国士舘vs早稲田実業
国士舘が最少得点を守り切って完封で早稲田実を下す
先発した石井 崚太(国士舘)
この秋は、毎週ごとのように訪れる台風と前線の停滞によって、各地で高校野球秋季大会の日程が大幅にずれ込んでいる。東京都大会もそうで、この段階でまだベスト8決めとなる3回戦が残ってしまっている。その試合が、[stadium]ダイワハウス八王子市民球場[/stadium]で行われた。
台風一過、この日は晴天に恵まれたが風は、台風の余波もあってかいささか強く舞っていた。それでも、強豪校対決は緊張感のある好試合となった。
国士舘は左腕の石井 崚太君、早稲田実は雪山 幹太君の先発で始まった試合。石井君は左腕からのキレのいいスライダーを武器に球を低めに集めていき、5回を終わって初回の3番野村君の中前打と5回の風安打のみ。また、雪山君も力強く投げ込んできて、初回に嶋崎君に許した中前打一本に抑えており、投手戦と言っていい展開となっていた。
6回を終わって共に2安打のみという試合は、先制点が勝負の分かれ目になりそうだった。そして7回になって、俄かに試合が動き出す。
この回、国士舘は先頭の内藤 真君が死球で出て盗塁を試みるも二塁で刺されるが、その後に草薙君が内野安打で出ると、二死から8番赤川君が一二塁間を破って一三塁。ここで早稲田実の和泉実監督は、迷わずここまで好投してきた雪山君を下げて、1年生ながら信頼の高い伊藤 大征君を送り出した。しかし、国士舘打線は9番の石井 崚太君がしぶとく三遊間を破り、自らのバットで先制点を叩き出した。
その裏、早稲田実も先頭の3番野村君が左前打で出て反撃体勢となったものの、一死二塁から石井峻君が踏ん張って2者を抑えて凌いだ。石井君の冷静な投球が光った。きわどいコースを突いていくので、ボールも多くなっていっていたが、それでも四球は3個。左打者に対して外へキュッと逃げていくスライダーはかなり有効だった。また、捕手の赤川君も、そんな石井君の持ち味を十分に引き出していくリードだったといっていいであろう。
国士舘の永田昌弘監督は、試合後は納得の表情だった。「よく守ってくれました。守りの勝利でした。清宮君がいなくなってWASEDAという名前をあまり意識しないように、普通のチームなんだから、取られても2~3点くらいだから、4点取れば勝てるということは言っていました。それだけ取れませんでしたけれども…」と、苦笑しながらも、会心の勝利と言わんばかりだった。
昨年の優勝校の早稲田実は、ついぞ石井君の変化球を打ちきれず、結局は4安打で得点を挙げるどころか、三塁へも進めることが出来ないという形で終わってしまった。ことに、7回に野村君が安打で出た無死一塁から代打攻勢を仕掛けたが、突破しきれなかったのは痛かった。また、9回にも無死一塁を攻めきれなかったが、遊撃手嶋崎君を中心とした国士舘の確かな守りも石井君の好投を支えていたといっていいであろう。
(文=手束 仁)
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