花咲徳栄vsふじみ野
花咲徳栄、お家芸の細かい野球に長打を絡め、またしてもコールド勝ちで関東へ
野村(花咲徳栄)
たとえ先制されても慌てない。初戦の川越東戦以外29-0、12-0で共に5回コールドで相手を退けるなど強打を誇る花咲徳栄だが、バントや走塁で相手の隙を突く野球が本来の花咲徳栄の姿だ。この日は後者、その試合巧者な面を見せ相手を崩した。
先発はふじみ野が左腕・梅澤 駿平(3年)、花咲徳栄が中田と両エースが登板したこの試合、序盤はややふじみ野ペースで試合が進む。
初回花咲徳栄・中田の立ち上がりを攻め、先頭の吉田 健太郎(3年)が右中間へ二塁打を放ち無死二塁と絶好の先制機を迎える。だが、続く松尾が走者を進められず凡退すると、後続も倒れ無得点に終わる。
迎えた2回表、この回先頭の粟田がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く梅澤は無死一塁と本来色々と制約がかかる場面で直球をフルスイングする。すると打球はグングンと伸びレフトスタンドへ(梅澤は左投げ右打ち)飛び込む先制2ランとなりふじみ野が幸先良く2点を先制する。
だが、花咲徳栄もその裏すぐに反撃を開始する。一死から7番・井上(1年)が打った瞬間にそれとわかる特大のソロ本塁打を叩き込みすぐに1点を返すと、二死後9番・田谷野がセンター前へポトリと落ちるヒットを放ち再度チャンスメイクする。続く橋本もサードへの内野安打を放つと、2番・杉本も四球を選び二死満塁とチャンスを広げ巧打者3番・韮澤 雄也(2年)を迎える。だが、ここはふじみ野・梅澤が踏ん張りもあり韮澤が凡退し1点で攻撃を終える。
花咲徳栄は3回裏もこの回先頭の野村、羽佐田が連続四死球を選び無死一、二塁とチャンスをもらうが、6番・倉持は送れず、後続も倒れ無得点に終わる。
普通のチームであればこのままズルズルいくことも考えられるが、そこは巡目ごとに圧力が増すことに定評がある花咲徳栄打線だ。三巡目を迎えた4回裏、一気にふじみ野・梅澤を捉える。一死から9番・田谷野、橋本が連続死球を選び一死一、二塁とすると、さらに相手のワイルドピッチで一死二、三塁とチャンスが広がる。2番・杉本のセカンドゴロでまず同点とすると、続く韮澤が四球を選び二死一、三塁とする。
ここで主砲・野村が左中間を破る2点タイムリー二塁打を放ち4対2と逆転に成功すると、続く羽佐田もライト前タイムリーを放ちさらに1点を追加する。羽佐田はすぐさま二盗を決めると、さらにワイルドピッチで三塁へ進む。6番・倉持 賢太(3年)も四球を選ぶとすぐに二盗を決め二死二、三塁とする。ここで7番・井上がライト前へ2点タイムリーを放ち7対2とし結局この回6点を奪うビックイニングを作り試合の大勢は決した。
先発の左腕・梅澤 駿平(ふじみ野)
花咲徳栄は6回裏にも2番手・吉田啓を攻め、この回先頭の野村がショートへ強烈な打球がショートのエラーを誘い出塁すると、続く羽佐田の犠打が内野安打となり無死一、二塁とチャンスを広げる。さらに6番・倉持の犠打も吉田啓が判断を誤りオールセーフとしてしまい無死満塁としマウンドを3番手・石見へ譲る。
代わった石見も流れを断ち切れず、続く井上に押し出しの死球を与えると、8番・中田にもセンターへ犠飛を浴びる。さらに、ふじみ野内野陣はタッチアップを狙った一走・井上を挟殺プレーに持ち込むが、ファーストのまずい判断もあり、結果二走・倉持にも本塁生還を許し10対2とされる。
投げては、花咲徳栄・中田が2回に一発を浴びた後は、尻上がりに調子を上げ単発でヒットこそ許すが、得点を与えない。結局花咲徳栄が7回コールドでふじみ野を退け、決勝進出と関東大会出場を決めた。
まずふじみ野だが、エース梅澤が、井上に一発を浴びて以降も執拗にインコース攻めは続けていたが、それが死球になってしまい、変化球も抜け始めると徐々に投げる球がなくなってしまい花咲徳栄打線に捉えられてしまった。さらに前の試合でも警告したが、今年の花咲徳栄は右打者が多いだけに三遊間がしっかりと守らないと、展開は厳しくなる。
ふじみ野関係者も嘆いていたが、春先から強豪校との練習試合が組めない中、ここまでの勝ち上がりは見事であった。投では梅澤、打っては吉田 健、大野 竜也(3年)など柱が確立され収穫も多いだけに、今日のような甲子園経験校との対戦経験を活かし、勝つためには何が足りないのか、夏へ向けてさらに投打にレベルアップした姿を見せて欲しい。
一方の花咲徳栄だが、唯一サードに挑戦中の野村の守備は気になる部分ではある。だが、彼にはその部分を差し引いてもお釣りが来るくらいその打棒は驚異的で4番として主将として打線を牽引している。その売りである打線はこの日8安打とやや不完全燃焼ながらも、本来のチームカラーである小技や一つでも先の塁を狙う走塁で、相手のミスにつけ込む。スロースターターながら一巡、二巡、三巡と徐々に相手の投手に対応し、終わってみれば10点を奪う、その試合巧者ぶりは健在だ。
投手陣では中田が今大会まずまずの安定感を見せ、ここに齋藤や左腕の和田が絡んで来れば、本来は投手としても柱である野村の負担はかなり減るであろう。さらに、この日は1年生井上が一発を含む3打点と大活躍し、U-15日本代表(生駒ボーイズ4番)のポテンシャルをまざまざと見せつけた。岩井監督は例年であればどれだけ鳴り物入りで入団しても1年生を春の大会から出場させることはまずない。それだけ岩井監督の信頼も厚いのであろう。既にフェンスの高い[stadium]県営大宮球場[/stadium]で2本塁打を放った彼が今後の関東大会や夏までにどこまで伸びるか今から楽しみである。韮澤や主砲・野村もうかうかしてはいられない、そんな嬉しい悲鳴が聞こえるような状況になれば、旧チームと遜色ない打線が完成するのではなかろうか。
(取材・写真=南 英博)