試合レポート

桐蔭学園vs常総学院

2018.10.21

9回にドラマ!桐蔭学園の主将・森が逆転サヨナラ満塁本塁打!!

桐蔭学園vs常総学院 | 高校野球ドットコム
好投を見せる伊禮(桐蔭学園)

 今大会の優勝候補・常総学院が登場した。夏を経験している選手が多く残り、茨城県大会では圧倒的な差で勝ち上がってきた常総学院。また、シートノックを見ても一歩目に対する動き、肩の強さ、スピードが違う。

 しかしそんな常総学院に立ちはだかったのが、桐蔭学園の先発左腕・伊禮海斗(2年)だった。伊禮は一言でいうとじれったさを持った投手だ。ストレートのスピードは常時120キロ後半~130キロ前半と決して速くないのだが、両サイドに決まる。また投球フォームを見ると、右足をしっかりと上げてから、インステップ気味に踏み出していきながら、内回りのテークバックからリリースに入るまでの動きがきれいな投手。うまく脱力ができており、リリースに入る瞬間に一気に体を回転させ、打ちにくさを生む。またフォームのタイミングが一定ではないので、対処がしにくい。さらに110キロ台のスライダー、90キロ台のカーブを織り交ぜていく。この90キロ台のカーブに対し、常総学院の打者たちは腰砕けになり、タイミングがとれていなかった。

 その伊禮を援護するように、打線は2回裏に押し出しで1点を先制すると、6回裏には5番川久保 瞭太(1年)がストレートをとらえ右中間を破る適時二塁打で1点を追加。川久保は三塁守備を見ていてもかなり鍛えられており、攻守で優れた1年生だ。

 だが7回表、常総学院がついに反撃。一死一、三塁のチャンスから8番大髙 優成(2年)が高めに入った直球を見逃さず、レフトへ逆転3ラン。打った瞬間、本塁打と分かる素晴らしい当たりだった。大高は184センチ78キロの右のスラッガー。この選手が8番に控えているのだから、恐ろしい。さらに1番斉藤勇人(2年)の適時三塁打が飛び出し、4点目を入れ、伊禮は降板となった。その後、1点を入れて、5対2に。改めて常総学院打線の恐ろしさを見せた7回表となった。

 ただ常総学院は2番手の菊地 竜雅(1年)が誤算だった。180センチ79キロと恵まれた体格を誇り、県大会でも140キロ中盤の速球を投げ込んでいたが、状態が良くないのか、メカニズムの狂いが見える。テークバックに入ってからリリースに入るまでの動きが良くなく、球離れが早いフォームとなっている。常時135キロ~140キロの速球を投げ込んでいたが、どうもリリースが安定しない。8回裏に四球を出したところで交代。3番手・中妻 翔(2年)がしのぐ。


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サヨナラ本塁打に喜ぶ桐蔭学園ナイン

 しかし9回裏、中妻の制球が安定せず、満塁のチャンス。ここで常総学院和田 流希哉(2年)が登板するが、和田は130キロ前後の速球、スライダーでしのぐ投手。ただ絶対的な球威がないので、スライダー一辺倒。1番冨田 健悟(1年)を見逃し三振を奪ったところまではよかったもの、次打者はエラー。桐蔭学園は1点を返し、ノリノリの雰囲気。打者はここまで無安打の森 敬斗(2年)。ただ森はこの打席での集中力が違った。高めに入ったストレートを見逃さず、サヨナラ逆転満塁本塁打で試合を締めくくった。

 まさかのどんでん返し。選手のポテンシャルでいえば、常総学院が上回っていたところがあるだろう。だが、桐蔭学園は土壇場で粘りを発揮した。これまでの戦いを振り返ると、慶應義塾桐光学園などのライバル私学に押されていた感はあったが、一気に光が差すような勝利であった。

 サヨナラ本塁打を放った森はスイングを見ていると無駄がなく、手元で押し込む強さがあり、何より守備が素晴らしい。シートノックよりも実戦でフットワークの軽さ、肩の強さを発揮する選手で、この試合でも間一髪のあたりをアウトにするなどチームのピンチを救った。この活躍を続ければ、田畑秀也茂木栄五郎柿崎 颯馬といった近年の桐蔭学園でもトップレベルの実力を持った左打者に並ぶ可能性を秘めている。いずれにしても今後が見逃せない打者である。

 常総学院はパワーを発揮したが、投手陣は関東大会に出てくるチームと対すると力不足が否めない。その力不足は球速、変化球、投球術。そして精度が高いピッチングを実現する投球フォームに課題があるということ。

 この秋はエース候補・塙 雄裕がベンチ外と、苦しい中でも選抜出場ラインの関東大会ベスト4を確保してチーム力をつけたい常総学院だったが、改めて根本的に投打で実力をつけなければ全国に勝ち進めないと痛感した試合となった。

(文・=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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