勝利と育成の両立を可能にした「状況に応じた野球」の追求 西京ビックスターズ(京都)【前編】
今年の文部科学大臣杯第10回記念全日本少年春季軟式野球大会を制した西京ビッグスターズ。これまでに5回の全国制覇を誇る名門軟式クラブチームで卒団生には駒月仁人(西武)や昨年に龍谷大平安のエースとして活躍した小寺智也(近畿大)などがいる。
全国大会で結果を出すだけでなく、卒団後も活躍している選手が多いのが特徴だ。勝利と育成を両立する強豪チームの取り組みは一体どんなものなのだろうか。
ボールを確実に転がす巧みな戦術が全国制覇に繋がった
ランナー三塁でしっかりとボールを転がす技術が全国制覇に繋がった
平日の午後4時過ぎ、学校を終えた選手たちが次々と練習場である[stadium]吉祥院公園野球場[/stadium]にやってきた。活動日は月曜日を除いた週6日で平日は4時頃から6時まで練習を行っている。
チームを率いる宮本英一監督は「野球を通じて体力、技術の向上が第一。野球ができることに感謝して、高校野球に繋がる基本的なことを中学でしっかりやることです」と指導の基本方針を語る。
実際に練習を見てみると野球の基本を叩きこむような取り組みが随所に見られた。まずはキャッチボール。肘を上げさせるためにめんこを投げるように上からボールを叩きつける動作を最初に行っている。こうした地道な努力を重ねることで、2年経てば綺麗な投げ方になっているのだという。
キャッチボールの後はシート打撃を行っていた。走者一塁でのバント、エンドラン、三塁に走者を置いてのエンドランといった小技を取り入れたシチュエーションを取り入れている。主将の甚田時斗(3年)はこの練習が春の全国制覇に繋がったと感じたという。
「優勝できたのは点を取れる時にしっかりと取れていたからだと思います。ランナー三塁でしっかりと転がすのは難しかったですけど、役に立ちました」
軟式野球は硬式に比べてボールが飛ばないため、得点が入りにくい。だからこそ少ないチャンスで確実に得点を奪うことが勝利に大きく近づく。
[page_break:『西京ビッグスターズの子は野球をよく知っている』]『西京ビッグスターズの子は野球をよく知っている』
西京ビックスターズの宮本英一監督
「状況によって野球は変わるので、状況を把握した守備や攻撃に関してもサインが出るとうるさく言っています」と、宮本監督は日頃から状況に合わせた野球をすることを熱心に説いている。状況に応じた野球を追求してきたことが日本一に繋がったのだ。こうした宮本監督の指導は高校の指導者からの評価も高い。
「色んな高校から『西京ビッグスターズの子は野球をよく知っている』と言って頂けます」
そう言って宮本監督は胸を張る。中学時代に野球の基礎・基本を叩きこまれた選手たちは高校でも指導者の意図を理解してレギュラーを掴み、公式戦で活躍している。その代表格が昨夏の甲子園で龍谷大平安のエースとして活躍した小寺だった。宮本監督は小寺についての印象をこう語る。
「あの子は頭のいい子ですね。野球の理解力が非常に高かったし、自分でも考えてチームを引っ張れる子でした。あの子に関しては入ってきた時から能力の高い子だと思っていました。ウチのピッチャーの中では一番良いピッチャーでしたね」
BFA U-15アジア選手権で侍ジャパンに選ばれるほど能力の高かった小寺だが、才能に頼ることなく考えて野球に取り組んできたことが高校の活躍にも繋がった。龍谷大平安も練習から野球に対する高い理解力を求められるチーム。その中で主力として活躍できたのは中学時代の練習の賜物だ。
前編はここまで。後編では現在のチームの状況やOBの活躍について伺いました。後編もお楽しみに!
(取材・馬場 遼)