星稜vs高松商
攻守に充実感示した星稜が、1994年以来の決勝進出
奥川恭伸(星稜)
今大会では最速投手として評価されている奥川恭伸君がいる星稜。大会注目度ナンバー1といってもいいだろう。9回に、3人目として送り出した荻原君が3ランを浴びたものの中盤に大きなリードを奪っていて危なげなく勝ち上がって、若狭徹のいた1994年の第25回大会以来の決勝進出を果たした。
初回に星稜は一死で2番東海林君が四球で出ると、すぐに二塁盗塁して、シュアな千田君が一二塁間を破って先制。同点とされた直後の3回には東海林君が右越ソロを放って突き放す。さらに知田君の中越二塁打と5番に入っている奥川君の中前タイムリー打、7番岡田君の右前タイムリー打などでこの回3点。
4回には、一死満塁から奥川君の右犠飛、6回にも左中間二塁打で出ていた知田君を奥川君が後送翼二塁打として左中間への一打でリードを拡げていった。星稜打線では3番の知田君のバットコントロールの巧みさが光っていたが、奥川君もこの日は3打点で5番打者として、大事なところでクリーンアップとしての役割を果たして投手としてだけではなく、打者としても非凡なところを示していた。
点差が広がったということもあって、星稜の林和成監督は、「奥川以外の投手も、こういう舞台で投げさせて経験を積ませたかった」という思いで、8回は寺沢君、9回は荻原君が任されたが、荻原君は四球で走者をためてしまい、出あい頭的に新居君に3ランを浴びた。このあたりは、打たれたという経験の中で、次回へ向けて学習していくテーマとなったかもしれない。
高松商の長尾健司監督は、「完全に力負けです。全国の舞台でこういう相手と戦えたことで、力の差があるということを改めて分かった」と脱帽していた。それでも、「来年、甲子園で戦わせてもらえるのであれば、それまでに自分たちは何をしていかなくてはいけないのか、それぞれ分かったのではないか」と、負けを糧としてこの冬に成長していくことに期待をこめていた。
試合展開としては快勝といってもいい星稜だったが、林監督は、「左の香川君が先発で来ると思っていたが、右の中塚君が先発してちょっとビックリしていたのだけれども、選手たちはそれぞれ工夫してしっかり対応してくれた」と、選手たちの対応力の高さを喜んでいた。また、奥川君に関しては、「中1日逢って、練習の状態を見ても悪くなかったので、しっかり投げてくれると思っていた。ここというところは、しっかり投げてくれていた」と、評価していた。通常は7分程度の力で投げながらも、スコアリングポジションに行かれたらしっかりとギアを上げていく、投球スタイルの緩急のつけ方も、大人の投球といっていいものである。改めて、投手としての質の高さを全国に示したと言っていい。なお、この日の最速は7回にマークした149キロだった。後半でそれだけの数字を表示できるというところに、スタミナもあるということを示しているとも言えよう。
(文=手束 仁)