試合レポート

都立永山vs都立杉並工

2018.07.12

灼熱の激戦、都立永山サヨナラ勝ち!都立杉並工・高橋力尽きる

 

 試合が始まる午前10時ごろには、真夏の太陽が照りつけ、球場はうだるような暑さになっていた。

 

 都立杉並工は、夏の大会は第90回大会を最後に勝ち星がなく、ここ2年は1点も取れずに負けている。さほど実績のないチームであるが、昨年都立府中工の監督を務めた井上裕士が監督に就任して変わり始めた。練習が厳しくなり辞めた部員もおり、春は派遣選手を加えて臨んだ。それでも残って野球を続けた部員に加え、1年生4人が加わり、夏の大会は単独チームで出場することができた。

 

 対する都立永山は、5年前に佼成学園に大勝したこともある都立の実力校の1つだ。実績では永山の方が数段上回っている。

 

 しかし試合開始早々、杉並工が攻勢に出る。1回表2番・市川陸が三失で出塁すると、主将でエースで3番打者というチームの柱である高橋北斗が左中間を破る三塁打を放ち1点を先制する。高橋も5番・中嶌大我の左前安打で生還し、杉並工が初回に2点を先制する。

 

 杉並工の攻勢は2回表も続き、中前安打で出塁した7番・吉野敬吾は、1番・宮岡泰基のレフトオーバーの二塁打で還り、リードを広げる。

 

 杉並工の高橋は、走者を出しながらも、永山に得点を与えない。ところが、猛暑の中の試合で、4回頃から足が吊り始める。投球にも明らかに影響があり、4回裏一死から永山の6番・小野海晴がライト線に三塁打を放ち、7番・飯塚優翼の遊ゴロの間に生還する。

 

 一方、立ち上がり不安定で杉並工に痛打された永山の大野意武喜は、中盤から投球のバランスが良くなり、立ち直る。そして7回裏永山は、この回先頭の9番・古山大輔が中前安打、続く1番・山下悠がレフト線に二塁打で無死二、三塁とし、2番・長田圭史の打球は二塁手の後方にポテンと落ちる適時打になった。杉並工とすれば、このポテンヒットが痛かった。足が吊りながらも、必死の投球を続ける高橋であるが、4番・平松龍也の中犠飛で、永山が同点に追いつく。

 

 それでも回を追うごとに満身創痍の状態になりつつある高橋を、守備陣も、華麗さはなくても懸命に打球を追って好守備もみせ、高橋を盛り立てる。

 

 8回裏永山は7番・飯塚が四球で出塁すると、二盗を試みたが刺される。すると飯塚も二塁ベース上で足が吊った。暑さは永山にもダメージを与える。

 

 足が吊って踏ん張りがきかない中、限界ギリギリの投球を続けていた杉並工の高橋であったが、9回裏には、限界に達していた。
高橋は3人続けて四死球を与え無死満塁となり、永山の3番で主将の落合翔の左飛で三塁走者が生還し、猛暑の中の死闘は4-3で永山が勝利した。

 

 敗れはしたが、高橋が気力を振り絞って投球する姿は、胸を打つものがあり、後輩たちにも強い印象を残したであろう。3年生が抜けると部員が8人になり、秋は単独での出場は困難になるが、この試合は、杉並工野球部の新たな歴史のスタートになるのではないか。

 

 激戦を制した永山は、次は強豪・日大鶴ヶ丘と対戦する。春は二松学舎大付に大敗した永山であるが、この夏は、結果を恐れず、思い切りぶつかってほしい。

 
 

 (文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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