日大三vs習志野
日大三、投打に習志野を圧倒 7回コールド勝ちで準決勝進出
好投を見せる中村奎太(日大三)
日大三vs習志野との一戦。実は7年前の千葉開催の関東大会でも対戦しており、その時は習志野が勝利している。
だがこの試合は日大三が投打で圧倒する形となった。
試合は2回表、一死一塁から7番前田聖矢(2年)がライトポール直撃の弾丸ライナーで2点を先制する。前田は元プロ野球選手・前田幸長氏の息子。前田氏が会長を務める都筑中央ボーイズで腕を磨いた前田は、日大三へ進み、もともとは内野手だが、打力の高さで外野手でスタメンの機会をつかんでいる。最短距離でボールを捉えることができる技術の高さがあり、高レベルな左打者だ。
日大三の先発・中村奎太(3年)は、最速142キロのストレート、130キロを超えるカットボール、125キロ前後のスライダー、120キロ前後のフォークを両サイドへ散らせる投球。3回までパーフェクト7奪三振と圧巻のピッチング。
しかし4回裏、習志野の1番角田勇斗(1年)に死球を与えてしまい、パーフェクトが途切れると、二死二塁から4番岡 尚吾(3年)がスライダーを打たれて中前適時打で1点を失ってしまう。
追加点を入れたい日大三は5回裏、二死一塁から2番柳沢 真平(3年)がストレートを捉えて右中間を破る適時三塁打で1点を追加。
ここで習志野は投手交代。先発・飯塚 脩人(2年)が降板し、今大会、背番号1をつける技巧派右腕・佐藤 将聖(3年)が登板する。
日大三打線は佐藤に代わっても攻撃を続け、3番日置 航(3年)が甘く入ったスライダーを逃さず左前適時打を放ち、1点を追加する。
5回裏、 日大三は内野ゴロの間に1点を失うが、6回表、日大三打線が一気に畳みかける。一死満塁のチャンスを作り、打席に立ったのは9番佐藤英雄(2年)。
ここで習志野守備陣は追加点を与えないために、前進守備を敷いた。
話し合う日置主将と中村奎太(日大三)
佐藤英雄は内角直球に詰まりながら、中前適時打で2点を追加。もし定位置ならば捕られていた当たりだったが、日大三の勢いが生んだ2点である。その後、習志野の3番手・古谷拓郎(3年)から1番金子 凌(3年)の適時打、敵失も絡んで、この回は一挙5得点。9対2と大きく点差を広げた。
日大三の中村はこの5点で調子を上げ、140キロ前後のストレートと130キロを超えるカットボールも使い始め、7回を投げ、四死球2、8奪三振、2失点の完投勝利で、習志野にコールド勝ちした。
中村は5番を打つなど投打ともに能力が高い選手だが、中村と同じタイプだと4年前のエース・釘宮 光希(立正大)がいるが、投手としての能力は当時の釘宮より上回っているといえるだろう。
日大三の勝因は習志野というチームカラーを理解しながら試合運びをしていたこと。習志野は相手のミスから畳みかける野球を得意とする。4回裏、初めて走者を出して、得点圏まで進んだところ、日大三の小倉全由監督が「打者集中だよ!」とげきを飛ばし、最後までベンチから大きな声を出しながら、選手たちへ指示を送っていた。
習志野の打者は球足が非常に速いが、三塁手・金子を含めて冷静に打球を処理できていたことだ。この安定した守備が中村を盛り立てることができていた。
また印象的な場面として、4回裏、ピンチを迎えた場面で、主将の日置がタイムを取って中村に話をかけて落ち着かせていたのも良かった。日置は攻守ともに優れたショートストップだが、精神的に成熟しており、大人の雰囲気がある。日置の雰囲気がそのまま日大三の粘り強さにつながっている。
準決勝では強力打線・常総学院。4連戦目で疲労は残る中、どんな戦いを見せるのか、楽しみだ。
(文・写真=河嶋 宗一)