160球の熱投でも余裕さを感じた東海地区屈指の本格派・前 佑囲斗(津田学園)
本気を出さない投球
前 佑囲斗(津田学園) ※共同通信
センバツ初戦に敗れ、勝利を目指す津田学園・前 佑囲斗が静岡戦で先発。160球を投げて、10奪三振、1失点完投勝利を収めた。
甲子園の大舞台でも自分のピッチングを最大限表現した。
本人は「40,50点」と厳しい自己採点。だが、140キロ前半の回転数抜群のストレートが外角、内角へズバリと決まる。次々と空振りを奪い、さらにアウトローいっぱいにストレートが決まる。
140キロ程度だった選抜と比べても平均球速は伸びており、進化の跡が見える。
さらに120キロ後半のスライダーの切れ味も鋭い。高低を使った投球は吉田輝星を思い出せさせるものだった。
だが、前は本気を出して投げたストレートはわずか4,5球ほど。
今日は7、8割程度の力で投げ、立ち上がりも6割程度だった。これは明確な意図がある。
「全力で投げたからといって、必ず良いストレートを投げられるわけではない。どこに行くかわからないので。だからコントロールを意識して投げていますし、僕は回転数の高いストレートを投げて抑えていきたい考えもあります」
そこで意識しているのは股関節。左足にしっかりと体重を乗せて投げる。だが、立ち上がり思うようなボールは投げられなかった。佐川監督から「上半身で投げている。下半身を使って投げなさい」と指摘され、股関節にしっかりと体重を乗せて投げることを意識。終盤でも145キロを計測するなど、力強い投球を見せた。160球投じたが、「僕の場合、投げたほうが、良い腕の張りといいますか、とても良い感覚で投げることができるんですよね」と試合後、お立ち台に挙がった前は落ち着きが感じられた。
実際に前は球数を投げて調整する。前日の6日では20球~30球ほど投げた。多い時は50球ぐらいも投げることもある。
現在、試合の球数だけではなく、練習の球数も議論されるが、前の場合、この調整の仕方が合っているのだろう。
次の相手は履正社に決まった。大会最多記録タイ1試合5本塁打を放っている強力打線である。
「履正社さんは本当に強い相手です。気が抜けないです。ただ自分は試合を重ねたほうが調子が出やすくて、三重大会でも最初の3回戦よりも決勝戦のほうが良かったです。中5日あるので、しっかりと調整していきたいです」
前にとっても、今年のチームにとっても念願だった甲子園の勝利。その成長はセンバツの悔しさだけではなく、センバツ後、高校日本代表候補の研修合宿で、レベルが高い投手たちが一生懸命取り組む姿を見て、大きな刺激を受けた。
「大きな刺激になりましたし、それが春から夏までの成長につながりました」
2回戦は1回戦に比べて地に足のついた投球ができる可能性はある。140キロ台のストレートに対し、抜群の対応力を見せた履正社打線に、前はどんなピッチングを見せるのか。真価が試される。
(記事・河嶋 宗一)
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