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全中優勝からあと一歩届かなかった甲子園制覇 星稜・奥川恭伸の3年間

2019.10.01

 10月17日に行われる2019年プロ野球ドラフト会議。今年一番の目玉は何と言ってもこの男だろう。最速154キロの直球を投じながら、変化球、コントロールも一級品。今夏の甲子園では惜しくも準優勝に終わるも、U-18では圧巻の投球を見せた、星稜奥川恭伸だ。

 大船渡佐々木朗希と並び、いったい何球団がこの男に競合するのか注目が集まるが、ドラフト前に、奥川の3年間の歩みを振り返ろう。

全国優勝投手として星稜に入学

全中優勝からあと一歩届かなかった甲子園制覇 星稜・奥川恭伸の3年間 | 高校野球ドットコム
奥川恭伸(星稜)

 かほく市立宇ノ気中時代は軟式野球部で活躍していた奥川。中学3年夏の全国中学校野球体育大会(通称”全中”)では、見事優勝を果たした。今でこそ名実ともに世代トップとして誰もが認める投手になったが、中学生時代から「試合の流れとか大丈夫な回と危ない雰囲気の回の配分。ピンチの時にしっかり投げられるように配分を考えてやっていました。速い球とかすごい変化球とかじゃなくて試合全体を考えて勝てるピッチャーを目指していたんです」というのだから、当時から一歩先を行く投手だったことが分かる。

 全中優勝を手土産に、小・中とバッテリーを組んでいた山瀬慎之助とともに、名門・星稜の門を叩いた奥川は早々に頭角を現す。1年夏の石川大会で登板を果たすと、秋には故障した1年先輩の竹谷理央に代わって主戦格に。秋季石川大会を制すると、秋季北信越大会でも準優勝を果たし、翌春の選抜切符を掴んだ。

[page_break:2年春から4季連続甲子園出場の立役者に/U-18で見せた圧倒的な投球をプロの世界で]

2年春から4季連続甲子園出場の立役者に

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奥川恭伸の最後の甲子園は圧倒的な投球内容だった

  2年春の選抜では延長10回の死闘となった近江との3回戦で、6回途中からマウンドに上がると、4回2/3を1安打無失点に抑え込む好投を見せ、チームのサヨナラ勝ちに大きく貢献した。チームはベスト8まで勝ち進み、この選抜をきっかけに奥川の名が、全国の高校野球ファンの間に知れ渡ることとなった。

 優勝候補として臨んだ2年夏の甲子園では、2回戦で対戦した済美との試合で悲劇が。先発した奥川は4回を投げ1失点と好投を見せるも、投球中に右ふくらはぎをつってしまい、無念の降板。奥川の降板後に済美が追いつき、迎えた延長13回。タイブレークから済美に逆転満塁弾が飛び出し、悔し涙を飲んだ。

 2年秋の石川大会、北信越大会を制し、明治神宮大会準優勝。中でも北信越大会の松本第一戦では10者連続三振を記録するなど、さらなる進化を感じさせた。3年春の選抜では、2回戦で準優勝した習志野に敗戦。

 迎えた高校最後の夏、大会前からコンディションが心配された奥川だったが、寺沢孝多荻原吟哉寺西成騎らの踏ん張りもあり、石川大会を連覇。その後の甲子園では、本調子でないながらも決勝戦まで防御率0.00という驚異的なピッチングを見せ、悲願まであと一つというところまで迫った。しかし、春の選抜では3安打完封勝利を挙げた履正社打線に、11安打を浴び5失点。悲願はならなかった。

U-18で見せた圧倒的な投球をプロの世界で

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世界をねじ伏せた奥川恭伸(星稜)

 甲子園の後に行われた第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップでは、甲子園での疲労を考慮しファーストラウンドでは登板なし。そして、スーパーラウンドのカナダ戦で、世界が衝撃を受けた。

 7回を投げ2安打、21個のアウトのうち実に18個を三振で奪ったのだ。4番のディオダティにホームランを喫したものの、あとは完璧に封じ込めて見せた。特に圧巻だったのは7回だ。6回までに90球を投げており、105球に達すると中4日を空ける必要が出てくるため、次の登板ができなくなる。次の登板の可能性を残しつつ、リリーフピッチャーに中途半端な状況でマウンドを渡さないためには14球以内で7回を終える必要があった。しかし、国際大会という大舞台で、奥川はそれをやってのけたのだ。

 100球を越えてなお、ストライク先行で海外の打者をねじ伏せられる球威、コントロール、組み立てができる頭脳、それらを併せ持つのが奥川恭伸という投手なのだ。NPBなら菅野智之、MLBならジャスティン・バーランダーか、そのレベルの投球を観ているかのようだった。

 ドラフト会議では複数球団による競合が濃厚だが、来年はどこのユニフォームを着た奥川を観ることができるのか。今から楽しみが尽きない。

(記事=林 龍也

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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