キューバ遠征の経験をアドバンテージにできるか?狙うは日本一のショート!成瀬脩人(東海大菅生)【後編】
昨秋、東京都大会で攻守で大活躍を見せた成瀬脩人(東海大菅生)。後編では大きな経験となったキューバ遠征をメインに語っていただき、そして今年にかける意気込みを聞いた。
名手の系譜を受け継ぐショートストップ・成瀬脩人(東海大菅生)【前編】
キューバで味わった洗礼を糧として
インタビューに答えてくれた成瀬脩人
秋季東京都大会後の数か月には、成瀬をさらに成長させる機会があった。
秋季東京都大会決勝後の翌日、東京代表のセレクションでは木製バットでの練習期間はわずか0日で、左中間へ鋭い打球を連発。多くの選手が木製バットの対応に苦しむ中、成瀬の完成度はずば抜けていた。成瀬とともにセレクションを受けた他校の選手たちは「成瀬君は凄いです」と口をそろえたが、練習期間がない中でこれほどの打球を放つのだから、改めて野球センスの高さを発揮した場面でもあった。
木製バットで強い打球を打つために意識していることを聞くと、
「木製バットは芯となる場所が金属バットと比べて狭く、なかなか飛びません。僕の場合はなるべく詰まらせないことを意識しています。ポイントを前にして、腰を鋭く回転させて打ち返すことを大事にしています」
また成瀬の一番の武器であるリストの強さも相まって、木製バットでも長打を打てるレベルとなっていた。
こうして攻守の総合力の高さを評価されて、東京代表入りを果たした成瀬はショートとして5試合にフル出場。成瀬は天然芝でグラウンドもボコボコのキューバのグラウンドに苦しんだ。
キューバへ遠征した時の成瀬脩人
なかなか足が動かないので、前にいくことができない。日本にいるときの成瀬は動きながらボールを合わせているが、この時の成瀬は足が止まって打球を待っているので、当然、バウンドが合わない。結果的に、エラーも日本にいたときよりも非常に多く、なかなか見られない一面だった。
「キューバの選手が打つ打球は力強くて、グラウンドもボコボコ。エラーしたら、足が出てこないですよね…。だからエラーが多かったと思います」
エラーすれば成瀬といえども、なかなか切り替えられるものではない。成瀬はキューバの洗礼を味わいながらも、どうすれば守れるかを考え抜いた。そこで考えたのがポジショニングだ。
「打球が力強く、東京代表の投手はコントロールが良いので、三遊間寄りの打球が多かった。なので、最終戦ではそこで守ることにしました」
最終戦では安定した守備を披露。チームの勝利に貢献した。苦しみながら、フル出場したキューバ遠征の経験は大きかった。シーズン開幕へ向けて、攻守で磨きをかけている。
[page_break:目指すはもちろん侍ジャパンU-18代表ショートストップの座]目指すはもちろん侍ジャパンU-18代表ショートストップの座
暁星国際戦の成瀬脩人
日本に帰った成瀬は守備面で「前へ動く」ことを意識して、ノックに取り組んできた。その成果は最初の練習試合で発揮した。
暁星国際戦では、いきなり前方へ転がった打球を猛然と突っ込んで、打球を捌いてアウト。さらに、ランナー一塁の場面では、三遊間寄りに鋭い打球が飛ぶ。誰もがヒットと思った打球を逆シングルで追いつき、そのまま体を回転した勢いでスナップスローでアウトを決めるファインプレーを見せた。
成瀬は「前方のゴロをアウトにすることは、日本に帰ってきてずっとテーマにしてきたので、それができて良かったと思いますし、三遊間寄りの打球は捌くのは得意なので、良かったです」と納得の笑顔を見せた。
また打撃はパワーアップしている。その証拠として、成瀬のスイングスピードを紹介しよう。
成瀬脩人の計測結果
今回はミズノ社の計測アプリ「スイングトレーサー」を使い、成瀬のスイングスピードを計測したところ、157.6キロを計測。ヘッド角度はマイナス22.4°と、インパクト時、ヘッドがグリップより下にある。このことからわかるのは、成瀬はヘッドスピードが高くヘッドが下がった状態でボールをインパクトしており、またスイング軌道は12.1°と、少しアッパー気味のスイングとなっており、長打が多い理由もうなづける。
また、右打者でヘッド角度が大きくマイナスになる選手は右方向へ強い打球が飛びやすくなるが、成瀬は右方向への長打も多い。
成瀬は「スイングスピードが速かったのは自信となっています。ただ実戦から離れていたので少しずつ感覚を取り戻して、自分がテーマとしている甘い球を一発で仕留める打撃を追求していきたいです」と今年の打撃のテーマを語った。
打撃、守備を目指す中で、成瀬が目指すのはもちろん日本一のショートだ。
「守備ではノーエラーを目指し、打撃では勝負強い選手になりたい。同世代のショートは意識していて、八戸学院光星の武岡龍世君、東邦の熊田任洋君の2人は刺激になっています」
成瀬はキューバ遠征という同世代のショートにはない経験をしており、それは大きなアドバンテージとなるだろう。ライバルとの競争に勝ち、侍ジャパンU-18代表のショートストップとなり、再び世界の舞台でグラウンドを縦横無尽に駆け回るつもりだ。
文=河嶋 宗一