監督の最後の夏を1秒でも長くするため、バッテリーを中心に粘りの野球で勝ち上がる!都立紅葉川(東京)【後編】
前編では春の都大会で躍進し、シード権を確保した都立紅葉川に迫り、現在進んでいる改革や練習方法などについて話を聞いた。後編ではチームのキーマンにも話を聞きながらさらに深堀をしていく。
客観的に見ても、「いい雰囲気で練習やっているんじゃないの」と思えるチーム 都立紅葉川(東京)【前編】
センスを磨くために練習量をこなす
紅葉川を支える砂川君、田中君の両投手
現在の練習では、基本的に打撃練習は朝練習でこなすこととしている。グラウンドは決して広くはないが、週2回は7カ所バッティングというのが定番で、さまざまな形のティや手投げのフリー打撃を2人一組で取り組んで徹底的に振っていくという形だ。こうして1日300スイングくらいはこなしている。
「バッティングはセンスだというところもあるけれども、センスのない者は、何本も振って自分のスイングを作っていくことで少しはセンスを上げていかれる」という田河清司監督の考え方もある。
木曜日はサッカー部が全面使用ということになっているが、それ以外の午後の練習はキャッチボールと体幹強化ストレッチの後は、主にランダウンプレーと投内連係の練習でこれを何班かに分けて回していく。これは、守る側はもちろんのこと、走者を務める選手にとっても大事な練習になる。
投内連係プレーも含めて、紅葉川の練習では女子マネージャーがストップウォッチ片手に一つのプレーが終わるごとにそのタイムを大声で伝える。これは、チームとして「甲子園目標タイム」というのを設定してあり、それを目標としているからだ。
「ゆっくりやっていると、誰もミスをしていないのにセーフになってしまう。だから、一つひとつのプレーで目標タイムを決めて、常にそのタイム以内で行うことを心掛ける」ようにするためだ。
こうして、野手陣が1球ごとに緊張感をもって練習に取り組んでいるときに、投手陣はグラウンドの2カ所にあるブルペンで投げ込みをしている。一つは野球グラウンドの横だが、もう一つはサッカーグラウンドの奥にあり離れているのは、学校の構造上仕方のないところか。
「なんだかんだ言って、やっぱりバッテリーのチームです。特に投手は2人エースという感じでやっています」
と田河監督はチームを分析している。その2人エースとは田中颯君と砂川勇起君だ。
「明るく元気に」を前面にラストサマーを少しでも長く!
紅葉川集合写真
田中君は、新チームが出来たときから、「試合を一人で投げ切る体力をつけること」を目標としてきた。そして、技術的には「ストレートを内と外に投げ分けられることと、変化球でいつでも取りたいときにストライクを取れるようにしていくこと」を目標としている。
ブルペンでの練習の時から、高めに抜けていく球をなくしていくことを心掛けている。そのためには、より打者に近いところでリリースしていくことだという。そういうことを意識しながら投球練習に取り組んでいる。メンタル面では、「味方がミスをしても動じることなく投げられるようにしていく」ことを心掛けている。
一方、砂川君は「しっかりしたフォームで投げること」を目標として、苦しい時にも粘り強く投げていくことを心掛けている。春季大会では、本大会では主として投げたのだが、「昨夏の大会で負けた小山台に負けてしまったので、ベスト16でシードは得られても達成感はない」と、厳しく見つめている。
「長いイニングをしっかりと投げられるようにしていきたい」という目標を持って、ポール間のダッシュなどで体力強化にも努めている。
そんな投手陣をリードしていくのが主将でもある鈴木大凱君だ。
主将として、「秋の大会は今までで一番屈辱的な負けを経験したので、その汚名を返上しようという意識で冬の練習に取り組んできた」のだが、「特に、声を絶やさずに出し続けて、チーム全体の志気を上げていくことに拘った」という。
春季大会では、その成果はある程度は出せたのだが、「目標としていたシード権は獲得できたのは嬉しいけれども、昨年夏も負けた小山台には悔しい負け方をしたので、今は夏の大会へ向けて、どうやったら勝てるのかということを常に考えながら練習している」と言う。
夏へ向けて、具体的には、「全員がバットを短く持って、どんなボールでも喰らいついて行き、簡単には終わらない打線にしていく」ことを目指している。
チームとしても、田河監督と過ごす最後の夏へ向けて、「明るく元気に」という気持ちを前面に出しながら、全体の意識は高まっている。
(取材・手束 仁)