試合レポート

国士舘vs東海大菅生

2018.11.04

初回に命を懸けた国士舘、先行逃げ切りで東海大菅生を下し、10年ぶり6回目の優勝

国士舘vs東海大菅生 | 高校野球ドットコム
国士舘ナイン

 この大会で東海大菅生のエース・中村晃太朗の安定した投球は、群を抜いている。左腕投手独特の制球の乱れもなく、危なげのない投球をしている。ただし初回だけは、3回戦の二松学舎大附戦以外は走者を出しており、付け入る隙があるとすれば、立ち上がりということになる。国士舘のベテラン・永田昌弘監督は、「初回に命を懸けて点を取ってこい」と言って選手を鼓舞し、選手も応えた。

 1回表国士舘は一死後、2番の渡辺伸太郎が粘って四球となる。3番・冨田洋佑は三振に倒れるものの、途中暴投があり、渡辺伸は二塁に進む。東海大菅生には珍しいバッテリーエラーだ。

 続く4番・黒澤孟朗は、低い姿勢から左前安打を放ち、渡辺伸が生還し、1点を先制する。さらに5番・森中翼の投ゴロで一塁ががら空きになり、内野安打となる。これまで守備の連係も含め隙がなかった東海大菅生であるが、決勝戦の緊張もあるのか、動きがやや硬い。中村晃は、6番・澤野智哉も四球で歩かせ、二死満塁となった。打席には準々決勝以降、やや勢いはなくなっているものの、大会の序盤は打撃好調であった1年生の鎌田州真が入る。「今までチームに迷惑をかけていたので、気持ちを強く持って打席に入りました」という鎌田。「変化球を狙っていました」と言う初球のスライダーを逃さず叩くと、打球は右中間を破る三塁打となり、満塁の走者が生還。国士舘は1回表に4点を先制した。

 国士舘は2回表に一死後、1番の黒川麟太郎が中前安打を打ってから、当たりが止まる。しかも安打性の打球があっても、東海大菅生の二塁手・石田隆成らの好守にあって出塁できない。東海大菅生の中村晃は、3回から9回までは1人の走者も出さないパーフェクトな投球を繰り広げた。

 そして東海大菅生は、3回からは毎回安打の猛攻で、国士舘の先発・白須仁久を攻め立てる。

 5回裏には6番・中村洸星、7番・大里大也の連打に、8番・鈴木舜太郎の犠打で一死二、三塁とし、9番・中村晃の右前安打で2点を返した。

 6回裏も、この回の先頭である4番・杉崎成のレフト線の二塁打に2四球があり二死満塁となったが、またも好機で打順が回ってきた中村晃は、今度は遊ゴロに倒れる。


国士舘vs東海大菅生 | 高校野球ドットコム
ピンチを切り抜け雄たけびを上げる山崎晟弥

 7回表からは、国士舘の投手は山崎晟弥に代わる。

 東海大菅生の追撃は続き、8回裏は5番・成瀬脩人、6番・中村洸の連打に、7番・大里の犠打で一死二、三塁とし、8番・鈴木は投ゴロに倒れたものの、打席はまたしても中村晃が立つ。中村晃は三ゴロであったが、国士舘の三塁手・山田裕也が一塁に悪送球で、1人生還。1点差に迫る。

 9回裏東海大菅生は2番・今江康介、3番・小山翔暉が倒れ二死。4番・杉崎は左前安打で反撃したものの、5番・成瀬が中飛に倒れ、ゲームセット。国士舘が追いすがる東海大菅生を振り切り、10年ぶり6度目の優勝を決め、来年春のセンバツ出場をほぼ確実にした。

 試合終了後国士舘の永田監督は、「スタートした時は、国士舘史上最低のチームでした。ここまでこれたのは、奇跡に近いという思いです」と、感慨深げに語った。エースの石井崚太をはじめ、メンバーがごっそり入れ替わり、新チームには絶対的なエースや軸になる打者がいるわけではない。それでも試合ごとにヒーローが変わり、チーム力を高めていった。永田監督は一昨年に11年ぶりに高校の監督に復帰した。その間、高校生の気質は大きく変わった。自分自身を「ほめ下手の監督」と言う永田監督であるが、選手の信頼をしっかり得て、チーム一丸となっての優勝であった。

 一方敗れた東海大菅生は、全国レベルで戦える戦力が整ったチームであった。しかし「初回の4点が誤算でした」と若林弘泰監督が語るように、あの4点が重すぎた。「ひと冬超えれば、いいチームになる。あとピッチャーが中村(晃)1人なので、育てていきたいと思います」と若林監督。決勝戦で敗れたことで、センバツ出場は不透明になったが、甲子園での活躍を是非観たいチームである。

(文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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