消化吸収を助ける「噛む力」
食事の時間には余裕を持って、よく噛む習慣をつけよう
食事はアスリートのコンディションを支える大切な要因です。体づくりに欠かせないタンパク質をはじめ、エネルギー源となる炭水化物、体の調整薬となるビタミン・ミネラル分などなるべく栄養バランスの良い食事をとることは普段から意識する選手が多いと思います。一方で、意外と忘れがちなのが食べものをよく噛んで食べる「咀嚼」について。短い食事時間で、食事をあまり噛まずに飲み込むようにとってしまった経験もあると思いますが、よく噛んで食べることはパフォーマンスにも影響を及ぼします。よく噛んで食べることのメリットとしては「唾液を分泌し、胃腸での消化・吸収を助けること」や「虫歯の予防」、「咀嚼回数が増えることによる脳への刺激」などが挙げられます。
体を動かしているときは血流は筋肉により多く流れ、その他の器官には血流が抑えられるようになります。運動中はいつもより消化吸収能力がやや低下している状態といえるでしょう。そこにあまり噛み砕かれていない食べものが次々と胃に送られてくると、大きな塊を消化するのに時間がかかってしまうことになります。パフォーマンスアップのために食べたものが、いつまでたっても胃腸で消化吸収されない状態を想像してみましょう。栄養バランスを考えた食事であってもエネルギー源は不足し、「しっかり食べたのに思うように動けない…」といったことも考えられます。
特に昼食をとった後の午後の練習などは、胃や腸などの消化管に血流が流れやすく、筋肉への血流が十分に行き届いていないため、激しい運動をするとお腹が痛くなったり、筋肉のけいれんを起こしたりといったトラブルに見舞われるケースも見られます。食事をよく噛んで食べることは消化管の働きを助けることにつながるため、毎日の食事から「よく噛む」意識を高めることが大切です。
文:西村 典子
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