイン(写真は昨年の春季大会 豊島学院戦より)

 新学期を迎えて、本来ならばフレッシュな気持ちで迎えられるところなのに、休校が続いて学校にすら行けない今。各校の野球部でも、それぞれの考えで工夫した取り組みを行っている。21世紀枠代表で甲子園出場も果たしたことのある小山台で責任教師も務めていて、昨春に葛飾野に異動し今季から、就任した才野秀樹監督は、小山台時代に福嶋正信監督から、「野球日誌を書くことで強くなった」ということを実感として学んだ。だから、「野球日誌」を継続させていこう、ということは考えていた。

 ことに、この休校による練習自粛という折にも、むしろ、「それだからこそ、日誌を書くことで気持ちを整理していこう」ということを実践している。
 「規則正しく、きちんと生活できているかどうかということの確認の意味もあります。LINEグループで提出してもらい、それで練習メニューも日誌で報告しています」

 現在は主にLINEでやり取りしながら、メールなどで伝えるというやり方だ。

 日誌は、学校から与えられた課題はもちろんのこと、家の手伝い、読書、睡眠時間、ランニングの距離、筋トレメニュー、学習内容などを整理して記載している。

 才野監督は、それぞれの日誌の写メが来ると、それをじっくりと読んでいくことにしている。一人ひとりの顔を思い浮かべながら、その日誌に目を通している。

 日誌には、学校から与えられた課題に対してどういう取り組みをしているのかということとは別に、自分の生活の中のことなども、自由に書いている。そこには十代の高校生の素朴で素直な感情も吐露されている。

 この「野球日誌」は原則として、野球だけではなく社会のこと、生活のこといろんなことを書いていくということにしている。それは、小山台の「野球日誌」もそうだったからだ。そして、才野監督も、その日誌を通じて小山台の選手たちが確実に成長していったことを目の当たりに見てきた。

 登校日に、老人が横断歩道を渡り切るまで、自動車が止まって待っていて、「ありがとう、助かりました」という言葉を伝えた老人の姿を見て、「人の役に立つことを積極的にやっていく」と、ふと目にしたことから、自分の意識を確認している記述もあった。

 また、故野村克也氏の名言を読んで、その感想や思いを一生懸命に綴った内容もあった。そんな葛飾野の選手たちの「野球日誌」の一部が、才野監督から私の方にも転送されてきた。そのほんの一部をここで紹介しておこう。

 「助け合うことは大事だと思う。だから、チームメイトが困っていたら自分が助ける。自分が困ったら助けてもらう助け合いでチームワークが作れると改めて理解している」

 「自分から進んでやるからこそ、何かが起こる。今、こんな自分がやれることをしっかりやっている。しかし、今出来ることを止めてしまったら現状維持どころか落ちていくだけ。今まで通り、一歩一歩踏み込んで粘って突き抜けていく。今出来ることはどんどんとチャレンジしていく。やけくそになって踏み出していかなかったらギブアップ=負けということ。少しでも前へ行く」

 「学校から新たな課題が出されて、多いなと思うこともあるが、本来ならば新学期が始まり授業がスタートしている。それを考えれば少ない方だ。そのことを頭に入れて課題だけでなく、自分で予習したりする。……自分の頑張り次第で変わる。よい方に成長できるように頑張る」

 「今日は、土手でキャッチボールをしました。緊急事態宣言は出ましたが三つの密を避けて体を動かしていく。やっぱりシャドウだけでは投げる感覚を忘れてしまうのでできるときにやっていく」

 「自分が一番心掛けているのは、OFFが続くからと言って(日誌を)書く量を減らさない事。確かにOFFにはあまり書く内容が続かないと思うが、この休み中、自分は書く前にはすごく悩んで今日書く内容を決めている。(中略)……もし、この日誌を書いていないと考えると今の自分はないと思う。これは残りの22人にも言えることだと思う。前にも言ったが、多くの高校は『野球ノート』だが、葛飾野は『野球日誌』。何のことを書いても良いし、技術面だけで書いても上手くはならない。日々の生活やニュースを書くことによって野球に繋げたり自分の人間力を上げたりすることが出来る」

 こうして十代の思いを、それぞれの言葉で吐露している「野球日誌」。その最後にはみんなこう書き添えている。
 “Every my last”

(取材=手束仁

関連記事
5月予定の高知県総体硬式野球競技も中止! 夏の高知大会は明徳義塾第1シード・高知ノーシードが濃厚に
センバツ優勝候補だった、中京大中京の今と覚悟
「夏のための活動自粛」。21世紀枠出場の帯広農の現在

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.23

春季関東大会でデビューしたスーパー1年生一覧!名将絶賛の専大松戸の強打者、侍ジャパンU-15代表右腕など14人がベンチ入り!

2024.05.23

【野球部訪問】鳥栖工は「練習の虫」のキャプテンの元で2年連続聖地を目指す

2024.05.23

【鹿児島NHK選抜大会展望】本命・神村学園、対抗馬・鹿児島実、2強の牙城を崩すのは?

2024.05.23

強豪・敦賀気比の卒業生は、日本大、東京農業大などの強豪大、2名の内野手がプロへ進む

2024.05.23

智辯和歌山の197cm右腕、和歌山東のプロ注目の強打者、公立校に140キロ超え右腕が続出!【和歌山注目選手リスト】

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.18

【秋田】明桜がサヨナラ、鹿角は逆転勝ちで8強進出、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】