強豪私学の前に敗れて気づいた凡事徹底の大切さ 白岡(埼玉)【前編】
全国屈指の激戦区である埼玉県。その埼玉で過去に夏の埼玉大会で決勝進出、昨秋の県大会では初戦で南埼玉代表・浦和学院を破った県立高がある。その学校が今回の訪問先である白岡高校である。
昨秋から監督が変わり、新体制となった大会でいきなりジャイアントキリングをやってのけた白岡。2019年の埼玉で要注目の学校を直撃した。
春日部共栄に喫した悔しい敗戦
ランニングをする白岡の選手たち
前任の鳥居 俊秀監督は、2015年に夏の埼玉大会で決勝戦までチームを導くなど、実績を残してきた。その監督が昨夏の大会を最後に退任。新チームの指揮官として、高橋勝也監督が就任した。
高橋監督に新チーム当時の様子を伺うと、
「3年生たちは2015年の夏の決勝を中学3年生の時に見てウチに入学してきました。ですが2年生はその後に入ってきたので、3年生とはモチベーションやレベルが違う。ガクッと落ちてしまい、(3年生たちとは)差があるな、と思いました。」と不安の船出となった。
そうした中でまず高橋監督が着手したのは、練習量を増やすことだった。
「練習試合をしてもなかなか勝つのはむずかしいと思ったので、ひたすらノックやバッティング、そしてシートバッティングで選手それぞれの基礎の向上を図りました。」
鳥居前監督時代は例年、毎日のように練習試合があったが、高橋監督は3分の1くらいにまで減らした。
それが結果として秋の躍進につながったと高橋監督は考えるが、それ以上にチームへ大きな影響をもたらしたのが、春日部共栄との新人戦だった。
「(春日部共栄戦は)大敗を予想していましたが、それよりも内容がひどかったです。見えないエラーが10個くらいありました。自分としては7回、もしくは9回までやりたかったのに、結局15対1で5回コールド。非常に情けなかったです。」
春日部共栄との一戦を振り返ったのち、続けてこう語った。
「試合後に何が原因で、何をやらないといけないのか、選手に話しました。試合を反省して、敗因を説明したところ、それがキッカケで選手たちの気持ちが変わってきました。
無欲になれ!
指導者の話を聞く選手たち
ではどのように気持ちが変わったのか。さらに詳しく聞いてみると、
「勝ちに対して気持ちが向いてきたというか、気持ちが強くなってきたのか、勝ちに貪欲になったと思います。前までは、相手を見て勝てるわけがないという雰囲気が出てくる時がチームにありました。
実際に新人戦の抽選会で春日部共栄に決まった時に、いくらやっても勝てるわけがない、という雰囲気がありました。けど試合の後に、『こうやれば勝てるんだよ』と説明をすると、その雰囲気は変わっていきました。」
チームの4番に座る松永一洸選手は、「チームが全然まとまっていませんでしたし、基礎もできていなかった印象です。」と春日部共栄戦前のチーム状況を語り、「監督から、『このままじゃあ勝てないから、1人1人の底上げをしないといけない。』と言われ、基礎を繰り返すようになりました。」とチームの変化を語る。
春日部共栄相手に、もう少しエラーを少なくし、ピッチャーが四球を出さない。攻撃であれば、出たランナーをバントで送って返すことができれば勝てることを、大敗を通じて選手たちに伝えた高橋監督。
では選手たちにどんな声を掛けたのか。
「高校生って欲の塊だと思っているので、強豪校の選手であれば“自分は打てる、抑えられる。遠くに打球を飛ばしたい。真っすぐで勝負するんだ”と考えると思います。ウチの選手にはそれをやめなさいと言いました。
バッティングだったらとにかくセンター返し。ピッチャーは変化球を磨く。そういうことを教えました。」
それが秋の結果につながった一番の要因だと高橋監督は話す。
前編はここまで。後編では、浦和学院戦を振り返りつつ収穫や反省。そして春への意気込みを伺いました。後編もお楽しみに!
(文・編集部)