日大鶴ヶ丘vs豊島学院
都内最速右腕・勝又温史に課せされた課題
最速143キロをマークした勝又温史(日大鶴ヶ丘)
日大鶴ヶ丘が13安打10得点の猛攻で、豊島学院に7回コールド勝ち。都大会進出を決めた。
この試合の注目は最速147キロ右腕・勝又温史(日大鶴ヶ丘)である。今年の東京都で最も速く、関東圏内でも速球投手として注目できる投手である。昨秋は一次予選で、早稲田実業に敗戦。勝又はこの敗戦からフォーム固めとストライク先行ができることをテーマに冬場の練習に積んできた。
迎えた春の一次予選。初戦の都立桜町戦で先発した勝又は5回無失点の好投。視察にきていたNPBのスカウトが測っていたスピードガンで、常時140キロ前半・最速146キロを計測し、評判通りの速球をスカウトの前で披露した。しかし結果として抑えているように見えているが、勝又は「フォームもまだばらばらで、コントロールも全然でしたし、内容には全く満足していない」と振り返り、この試合は初戦より修正した内容を見せるつもりで試合に臨んだ。
立ち上がりから常時135キロ~143キロの速球を連発。回転数が高いストレートは豊島学院打線を圧倒し、初回から奪三振ラッシュ。3回まで8奪三振と脅威のピッチングを見せた。
勝又の投球フォームは現代の投手にはなかなかいない真っ向から振り下ろすオーバーハンド。頭の上下動が激しく、いわゆる同じフォームで投げ続けることが難しい。萩生田監督は「上半身、下半身の動きが合致した時のフォームは本当に凄いボールを投げる」と話すように、あえてフォームをいじらないのは、勝又の可能性に賭けているからだろう。
このフォームだからこそ生きる球種がある。それはカーブだ。この試合でも縦に大きく割れるカーブでカウントを稼いでいた。萩生田監督はスライダーを投げさせず、カーブを投げさせる意図についてこう説明する。
「カーブで、スライダー全盛の現代の野球ではなかなかない変化です。安易にストライクを取ろうと思えばスライダーを教えますけど、横振りになるし、負担も大きい。スカウトの方もカーブが良い投手ほど長持ちすると話します。一見、時間がかかる育成かもしれませんが長い目を見て勝又に指導しています」と、数年先を見据えて指導している。だが、それだけでは絞られてしまうので、現在、取り組んでいるのが、カットボール。横振りにならずストレートと同じ腕の振りで投げることができる球種で、この試合では数球ほどだったが、130キロ前後を記録しており、非常に良い球種である。
3回まで快調なピッチングを見せていたが、4回表には抜け球のフォークを豊島学院の5番小池純平にフルスイングされ、2ランを被弾。5回まで11奪三振の快投を披露したが、被安打3、四死球3、球数93と球数の多さが目立った。
勝又は、「この前、今日も全然ダメな内容で、正直、レベルが上がる都大会では抑えられるか不安です。投球フォームもまだ固まっていない。本当に時間はないですけど、しっかりと修正をして、大会に臨んでいきたい」と反省の弁を語った。
萩生田監督は「まだ本人に危機感があるのは良いことです。勝又の場合、経験を積ませて、公式戦で普段通りで投げる難しさを実感してほしいと思っています」と一次予選から2試合続けて先発として使っている意図を明かした。
4月1日から始まる都大会。勝又は飛躍のきっかけをつかむ大会にすることができるのか。
◇22日開催予定の試合